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群雄進撃編
第292話 戦い終わって
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全てのゴーレムを撃ち壊したディックたちだったが、その時には既に桓騎は退却した後であった。
「シット!!逃げられちまったか!」
怒って地面を蹴り上げるディック。
「お疲れ隊長!」
副隊長グリフィーが、挨拶と一緒にタバコを差し出してくる。
「サンキュー!グリフィー!」
ディックは差し出されたタバコを一本貰い、火を付けたタバコの煙を胸いっぱいに吸い込む。
「しかしディック隊長、奴ら隊長のスキルをなぜか使っていましたね?」
「ああ…どうやら奴らの中に、シーフ(盗賊)系の能力を持った奴がいたみたいだ…」
二人が揺れる煙を見つめていると、城内へ戻ってきた呼延灼たちが声を掛ける。
「ワイバーンの戦士たち、助けに来てくれて感謝する!」
「よせよ、イイって事さ!」
拱手する呼延灼たち三人に、手を上げて挨拶するディックたち。
「いま話していた能力の件だが、奴らは一度見た能力を『借りる』類のもののようだ」
「ホワット?スキルを借りる?」
二人は吸っていたタバコを吸うのも忘れ、呼延灼の言葉に耳を傾ける。
「ああ、実際私たちは戦闘中に能力を使えなくなっていたのだが、今は私もここにいない清正も、普通に使えるようになっている」
現在清正は、ワイバーンのブレスの力を借り、氷漬けになっている家臣の氷を炎で溶かしてもらっていた。
「どちらの能力かは判らぬが、一度見た能力を取り上げ、白起が操るゴーレムに付与することが可能のようだ」
「ジーザス!つまりあいつらとやる時は、こちらがスキルを使えないという事か!」
「いや、それだけではない」
「私たちの能力は一度見られているので、次に戦うときは最初からあの土人形共が我々の能力を使ってくるとみてよいだろう」
「なるほど…確かに厄介な奴らだが、俺たちワイバーンなら他にも戦い方があるので心配ないさ!」
そう言って二人は、吸っていたタバコの火を消す。
「さてっと、今からキング・ピットが待つ江戸・キャッスルへ行くが、皆乗っていくかい?」
ディックたちは、ワイバーンの姿へと戻る。
「おお!早く報告せねばならぬので、是非とも頼む!」
「待って!儂も一緒に行くぞ!」
呼延灼がワイバーンの背に乗ろうとすると、馬に乗った清正が駆けつけてきた。
「清正よ、一緒に行くのは構わんが、部下の方は良いのか?」
「問題無用よ!拙者ら元ケラにて、たとえ身体が凍り付こうとも、仮死状態に陥るのみゆえ!」
「呼延灼将軍、我々は残って消火活動やがれき処理を行います」
韓滔と彭玘は、呼延灼に拱手して願い出る。
「うむ、住民は地下シェルターに隠れていたが、建物はそうはいかぬ」
「後は任せるぞ!」
「「ハハッ!!」」
二人は拱手し、部下たちと共に消火活動を始めた。
「オーケー!グリフィー!お前も隊を指揮して、カントウたちの手伝いをしてやってくれ!」
「アイアイサ!」
グリフィーは敬礼し、韓滔たちのもとへと向かった。
「よし、じゃあキング・ピットのところに行くぜ!」
「応!ディック殿、頼む!」
こうしてディックは二人を乗せて舞い上がり、煙が上がる江戸城へと向かった。
そして、その光景を更に上空で眺める二人の鳥の獣人がいた。
「白起のやつ、生まれ変わっても相変わらずの化け物じゃな!」
白髭の男は、まるで前世を知っているかのように、腕を組んで白起を褒める。
「そうですね、一度にあれだけのゴーレム兵を操作できる魔力と、自在に操れる統率力」
「さらに予期せぬ敵兵に対し、別の目的で予め配置していた部隊を効果的に使い、逃げるふりをしてそこへ誘い込む戦術眼…」
「噂には聞いていましたが、彼は間違いなく怪物ですね…」
優しい顔をした男の眼は、細く開いた目のなかで鋭い光を忍ばせていた。
