神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第282話 華雄たちの秘密

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二刀流で構えるルクシルに、華雄は立ち上がりゆっくりと剣を抜く。

その間、総司はビショップ二人を斬り倒し、新撰組の拘束を解き、山崎は隊士に囲まれて、大村の手当てを行う。

それと同時に、左右から聞こえる李傕と郭汜の叫び声。

(だめだ、これは完全に詰んだな…)

心の中で呟く華雄は、ルクシルとの交渉に考えを切り替えた。

「なぁ、ルクシルとやら。俺たちはどうやら誤解を生んだまま戦っちまったみたいだ」

「…」

ルクシルは何も答えずに、剣先に意識を集中する。

「おい!ちょっと待て…いや、待ってください!」

「お前の仲間をひどい目に合わせたのは謝る!ただ俺も命令されて仕方なくやったんだから!」

「…」

「ルクシル殿!そ奴は嘘ば言いよっですぞ!」

(チッ!余計なことを!)

篠原の讒言に舌打ちする華雄。

「本当だ!俺の話を聞いてくれ!俺は李儒の上司・董卓が恐ろしくて、仕方なく従っていたのだ!」

次の瞬間、華雄の両耳が切り落とされる。

「うぎゃー!!」

耳を押さえる華雄に、ルクシルは冷酷な声で告げた。

「お前は悪の権化であると、私と契約した風の精霊が告げている…」

再び構え直すルクシルに、華雄は必死に言葉を紡ぐ。

「分かった!お前の仲間を凌辱しようとしたことは謝るから、知っていることも全部…」

『凌辱』その言葉を発した瞬間、華雄の両腕が切り離された。

「あああああー!!」

華雄はその場に蹲る。

「死ぬ前によく覚えておけ!」

「僕が一番嫌いな事…それは権力や力ずくで女性を凌辱する奴らだ!!」

「!!!」

高速で華雄の首を斬り落とそうとするルクシルの剣を、間一髪総司が刀で止める。

「邪魔をするな総司!こいつはこの場で斬り殺されることをやった!」

エルフに姿を変えているルクシルの瞳が、信号機のように黄色からさらに深紅へと変わった。

(ルクシルの奴、相当怒っているな…)

総司は頭の中で呟く。

「まぁ、落ち着きなよルクシル、こんな奴いつでも殺せるからさ」

数秒の間、ルクシルの振り下ろした剣を、総司の菊一文字が受け止め続ける。

「チッ!」

ルクシルは力を緩め、自分の剣を総司の刀から離し、そのまま鞘に納める。

「総司!こいつが何かやらかしたら、貴様ごと斬り捨てるからな!」

「…ああ、いいよ」

(本当、ピットさんはこんな刃物みたいな女性と、よく仲良くできるな…)

やれやれと総司は振り返り、華雄の前でしゃがみ込む。

「さて、お前に聞きたいことがある」

華雄は声が出ずに、うんうんと首を縦に振る。

「まずお前たちってさ、一体何者なの?」

「は、はい!俺は華雄と言いまして。『あるお方』から進化を受け、そいつらだけで結成された傭兵団『ストレンジャーズ』の『董卓軍団』に入り、要人の誅殺や略奪の任務をやっています」

「あるお方?」

怪訝な顔をする総司を察した華雄は、慌てて補足する。

「は、はい!その方も元は転生者で、我々前世のある者の進化を行うことができる方です!」

「ふ~ん…で、そいつの名前は?」

総司の質問に、顔が曇る華雄。

「それが…我々下っ端には、あの方が一体何者なのか分からないのです」

「そっか…じゃあお前はもう要らないな…」

刀を抜こうとする総司の姿を見て、華雄は慌てて補足する。

「ま、待ってください!思い出しました!」

「あるお方は、一部の幹部から『ハート』様と呼ばれていたのを思い出しました!」

『ハート?』

総司の言葉に、華雄は何回も大きく頷く。

「は、はい!あの方は…」

ここまで話した華雄は、突然フリーズしてしまう。

「おい、どうした華雄?その先を話せ!」

総司がそこまで話した瞬間、華雄の額や体に魔法陣が現れた。

「あ、あ、おゆるしを…」

(自爆陣!)

総司は飛び退き、ルクシルが華雄の周りに障壁を張った瞬間、中で華雄が爆散した。

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