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群雄進撃編
第265話 大空のサムライたち
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時間は五分前にさかのぼる。
龍たちが穴から飛び出し空を進軍する中、その更に上空を『坂井小隊』が龍を追跡していた。
「隊長、あいつら全く気づきませんね?」
「油断するなよ!奴らが襲撃するギリギリのタイミングで仕掛けるぞ!」
「了解!」
坂井達が搭乗する『零式戦闘機二一型』は、他の機種と全く違ったタイプである。
他の機種は全て魔力が原動力に対して、こちらはガソリン燃料と魔力を使い分け飛行する『ハイブリッド機』となっており、プロペラと風力噴射口が付いている。
最高速度は530㎞と全機種の中で一番遅いが、代わりに航続距離が飛躍的に伸び、一定時間の戦闘が可能となった。
また、坂井三郎が搭乗する機体のみ、装甲を極端に削り、運動性と航続距離・速度上昇を計ったピーキー仕様である。
更に、弾数は少ないが『20㎜機関砲』を2門装備し、龍などの大型生物に大ダメージを与える事が可能となった。
ただ、弾数が少ないこの武器を、坂井三郎自身は嫌っていたのだが、通常の『7.7㎜機銃』では龍に致命傷を与える事ができないことが判明し、しぶしぶ装備追加となっていた。
「副長は、前世では何歳で死んだんだ?」
坂井は何気なく尋ねる。
「わたしですか?32歳まで生きましたよ!」
「真珠湾にも参加しましたし…まぁ、ミッドウェーで飛行機に乗ることもなく、蒼龍の中でおっ死んじまいましたがね!」
「おっ?副隊長長生きですね!俺は25の時にガ島(ガダルカナル)から帰還途中、燃料切れで墜落後にフカの餌になりましたぜ!」
「俺も24でガ島だったなぁ、グラマン4機に囲まれて、火だるまになって墜落しちまった!」
「私は20の時に、特攻をかけて死にました…」
「僕は18の時に、特攻に行く前の練習で着陸に失敗してそのまま…」
隊員たちが前世での最後で盛り上がる中、浮かない顔の若い二人が話す。
「…そうか、結果はどうあれ、皆長生きはしてないわけだな…」
副長の、その後の言葉を遮り、龍を見張る一番若い隊員が報告する。
「龍が速度を落とし、攻撃の機会を伺っています!」
全員に緊張が走り、坂井が指示を出す。
「副長!このまま皆を連れて龍一頭に攻撃を集中し一撃離脱、そのまま地上部隊の援護を行え!」
「一撃離脱って…まさか隊長ひとりで、空の奴らを相手するのでありますか?!」
心配する部下たちに、坂井は笑って答える。
「心配するな!俺の機体は特別仕様だから、奴らの攻撃など当たりはせん!」
「それよりも、数の上で形勢が良くない地上部隊を、皆で援護してやれ!」
「分かったらサッサと行け!」
「「「了!!!」」」
返事と共に、部下たちは一気に急降下していく。
(それでいい!前世で無念の最期を遂げたお前たちだが、せめて現世では天寿を全うさせてやるからな!)
坂井は機体を逆さにし、部下たちが離脱していくところを確認すると、自らもそのまま急降下を始めた。
急降下に弱かった前世のゼロ戦と違い、急降下時の速度は700㎞超となり、機体の安定性も格段に上昇している。
やがて龍に姿を視界にとらえた坂井は、龍の頭上でこちらを見ようとしている人物がいることに気付く。
(敵の指揮官?)
そう考えると同時に20㎜の引き金を引き、衝撃音と共に次々と弾が飛び出す。
攻撃を真上から喰らった指揮官は、体の一部を吹き飛ばされて、そのまま地上へ墜落し、同じく頭に数発の弾を受けた龍も、もがきながら落下していった。
坂井の機体はそのまま上昇し、それを阻止する雑賀衆が一斉に銃撃を行う。
(偏差射撃とはなかなかやるが、この程度では俺の機体には当たらんよ!)