「それで『廉頗(れんぱ)』将軍、現世では彼と戦って勝てそうですか?」
うっすらと笑みを浮かべる男に、白髭の男は笑って答える。
「ガハハハハ!『李牧(りぼく)』よ!誰に向かって言っておるか!」
「そもそも儂は、奴に一度も負けておらんぞ!」
「そうですね、私も将軍が負けるとは考えていません」
廉頗の言葉は決して強がりではなく、前世での戦いや現世での戦い方を見て判断した、廉頗の自信であると李牧は感じていた。
「それと、気になるのはやはり亜人国の連中じゃな」
「ほう?廉頗将軍、それは何故です?」
廉頗は長い白髭を、右手でほぐしながら李牧に話す。
「少し前に見たときは、いずれ滅びゆく国だと気にもしていなかったが、なかなかどうして、強いやつらが出て来ておる様じゃな!」
「そうですね、少し前に誕生した『ラビット国』の協力を得て、一気に力を付けたようですね」
「ラビット国?あの森の動乱を収めた、若いうさぎが興したと言う小さな国か?」
廉頗の質問に、小さく頷く李牧。
「その通りです」
「実は新たに建国した『楚』『韓』は、ラビット国が大きく影響していますし、各地で起こっていたヨーロッパでの紛争も、この国の者たちが収拾させたとのことです」
「ほう?既に世界へ進出しておるというのか?」
驚く廉頗に、李牧は小さく笑う。
「かく言う私も、彼らが森の覇権を取る時からずっと気になっていたのですよ」
「ほほう?戦国最強の守将と謳われる貴様(李牧)に、ここまで気を引かせるとは、相当に面白いやつらの様じゃな?」
李牧は空を見上げて呟く。
「私は見てみたいのですよ」
「ここまで世界を動かす、この国の王とその家臣たちが、一体どのような国を…世界を創っていくのかを…」
李牧の言葉に、廉頗も賛同する
「そうじゃな!儂もその話を聞いて、興味が湧いてきたわい!」
「フフフ…まぁ、戦う事になるかもしれないのですがね…」
今後、この二人がどのようにラビット国に関わってくるのか、現段階で分かるものは誰もいない。
「さて将軍、戻るとしましょう」
「そうじゃな、帰って報告もせねばならんしのう」
やる事を終えた二人は、そのまま北東へ向かって飛び去っていった。
「シット!!逃げられちまったか!」
怒って地面を蹴り上げるディック。
「お疲れ隊長!」
副隊長グリフィーが、挨拶と一緒にタバコを差し出してくる。
「サンキュー!グリフィー!」
ディックは差し出されたタバコを一本貰い、火を付けたタバコの煙を胸いっぱいに吸い込む。
「しかしディック隊長、奴ら隊長のスキルをなぜか使っていましたね?」
「ああ…どうやら奴らの中に、シーフ(盗賊)系の能力を持った奴がいたみたいだ…」
二人が揺れる煙を見つめていると、城内へ戻ってきた呼延灼たちが声を掛ける。
「ワイバーンの戦士たち、助けに来てくれて感謝する!」
「よせよ、イイって事さ!」
拱手する呼延灼たち三人に、手を上げて挨拶するディックたち。
「いま話していた能力の件だが、奴らは一度見た能力を『借りる』類のもののようだ」
「ホワット?スキルを借りる?」
二人は吸っていたタバコを吸うのも忘れ、呼延灼の言葉に耳を傾ける。
「ああ、実際私たちは戦闘中に能力を使えなくなっていたのだが、今は私もここにいない清正も、普通に使えるようになっている」
現在清正は、ワイバーンのブレスの力を借り、氷漬けになっている家臣の氷を炎で溶かしてもらっていた。
「どちらの能力かは判らぬが、一度見た能力を取り上げ、白起が操るゴーレムに付与することが可能のようだ」
「ジーザス!つまりあいつらとやる時は、こちらがスキルを使えないという事か!」
「いや、それだけではない」
「私たちの能力は一度見られているので、次に戦うときは最初からあの土人形共が我々の能力を使ってくるとみてよいだろう」
「なるほど…確かに厄介な奴らだが、俺たちワイバーンなら他にも戦い方があるので心配ないさ!」
そう言って二人は、吸っていたタバコの火を消す。
「さてっと、今からキング・ピットが待つ江戸・キャッスルへ行くが、皆乗っていくかい?」
