神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第283話 最後の言葉

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「なるほど、秘密が漏れないように自爆陣を施されていたのか…」

爆散した華雄を眺めていると、ルクシルが鬼の形相で詰め寄ってきた。

「おい総司!貴様自爆陣があるとわかったなら、何故僕に伝えないのだ!」

「いや、起爆までにそんな時間はないし、君も気付いてちゃんと防御障壁を張っていただろ!」

ルクシルの言いがかりに近い苦情に、さすがの総司も怒りだす。

言い争っている二人だが、魔法陣が現れて3秒ほどで爆散したことを考えると、総司はルクシルの魔法範囲からすぐさま飛び退き、ルクシルは驚異的な速度で障壁魔法を展開したのである。

なんだかんだ言っても、二人はいいコンビなのだ。

『貴様はどうなっても構わないが、万一ピットに何かあったらどうするつもりだったのだ!』

「いや、私はどうなってもいいって…ピットさん来てたのですか?!」

ルクシルの後ろに立つピットと半蔵に気付いた総司は、慌てて謝罪する。

「気にしなくていいよ、総司」

そう話すと、少し離れたところで治療を行う山崎のもとへ駆け寄る。

「山崎、大村さんの容体はどうなんです?」

心配そうに見つめるピットに、手当てをする山崎は静かに首を振る。

「爆散した破片が内蔵にまで達しています」

「更に、何か強い衝撃により内臓や背骨が…」

「…手の施しようが、ございません…」

下を向く山崎の言葉は、周りの者たち全てをを凍らせた。

(そんな…ここで彼を失ったら、一体誰がこの国の作戦指揮を執るんだ!)

皆がそう思う中、ピットは力ない大村の手を握る。

「大村さん、ごめんなさい…私が戻るまで、ここを囮にして戦うと決めたばかりに…」

涙を流して謝罪するピットの手を、大村は震える手で弱弱しく握り返す。

「ピット王…自分を責めてはいけません…」

「これは私が考案した作戦…こうなることも覚悟した上での結果です…」

「しかし!」

大村の言葉を遮るピットだが、それを半蔵が窘める。

「ピット様…彼の最期の言葉を聞いてあげてください…」

半蔵の言葉を聞き、ありがとうと小さく頷く大村。

「ピット王…私が死んでも大丈夫です…既に事後の案は考えてあります…」

大村は苦しそうに、肩で息をしながら話を続ける。

「…私の補佐をしている、薩摩の山本権兵衛(やまもと・ごんべえ)を代理とし、海を東郷平八郎・陸を大山巌(おおやま・いわお)・空を今井均に任せておけば、万事うまく行くでしょう…」

「…それ以外のことも、私の部屋の机の引き出しに遺書がありますので、後で確認ください…」

「わかった!大村の言葉に従う!」

ピットに伝え終えた大村は、壊れた天井を見ながら自分のことを話し始める。

「…私は村医者になったのですが、その才能は全くありませんでした…」

「…そんな中、桂さんが私の軍事的才能を見出し、結果元帥などと呼ばれるまでになることが出来ました…」

「…こんな私がここまでなれたのは、彼とピット王のお陰です…」

「…皆さん、どうもありがとうございました…さよならです…」

「いやだ!そんな言葉聞きたくない!」

『逝かないでくれ!大村さん!』

ピットの願いとは裏腹に、大村益次郎はこの言葉を最後に、静かに目を閉じた
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