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群雄進撃編
第267話 江戸城攻略戦4
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下間頼廉が捕らえられたとの知らせは、日ノ本本陣を大きく動揺させた。
「なんじゃと…頼廉殿は行方不明となったのか?!」
「はい、我々が電撃と墜落から正気に戻ったときには、既に頼廉様の姿はございませんでした…」
「本当に…間違いないのじゃな?」
「間違いございません!」
何度も聞き直す秀家であったが、頼廉の部下の言葉は変わらなかった。
「なんてことだ…頼廉ほどの猛将が倒されるとは…」
ショックを受ける秀家に、更に部下は話を続ける。
「しかも相手は、例の『女戦士』でございました」
「なんじゃと!あのふざけた服装で、訳の分からん事を言っておった小娘共が、重秀殿に続き頼廉殿も攫った連中と申すのか!」
露出度高めなヒロイン物の服装だった二人の言動が、あまりにもふざけたように見えた日ノ本の兵たち。
そんな彼女たちに二度もやられたとあって、怒りのあまり扇子を叩きつけた秀家。
「秀家様、申し訳ござらぬ」
「あのおかしな格好をした者たちの強さは分っておりましたが、まさか猛将の頼廉殿まで敵に捕らえられるとは想定外でありました…」
軍師の小早川隆景が秀家に謝罪すると同時に、もう一つの報告を行う。
「頼廉殿が捕まったのは想定外でございましたが、この囮作戦により『例の策』は順調に進んでおるようでございます」
軍師・隆景の言葉を聞き、無表情となる秀家。
「…そうか、信長様が呼んだ、例のあいつ等か…」
二人が話す奴らとは、最近信長と半兵衛が招き入れた、国籍不明の傭兵集団である。
秀家は短く答え、隆景に訊ねた。
「たしか『ストレンジャー』だったか?隆景殿、貴殿は奴らのことをどう思う?」
小早川隆景は目を瞑り、少し考える。
「…正直に申し上げますと、私も得体のしれぬ奴らの事は、好きではありませぬ」
「されど、彼らの実力は間違いございませぬ」
「実際に奴らは、既に江戸城下へと潜り込み、襲撃の機会を伺っておりました」
説明を終えた隆景に、秀家は再度質問する。
「それで、今回の総攻撃に合わせて襲撃を決行する…であったな?」
「はい、半兵衛殿曰く『奴らの好きにやらせよ』との事です」
「そうか、儂も信長様に同じことを言われておる…」
二人が顔を見合わせて話し込んでいる中、昼間の攻勢を終えた小西行長が本陣へ戻ってきた。
「お二方ともお揃いで!被害はでましたが、江戸城まであと4㎞のところまで迫りました!」
副将であり、一番隊の司令官を務める行長に、秀家は改めて労をねぎらう。
「行長殿、先頭での指揮ご苦労でござった!」
「引き続き夜は後続の部隊が入れ替わり攻め入るので、今夜はゆっくり休まれて下され!」
「秀家殿、我等への気遣い痛み入る!」
礼を取る行長に、秀家は気になっていたことを聞く。
「どうじゃ行長殿、もう十分に前線で暴れたであろうから、そろそろこの陣にて儂や隆景殿を補佐してもらえぬか?」
「こう言っては何じゃが、其方は別に武勇に優れておるわけでもなかろう?」
秀家の質問に、行長は考え、そして答える。
「実は…儂自身にもよく分らぬのだが、ある使命感のようなものが沸き上がってきたのじゃ」
「使命感?」
秀家の言葉に、行長は軽く頷く。
「左様、この戦が決まってから、心の中に表れた『一番隊となり、誰よりも早く江戸城を落とす』と言う言葉が離れなくなってのう…」
「あと、敵の指揮官である『加藤清正』の名を聞いてから、どうしても奴だけは儂が倒したいという気持ちが抑え切れなくなってしもうた」
「それにあの男、何故か儂が『商人上がり』と言う事を知っていたようなのじゃ」
この件に関しては、秀家や隆景をはじめ、皆が不思議に思っていた。
「確かに、捕らえた飯田直景をはじめ、奴らは儂らのことを良く知っている様じゃった」
「情報が漏れた?いや、我が国に限ってそのような事はないはず…」