ディックたちは、ワイバーンの姿へと戻る。
「おお!早く報告せねばならぬので、是非とも頼む!」
「待って!儂も一緒に行くぞ!」
呼延灼がワイバーンの背に乗ろうとすると、馬に乗った清正が駆けつけてきた。
「清正よ、一緒に行くのは構わんが、部下の方は良いのか?」
「問題無用よ!拙者ら元ケラにて、たとえ身体が凍り付こうとも、仮死状態に陥るのみゆえ!」
「呼延灼将軍、我々は残って消火活動やがれき処理を行います」
韓滔と彭玘は、呼延灼に拱手して願い出る。
「うむ、住民は地下シェルターに隠れていたが、建物はそうはいかぬ」
「後は任せるぞ!」
「「ハハッ!!」」
二人は拱手し、部下たちと共に消火活動を始めた。
「オーケー!グリフィー!お前も隊を指揮して、カントウたちの手伝いをしてやってくれ!」
「アイアイサ!」
グリフィーは敬礼し、韓滔たちのもとへと向かった。
「よし、じゃあキング・ピットのところに行くぜ!」
「応!ディック殿、頼む!」
こうしてディックは二人を乗せて舞い上がり、煙が上がる江戸城へと向かった。
そして、その光景を更に上空で眺める二人の鳥の獣人がいた。
「白起のやつ、生まれ変わっても相変わらずの化け物じゃな!」
白髭の男は、まるで前世を知っているかのように、腕を組んで白起を褒める。
「そうですね、一度にあれだけのゴーレム兵を操作できる魔力と、自在に操れる統率力」
「さらに予期せぬ敵兵に対し、別の目的で予め配置していた部隊を効果的に使い、逃げるふりをしてそこへ誘い込む戦術眼…」
「噂には聞いていましたが、彼は間違いなく怪物ですね…」
優しい顔をした男の眼は、細く開いた目のなかで鋭い光を忍ばせていた。
「それで『廉頗(れんぱ)』将軍、現世では彼と戦って勝てそうですか?」
うっすらと笑みを浮かべる男に、白髭の男は笑って答える。
「ガハハハハ!『李牧(りぼく)』よ!誰に向かって言っておるか!」
「そもそも儂は、奴に一度も負けておらんぞ!」
「そうですね、私も将軍が負けるとは考えていません」
廉頗の言葉は決して強がりではなく、前世での戦いや現世での戦い方を見て判断した、廉頗の自信であると李牧は感じていた。
「それと、気になるのはやはり亜人国の連中じゃな」
「ほう?廉頗将軍、それは何故です?」
廉頗は長い白髭を、右手でほぐしながら李牧に話す。
「少し前に見たときは、いずれ滅びゆく国だと気にもしていなかったが、なかなかどうして、強いやつらが出て来ておる様じゃな!」
「そうですね、少し前に誕生した『ラビット国』の協力を得て、一気に力を付けたようですね」
「ラビット国?あの森の動乱を収めた、若いうさぎが興したと言う小さな国か?」
廉頗の質問に、小さく頷く李牧。
「その通りです」
「実は新たに建国した『楚』『韓』は、ラビット国が大きく影響していますし、各地で起こっていたヨーロッパでの紛争も、この国の者たちが収拾させたとのことです」
「ほう?既に世界へ進出しておるというのか?」
驚く廉頗に、李牧は小さく笑う。
「かく言う私も、彼らが森の覇権を取る時からずっと気になっていたのですよ」
「ほほう?戦国最強の守将と謳われる貴様(李牧)に、ここまで気を引かせるとは、相当に面白いやつらの様じゃな?」
李牧は空を見上げて呟く。
「私は見てみたいのですよ」
「ここまで世界を動かす、この国の王とその家臣たちが、一体どのような国を…世界を創っていくのかを…」
李牧の言葉に、廉頗も賛同する
「そうじゃな!儂もその話を聞いて、興味が湧いてきたわい!」
「フフフ…まぁ、戦う事になるかもしれないのですがね…」
今後、この二人がどのようにラビット国に関わってくるのか、現段階で分かるものは誰もいない。
「さて将軍、戻るとしましょう」
「そうじゃな、帰って報告もせねばならんしのう」
やる事を終えた二人は、そのまま北東へ向かって飛び去っていった。
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