坂井は得意の『横滑り』を使い、相手に的を絞らせない。
結局、全く被弾しないまま敵の弾幕を突破してしまった。
最初の高度まで上がり、坂井は20㎜の弾数を確認する。
(殆ど弾は残っていないな…)
「こちら隊長機、龍を一頭撃墜した!地上の状況はどうなっている?」
「こちら副隊長、現在敵固定砲台を一つ破壊!」
「現在もう一つの砲台攻撃を行うも、弾薬切れでトドメがさせない状況」
「了!今から其方の加勢に向かう!」
そのまま機体を急降下させると、途中で火を噴きながら暴れて手が付けられない龍とすれ違う。
(そうか、龍の指揮官がいなくなって制御できる者がいなくなってしまったか…)
坂井はそのまま、地上部隊を攻撃する部下たち発見し、砲台に向けて20㎜を全て撃ち尽くす。
坂井の銃弾は砲台を貫通し、弾薬庫に当たったのか大爆発を起こした。
「よっしゃー!隊長お見事です!」
「さすがは隊長だぜ!」
大喜びする部下たちの無線に、全員無事であることを確認した坂井は、皆に号令する。
「よし!全機帰投するぞ!」
「「「了解!!!」」」
十分な戦果を上げた坂井小隊は、そのまま横浜へと帰って行った。
龍たちが穴から飛び出し空を進軍する中、その更に上空を『坂井小隊』が龍を追跡していた。
「隊長、あいつら全く気づきませんね?」
「油断するなよ!奴らが襲撃するギリギリのタイミングで仕掛けるぞ!」
「了解!」
坂井達が搭乗する『零式戦闘機二一型』は、他の機種と全く違ったタイプである。
他の機種は全て魔力が原動力に対して、こちらはガソリン燃料と魔力を使い分け飛行する『ハイブリッド機』となっており、プロペラと風力噴射口が付いている。
最高速度は530㎞と全機種の中で一番遅いが、代わりに航続距離が飛躍的に伸び、一定時間の戦闘が可能となった。
また、坂井三郎が搭乗する機体のみ、装甲を極端に削り、運動性と航続距離・速度上昇を計ったピーキー仕様である。
更に、弾数は少ないが『20㎜機関砲』を2門装備し、龍などの大型生物に大ダメージを与える事が可能となった。
ただ、弾数が少ないこの武器を、坂井三郎自身は嫌っていたのだが、通常の『7.7㎜機銃』では龍に致命傷を与える事ができないことが判明し、しぶしぶ装備追加となっていた。
「副長は、前世では何歳で死んだんだ?」
坂井は何気なく尋ねる。
「わたしですか?32歳まで生きましたよ!」
「真珠湾にも参加しましたし…まぁ、ミッドウェーで飛行機に乗ることもなく、蒼龍の中でおっ死んじまいましたがね!」
「おっ?副隊長長生きですね!俺は25の時にガ島(ガダルカナル)から帰還途中、燃料切れで墜落後にフカの餌になりましたぜ!」
「俺も24でガ島だったなぁ、グラマン4機に囲まれて、火だるまになって墜落しちまった!」
「私は20の時に、特攻をかけて死にました…」
「僕は18の時に、特攻に行く前の練習で着陸に失敗してそのまま…」
隊員たちが前世での最後で盛り上がる中、浮かない顔の若い二人が話す。
「…そうか、結果はどうあれ、皆長生きはしてないわけだな…」
副長の、その後の言葉を遮り、龍を見張る一番若い隊員が報告する。
「龍が速度を落とし、攻撃の機会を伺っています!」
全員に緊張が走り、坂井が指示を出す。
「副長!このまま皆を連れて龍一頭に攻撃を集中し一撃離脱、そのまま地上部隊の援護を行え!」
「一撃離脱って…まさか隊長ひとりで、空の奴らを相手するのでありますか?!」
心配する部下たちに、坂井は笑って答える。
「心配するな!俺の機体は特別仕様だから、奴らの攻撃など当たりはせん!」
「それよりも、数の上で形勢が良くない地上部隊を、皆で援護してやれ!」
「分かったらサッサと行け!」
「「「了!!!」」」
返事と共に、部下たちは一気に急降下していく。
(それでいい!前世で無念の最期を遂げたお前たちだが、せめて現世では天寿を全うさせてやるからな!)
坂井は機体を逆さにし、部下たちが離脱していくところを確認すると、自らもそのまま急降下を始めた。
急降下に弱かった前世のゼロ戦と違い、急降下時の速度は700㎞超となり、機体の安定性も格段に上昇している。
やがて龍に姿を視界にとらえた坂井は、龍の頭上でこちらを見ようとしている人物がいることに気付く。
(敵の指揮官?)
そう考えると同時に20㎜の引き金を引き、衝撃音と共に次々と弾が飛び出す。
攻撃を真上から喰らった指揮官は、体の一部を吹き飛ばされて、そのまま地上へ墜落し、同じく頭に数発の弾を受けた龍も、もがきながら落下していった。
坂井の機体はそのまま上昇し、それを阻止する雑賀衆が一斉に銃撃を行う。
(偏差射撃とはなかなかやるが、この程度では俺の機体には当たらんよ!)
坂井は得意の『横滑り』を使い、相手に的を絞らせない。
結局、全く被弾しないまま敵の弾幕を突破してしまった。
最初の高度まで上がり、坂井は20㎜の弾数を確認する。
(殆ど弾は残っていないな…)
「こちら隊長機、龍を一頭撃墜した!地上の状況はどうなっている?」
「こちら副隊長、現在敵固定砲台を一つ破壊!」
「現在もう一つの砲台攻撃を行うも、弾薬切れでトドメがさせない状況」
「了!今から其方の加勢に向かう!」
そのまま機体を急降下させると、途中で火を噴きながら暴れて手が付けられない龍とすれ違う。
(そうか、龍の指揮官がいなくなって制御できる者がいなくなってしまったか…)
坂井はそのまま、地上部隊を攻撃する部下たち発見し、砲台に向けて20㎜を全て撃ち尽くす。
坂井の銃弾は砲台を貫通し、弾薬庫に当たったのか大爆発を起こした。
「よっしゃー!隊長お見事です!」
「さすがは隊長だぜ!」
大喜びする部下たちの無線に、全員無事であることを確認した坂井は、皆に号令する。
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