「「「奴ら、一体何者なのだ?」」」
三人が敵を考察している中、江戸城は最大の危機を迎えようとしていた。
「なんじゃと…頼廉殿は行方不明となったのか?!」
「はい、我々が電撃と墜落から正気に戻ったときには、既に頼廉様の姿はございませんでした…」
「本当に…間違いないのじゃな?」
「間違いございません!」
何度も聞き直す秀家であったが、頼廉の部下の言葉は変わらなかった。
「なんてことだ…頼廉ほどの猛将が倒されるとは…」
ショックを受ける秀家に、更に部下は話を続ける。
「しかも相手は、例の『女戦士』でございました」
「なんじゃと!あのふざけた服装で、訳の分からん事を言っておった小娘共が、重秀殿に続き頼廉殿も攫った連中と申すのか!」
露出度高めなヒロイン物の服装だった二人の言動が、あまりにもふざけたように見えた日ノ本の兵たち。
そんな彼女たちに二度もやられたとあって、怒りのあまり扇子を叩きつけた秀家。
「秀家様、申し訳ござらぬ」
「あのおかしな格好をした者たちの強さは分っておりましたが、まさか猛将の頼廉殿まで敵に捕らえられるとは想定外でありました…」
軍師の小早川隆景が秀家に謝罪すると同時に、もう一つの報告を行う。
「頼廉殿が捕まったのは想定外でございましたが、この囮作戦により『例の策』は順調に進んでおるようでございます」
軍師・隆景の言葉を聞き、無表情となる秀家。
「…そうか、信長様が呼んだ、例のあいつ等か…」
二人が話す奴らとは、最近信長と半兵衛が招き入れた、国籍不明の傭兵集団である。
秀家は短く答え、隆景に訊ねた。
「たしか『ストレンジャー』だったか?隆景殿、貴殿は奴らのことをどう思う?」
小早川隆景は目を瞑り、少し考える。
「…正直に申し上げますと、私も得体のしれぬ奴らの事は、好きではありませぬ」
「されど、彼らの実力は間違いございませぬ」
「実際に奴らは、既に江戸城下へと潜り込み、襲撃の機会を伺っておりました」
説明を終えた隆景に、秀家は再度質問する。
「それで、今回の総攻撃に合わせて襲撃を決行する…であったな?」
「はい、半兵衛殿曰く『奴らの好きにやらせよ』との事です」
「そうか、儂も信長様に同じことを言われておる…」
二人が顔を見合わせて話し込んでいる中、昼間の攻勢を終えた小西行長が本陣へ戻ってきた。
「お二方ともお揃いで!被害はでましたが、江戸城まであと4㎞のところまで迫りました!」
副将であり、一番隊の司令官を務める行長に、秀家は改めて労をねぎらう。
「行長殿、先頭での指揮ご苦労でござった!」
「引き続き夜は後続の部隊が入れ替わり攻め入るので、今夜はゆっくり休まれて下され!」
「秀家殿、我等への気遣い痛み入る!」
礼を取る行長に、秀家は気になっていたことを聞く。
「どうじゃ行長殿、もう十分に前線で暴れたであろうから、そろそろこの陣にて儂や隆景殿を補佐してもらえぬか?」
「こう言っては何じゃが、其方は別に武勇に優れておるわけでもなかろう?」
秀家の質問に、行長は考え、そして答える。
「実は…儂自身にもよく分らぬのだが、ある使命感のようなものが沸き上がってきたのじゃ」
「使命感?」
秀家の言葉に、行長は軽く頷く。
「左様、この戦が決まってから、心の中に表れた『一番隊となり、誰よりも早く江戸城を落とす』と言う言葉が離れなくなってのう…」
「あと、敵の指揮官である『加藤清正』の名を聞いてから、どうしても奴だけは儂が倒したいという気持ちが抑え切れなくなってしもうた」
「それにあの男、何故か儂が『商人上がり』と言う事を知っていたようなのじゃ」
この件に関しては、秀家や隆景をはじめ、皆が不思議に思っていた。
「確かに、捕らえた飯田直景をはじめ、奴らは儂らのことを良く知っている様じゃった」
「情報が漏れた?いや、我が国に限ってそのような事はないはず…」
「「「奴ら、一体何者なのだ?」」」
三人が敵を考察している中、江戸城は最大の危機を迎えようとしていた。
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