神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第284話 サヨナラ・・・

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「大村さん…」

皆が大村の死に皆が喪失感を隠せない中、吟子が巴の背に負ぶさって現れた。

「…大村さん…ごめんなさぃ!」

「私がトロ臭いから…大村さんが死んじゃった!!」

何かを知っているのか、巴は目を下にそらし、皆大泣きする吟子を見つめる。

「私が…大村さんを助けに来たとき…『爆裂陣』を使うひとが、次々と壁や天井を破壊していたの…」

「爆裂陣?」

その言葉にピットたちが疑問符を打つも、吟子は説明を続けた。

「そのひとが爆破した石に、私が足を取られて転んだ時…目の前に落ちていた天井の残骸に『爆裂陣』が表れて…」

「それを見た大村さんが…私の前に立って…守ってくれたの…」

「もういい吟子!分かったから…わかったから…」

巴の言葉にも、吟子は説明をやめない。

「だめだよ…ちゃんと話さなきゃ…」

吟子は泣きながら話し続ける。

「守ってくれた大村さんは、立ったまま気を失っていて…」

「わたしね…急いでヒールを掛けようとしたんだよ…」

「そしたら、あの華雄ってやつが来て…大村さんのお腹を…棍棒で思いきり殴って…」

「そのまま大村さん…倒れて動かなくなってしまって…」

「私が回復魔法を掛けられないように…両腕を握られたの…」

「吟子…お前そんな事に…」

吟子の説明に、涙を流す巴。

嗚咽しながら吟子は、巴の背から降りて、四つん這いで大村に近づく。

「ゴメンね…大村さん…痛かったでしょう?」

「こんな目に合わせた私…ヒーラー失格だ…」

泣きながら大村をさする吟子。

「でもね…わたし…一つだけ皆が真似できない力があるの…」

吟子の体が、突然黄金色に光りだす。

「何だ?何が起きようとしている?」

皆が困惑する中、そのまばゆい光で目を覚ました誾千代は、それが吟子の能力と気づき、誾千代を介抱する小松に訴える。

「こまつ…ぎんこをとめて…」

「なに誾千代?あれが何か知っているの?」

朦朧とする誾千代は、震える声で必死に小松に訴える。

「あのちからは…ぎんこのいのちをもやしちゃう…」

誾千代の言葉の意味を理解し、ハッとした小松は皆に向かって叫ぶ。

「誰か!吟子を止めて!!」

「その子、『反魂の術』を使う気よ!!」

莫大な魔力を使い、死者を一定の確率で蘇生する『反魂の術』は、その術者自身をも危険にさらす。

ましてや、魔力が枯渇した状態の吟子がそれを使えば、結果は火を見るより明らかであった。

「何だと!」

「まずい!止めろ!」

そうはさせまいと、皆が一斉に吟子を取り押さえようとしたが、既に吟子の姿はそこになかった。

巴は大村のお腹に転がる、小さな虫を掬い上げる。

『吟子が…吟子が…』

震える巴が掬った掌の中には、小さなミツバチが一匹、既に息絶えていた。
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