神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第279話  ヒーローは遅れてやってくる

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その時、軍議室に響いた銃声と共に華雄の棍棒は後ろに大きくはじかれた。

「あ~ん?何じゃ~?貴様らは!」

怒りと疑問が入り混じった顔で、華雄は銃声の方に立つ二人を見つめる。

「貴様ら確か、雑賀衆の鈴木重秀殿と、本願寺軍僧将・下間頼廉殿ではないか?!」

「お前たちの救出も、今回の作戦に入っておる!そのお前たちが、なぜ我らの邪魔をする?」

李儒は驚いたように、彼らに質問する。

「なぁ頼廉よ、俺はもう外道なこいつらと一緒に戦いたくなくなったぞ!」

「まことに!拙僧も同じ意見である!」

そう言い終えると、重秀は箱を持った李儒の左腕を狙撃した。

それと同時に、李儒の左腕は吹き飛び、箱ごと地面に転がり落ちる。

「うぎゃ―!」

李儒は無くなった左腕の部分を、右腕で押さえて跪く。

「命中!」

それと同時に、頼廉は華雄へと突撃し、鍔迫り合いの状態にもっていった。

「てめ~ら!裏切りやがったな!」

「違うな!貴様らの汚らわしき所業を受け入れし信長殿に、嫌気が差したまでのことよ!」

華雄の言葉に、頼廉は笑みを浮かべて返事する。

「おい、李傕に郭汜!」

「お前らは先に、戦利品の女共と李儒が落としたものをもって、鏡の中に退却しろ!」

「俺はこのハゲを撲殺して戻る!」

「「おう!!」」

李傕に郭汜は、誾千代と吟子を担いで鏡へと向かう。

「させるか!」

再び銃を構える重秀に、華雄は頼廉を掴み投げつけた。

「ぐわっ!」

「痛でっ!」

重秀は、頼廉共々吹き飛ばされた。

「吟子―!!」

倒れながら叫ぶ重秀。

「…おじさん…」

吟子の力ない声に、李傕と郭汜はゲスびた笑いで答える。

「へへへ!安心しろ!向こうでは俺たちが、寂しがる暇もないくらいに可愛がってやるからな!」

「そうそう、向こうの奴らはみーんな優しいから、お前たちもきっと満足するぞ?」

「…ちくしょう…ちくしょう!」

「ぎゃはははは!いいぞ、いいぞ!もっと悔しがれ!」

悔しがる誾千代に、笑いが止まらない郭汜。

その時、誾千代を担いでいた郭汜の左腕が、胴体から切り離される。

(はへ?)

郭汜は現実に起こった事が理解できずにいると、彼の腕を斬った緑の戦士の強烈なまわし蹴りが、そのまま郭汜を壁まで吹き飛ばした。

「郭汜?!」

李傕が短く呟くと同時に、吟子を担いだ左腕に高速の突きが次々と刺さり、二の腕が肉片となり粉々と砕け散った。

「ぐぎゃーっ!」

李傕はその場に倒れ込み、ない左腕を押さえてもんどりを打ちはじめた。

その李傕の前に立つ、金髪エルフの戦士と鬼の美少年。

「お前たち…小悪党の分際で、僕の大切な仲間に手を出すとは、なかなかいい度胸をしているじゃないか!」

「その部分に関しては、私も全く同意見ですよ?ルクシルさん」

右手に刀と剣を持った二人は、目を合わせて頷く。

「吟子!大丈夫か?」

吹き飛ぶ吟子を、空中で抱きかかえた白い『特攻服』の女性が、心配そうに呼びかける。

「うぅ…巴ちゃん、来てくれたんだ…」

「馬鹿!あったりめーだろ!ダチの窮地に駆けつけるのが、正義のヒロインってもんだ!」

同じく、地面に落ちそうになった誾千代を、白い戦闘服を着た『お蝶夫人ヘア』の女性が支える。

「誾千代さん、大丈夫ですか?」

「へっ…助けに来てくれたの…小松…ありがとう」

「まぁ、貴方の口からお礼の言葉が出るとは驚きですわ!それを聞けただけでも、来た甲斐がありましたわ!」

「ほんとうに…ムカつくアシナガバチだな…」

銀千代は意識が飛びそうになりながら、皮肉たっぷりの小松に反論した。

「さあ千代ちゃん、あとは私たちに任せて、ゆっくりとお休みなさいませ…」

「ああ…頼むよ…」

誾千代は安心した顔で目を瞑る。

二人を抱いた巴と小松は、総司とともに現れた一番隊隊士たちに渡して、敵に向き直る。

「てめぇら!よくも俺の妹分に手を出してくれたな!」

「俺の名は巴!貴様ら死ぬまで叩きのめしてやるから覚悟しろ!」

「私の名前は小松!よくも私の大事な仲間たち…あら?誾千代は仲間でしたかしら?」

「…そう、知人!」

「仲間と知人一人を虐めましたこと、地獄に落ちて後悔するとよいでしょう!」

そんななか、李傕と郭汜の無くなった腕が、徐々に再生されていく。

「ククク、油断したなお前ら!」

「俺たちはやられてもすぐ再生できるのさ!」

自分らは不死の如く、得意げに話す二人。

「まぁ!この小悪党たち、とても気持ち悪いですわ!」

「おぉ!こりゃすげぇ再生能力だな!」

気持ち悪がる小松と、感心する巴。

それをルクシルと鬼は、静かに聞き耳を立てていた。

「ほう…これは止めを刺さないと、ひたすら再生するという事だな?」

「面倒な相手ですね、私も手伝いましょうか?」

鬼の提案に、ルクシルは首を振る。

「いや総司、君がやったら一瞬で終わってしまうから、彼女たちの『憂さ晴らし』にならない」

「それに…奴らは女性の尊厳を踏みにじった!」

『変身(トランス)』で姿を変えているルクシルの瞳が、緑から黄色へ変わる。

「ここは私たち三人が女性を代表して、このゴミ共を血祭りにあげるべきだろう?」

静かに怒るルクシルに、総司はやれやれと両手を上げる。

「了解!じゃあ私は鏡の前にいる李儒ってやつを…」

総司がそこに目を向けたとき、既にそこには李儒の姿はなく、鏡も割られていた。

「やれやれ、敵の軍師殿は察しが良いようで…」

「まぁ、奴らの目的の品ってやつは押さえていますけどね」

李儒が落とした子犬と虫は、一瞬の隙を突いた新撰組・『山﨑 丞(やまざき・すすむ)』が、既に回収済であった。

「おのれ李儒!俺たちを見捨ておったな!!」

怒れる華雄は、再度大村の頭をカチ割ろうとするが、一瞬で飛び込んできたルクシルの高速剣に、棍棒をコマ斬りにされた。

(こいつ…速い!)

「いや…君が遅いだけだよ!」

「何?どうして俺の考えが…」

考えを見透かされたことに驚く華雄の顎を、ルクシルは真上に蹴り上げた。

アッパーを喰らった状態で、華雄は後方に吹き飛び背中から落ちる。

「立てオーク!…生まれ変わっても二度とそういう気が起きないよう、僕が現世でしっかりと教育してやる!」

ルクシルは腰からもう一本の刀を抜き、二刀流となって構える。
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