神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第276話 謎の兵隊

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誾千代に城へ戻るよう指示を受けた吟子は、麻痺毒で動けない下間頼廉を抱えて、城内一階にある医療室兼隔離室へ連れてきた。

「え~っと、解毒剤、解毒剤っとぉ」

頼廉を鉄格子でできた隔離室へ放り込み、薬品棚を探す吟子。

「おい吟子殿、頼廉殿は大丈夫なのか?」

隣の隔離室にいる先輩・鈴木重秀が、心配そうに吟子へ問いかける。

「このおじさんですか?えぇっと、解毒剤を投薬したからもう大丈夫ですよ~」

「そうか、よかった」

重秀は安堵の顔を浮かべる。

「…なぁ吟子殿、其方たちは拙者たちを捕まえて、情報を聞き出したりなどはしないのか?」

重秀の質問に、吟子は不思議そうに答える。

「えぇ?聞いたら何か話してくれるんですかぁ?」

「いや、それは無理だ!味方を売るような事は出来ぬ!」

「じゃあ、やっても意味がないじゃないですか?」

「それはそうだが…お前たちなら自白剤や魔法を使えば聞き出せるのではないのか?」

重秀の言葉に、吟子はきょとんとする。

「そんな事したら、正気に戻ったときに、心がおかしくなっちゃうじゃないですか?」

「はぁ?」

「私は医者でありヒーラーです!患者を壊すことは絶っっ対やりません!!」

「はぁ?!」

怒りながら両手で拳を握り、下に伸ばしながら話す吟子に、逆にきょとんとする重秀。

「プッ…ワッハハハ!!」

やがて重秀は大笑いを始めた。

「なっ何がおかしいんですかー!!」

「いや~すまん、すまん!あまりにも儂の質問が滑稽だったものでな!」

更に怒る吟子に謝る重秀。

(そうか、この子は儂を患者として接しておるのか)

(荻野 吟子、優しい女子じゃな…)

そんな時、爆発音と城内で地響きが起こる。

「え?え?何が起きたの??」

「うむ、いまこの城のどこかで爆発が起きたみたいだぞ?」

パニくる吟子に、答える重秀。

「まぁ大変!急いで大村元帥に報告しなくっちゃ!」

「お、おい!ちょっと待て!」

重秀が止めるのも聞かず、吟子はそのまま飛び出していった。

(まったく…落ち着きのないやつじゃ…)

やれやれと座りなおす重秀は、頼廉の部屋を見て驚愕する。

「…おい吟子、頼廉殿の格子が開きっぱなしになっておるぞ…」

一方、爆発と共に城へ急行した誾千代は、城の入り口付近にて乱戦へと巻き込まれる。

「何なのこれ?新撰組が誰かと戦っている?」

城内の警護していた、藤堂平助(とうどう・へいすけ)率いる八番隊10人は、数十名の敵と交戦していた。

「誾千代さーん!」

「平助君?」

乱戦の中、宙に浮いた誾千代を見つけた平助が、嬉しそうに大きく手を振る。

「平助君、危ない!」

油断した平助に、三人の敵が襲い掛かるが、瞬時に刀を持ち替え、一瞬にして3人を斬り捨てる。

「誾千代さん!大丈夫でしたか?」

愛くるしい顔の平助が、地上に降りた誾千代のもとに嬉しそうに寄って来る。

「平助君、相変わらず君は強いね」

「いや~こんな紙切れ軍団、全然大したことないっすよ!」

倒れた敵を見てみると、四角い紙のような体に数字と模様、それに手足と頭が付き、槍や剣・魔法を使って新撰組と戦っていた。

「何なのこれ?」

「はい!よくわかんないんすけど、こいつらが突然現れて、魔法やら剣で襲ってきたんすよ!」

誾千代は改めて敵を見ると、体に4種類の模様と数字が書いてあることに気付く。

「あの体にある模様と数字は何?」

「あれっすか?なんか数字が大きくなると強くなってきて、模様によって攻撃がなんか違うみたいっすね!」

二人が話をしていると、再度地下から爆発音が聞こえた。

「何?この爆発は?!」

それと同時に、さっきまで倒れていた数字の敵が、新たに現れて攻撃を仕掛けてくる。

「まったくこいつら、キリがないっす!」

砂煙の中、城の入り口内を見ると、ひとりの男と少女が立っていた。

(あいつら誰なの?)

二人はそのまま城内へと消え、入り口にいた『グリフォン』が門を閉めてしまう。

「しまった!」

「平助君!私は上から城内に入って大村元帥の護衛に行くわ!」

「了解っす!俺らもこいつらをちゃちゃっと倒して、すぐ行きますから!」

「いまは中で『篠原泰之進(しのはら・たいのしん)』さんが元帥の護衛をしてるっす!」

平助と別れた誾千代は、2階の窓から侵入して地下にある軍議室へと向かった。
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