神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

文字の大きさ
上 下
287 / 317
群雄進撃編

第286話 最強の槍使い登場

しおりを挟む
ものすごい衝撃音と共に、左之助の槍は何者かの槍により義仲の頭上で防がれた。

『へぇ、なかなかの槍の使い手だね?』

蹲踞の姿勢で槍を肩に担ぎ、左之助に背を向け槍撃を防いだ『僧侶姿』の男は首だけ振り向き、余裕そうな口ぶりで答える。

(何だこいつ?何時現れた?)

(そもそも、俺の渾身の槍撃を後ろ向きで防いだだと?)

驚く左之助の槍を、僧侶の男は両手に持ち直し、上空に払いのける。

それと同時に、後ろ向きで左之助の腹に、槍の柄の部分で突きを喰らわした。

「ぐふぅ?!」

左之助は体を九の字に折りながら後退し、槍を杖にしながら倒れずに僧侶を睨む。

「おぉ!僕の突きをもらって立っているとは、なかなか丈夫な男だね!」

僧侶はゆっくりと立ち上がり、全体に響き渡るように叫ぶ。

『木曽の兵たちに告ぐ!目的は達したので全軍退却するとの事だ!』

僧侶は義仲の隣に空いた、巨大な鏡を指さす。

「おぉ!かたじけない!」

兼平はゴブリンたちに指示を出し、義仲を鏡の中に避難させる。

「さはさせぬ!さらなる一撃、受けてみよ!甲州流軍学の奥義たる『風刃火斬』の威を!」

そうはさせじと観柳斎は、胤舜と鏡に向かって風刃と炎撃を次々と繰り出す。

「へぇ!面白いじゃん!」

僧侶は槍を目の前で回転させ、観柳斎の攻撃を全て防ぐ。

「何と申すか?この我が斬撃、ことごとく防がれたと申…」

「お前、口上が長い!」

全ての言葉を言い終える前に、僧侶は観柳斎の目の前に現れ、柄で思い切り頭を殴りつけた。

「ぐはっ!…しかしこれしきの傷、致命とはならぬ…」

そう言って、観柳斎は白目をむいて倒れてしまった。

「わはは!白目をむきながら台詞を言って気絶した!」

「このメガネ、面白いやつだったな!」

笑いながら話す僧侶に、左之助は驚愕する。

(うそだろ?俺やメガネを一撃で動けなくするとは…一体何者だ?)

「組長!!」

「おのれ!あの僧侶を全員で討ち取れ!」


自分の組長が倒されたことに気が付いた隊士たちは、一斉に僧侶へ襲い掛かる。

「おぉ、これは大変!防がないとね!」

僧侶は構え直し、スキルを発動する。

「宝蔵院流十文字槍術『蒼嶽穿華(そうがくせんか)』!」

僧侶が槍を振り下ろした瞬間、大地が震えるような轟音が響く。

「何だ?何が起こってる?」

混乱する新撰組隊士たち。

僧侶は地を強く踏みしめ、槍を大地に叩きつけると、周囲に地割れが広がり、槍先から蒼い光の柱が放たれる。

「ぐわーっ!!」

この柱が新撰組隊士たちを貫き、付近のものは皆倒れてしまった。

「これで良し!」

義仲の兵団が全て鏡の中に退却したことを確認し、僧侶は鏡の中に戻ろうとする。

「待てやお前!…俺との勝負がまだ着いてないぞ…」

左之助は肩で息をしながら、僧侶に対して槍を構える。

「へぇ、まだやる気なのかい?」

僧侶は十文字槍を左之助に向けて構えた。

「いいよ、掛かってきなよ君?この宝蔵院流槍術指南『胤舜(いんしゅん)』が、相手をしてあげるよ」

「胤舜?!望むところだ!」

左之助は一気に突撃し、胤舜に力任せで突きまくる。

「うん、君の槍撃は力強く、速度も速いから、普通に受け続ければ相手の体力の消耗も狙えるね!」

左之助の突きを軽く払いながら、胤舜は更に説明する。

「ただし、僕のように相手の攻撃を受け流す者には、君の技術じゃ僕に当てることは難しい!」

左之助はそれでも胤舜に突きを繰り返す。

「フフッ、例の技は出さないのかい?それとも疲れてもう出せないのかな?」

「ツベコベうるせぇ!」

左之助は動きを止めて、天穿裂破を放とうとしたその時、胤舜の槍が左之助の腹に突き刺さる。

「うごっ!」

短く呻き声を上げ、左之助は前のめりに蹲る。

「あ~あ、そんな隙だらけの大技だしたら、こうなることぐらい予想できたろうに…」

胤舜は構えを解き、槍を両肩に担ぎなおす。

「まぁ、君たちを殺す気はないし、今のも槍の柄で突いたから安心していいよ?」

「…なぜ…ころさない?」

震える声で尋ねる左之助に、槍を担いだ胤舜は笑みを浮かべて答える。

「う~ん…しいて言えば、今の段階じゃ君はまだ僕の敵を名乗れる程じゃないからかな?」

「!」

「つまり、君はまだ殺す『価値』もないって事だよ!名もなき槍使いさん?」

胤舜の言葉に落胆する左之助。

(そうか…今の俺程度の腕では、この胤舜には役不足でしかないという事か…)

そう思った左之助は、再度顔を上げて胤舜を見る。

「…おれは…俺の名は…左之助だ!…」

そう呟くと、左之助はそのまま気を失ってしまった。

「なるほど…君の名は左之助っていうのか…」

胤舜は気を失った左之助の顔を見て、にこりと呟く。

「また会える日を楽しみにしているよ?『死に損ないの左之助』君!」

胤舜はそう言い残し、鏡の世界へと戻って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

聖獣達に愛された子

颯希
ファンタジー
ある日、漆黒の森の前に子供が捨てられた。 普通の森ならばその子供は死ぬがその森は普通ではなかった。その森は..... 捨て子の生き様を描いています!! 興味を持った人はぜひ読んで見て下さい!!

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

処理中です...