神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第261話 囚われの身2

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「お初におめにかかる、私は毛利家重臣・小早川隆景と申す」

「飯田直景、加藤清正様の家臣団の一人じゃ」

「そうか、主は加藤清正と申すのか」

隆景の返事を聞きながら、飯田は周りにいる武将や兵たちの動きを確認する。

(ふ~ん、こんなものか…)

目で周りを見渡す飯田に、業を煮やした行長の部下たちが敵の情報を聞き出すために質問する。

「おい!お前たちの兵力はどれ程おる?」

「お前のその姿は半獣化なのか?」

「お前たちの王や帝は一体どこにおる?!」

「あのカラクリはお前たちが造ったのか?」

矢継早に質問してくるも、一切無視する飯田直景。

「貴様!我々を無視するのか!」

「ぷっははははは!」

怒った部下の言葉に、大笑いで返す飯田。

「いや失礼、お主たちのくだらない質問に、思わず笑いをこらえきれなくなってしまってな!」

「何じゃと!捕虜のくせに何という口の利き方!」

怒り出す部下の中、突然飯田めがけて槍先が迫り、ケラになっている前足で受け止める。

「お前、礼儀が全然なってねぇな!」

「ふん!あくびの出るような突きを誰が出したかと思ったら、ろくでなしの六左衛門か!」

「ほ~う?捕虜だから死なないと勘違いしているのか?」

六左衛門の槍を押し込む力が強くなる。

「やめんか、貴様ら!」

「こいつは殺されても何も話さぬ!儂の部下でありながら、そんなこともわからんのか!」

行長は自分の部下を叱りつけた。

「チッ!!」

六左衛門は舌打ちして、槍を引き収めた。

「…お前らの仲間が儂らに捕まっているだろ?そいつはお前たちの事をぺらぺらと話す奴なのか?」

「!!」

何も言えなくなった部下たちに、そういう事だと答える飯田。

「飯田とやら、部下が余計なことを聞いてすまなかったな」

謝罪する行長と部下に替わり、隆景が質問を続ける。

「いくつか教えてもらいたいのだが、飯田殿は生まれついての半獣だったのか?」

僅かな時間考えた飯田は、そうだと答える。

「その姿から察するに、飯田殿は「ケラ」であるか?」

「まぁ、ケラで違いないな」

「飯田殿のほかにも、虫から半獣になれるものはおるのか?」

これについて飯田は何も答えなかった。

「そうか、邪魔したな。牢ではあるが、戦が終わるまでゆっくりされよ」

隆景はそう言って背を向け、秀家たちはそのまま陣へ戻るため歩き出す。

「総大将・宇喜多秀家殿に申し上げよう!」

「もしも、この領地が欲しいだけで侵攻してきたのであれば、やめておいたほうがよいぞ?」

にやりと笑って飯田の言葉に、足を止め振り向く三人。

「お主たちは、今戦っておる亜人国・ラビット国の力をよく知らないであろう?」

「このまま戦を続けれけば、必ずや取り返しがつかないことになるぞ!」

「何じゃと!貴様!」

飯田の発言に、再び怒り出す行長の家臣たち。

「突然何故そのような事を申す?」

秀家は冷静に飯田に訊ねる。

「…なぁに、ただの老婆心じゃよ」

ふっと笑って、そのまま飯田は後ろを向き横になり眠ってしまった。

「軍師殿、奴が言っていることはどういう事でござるか?」

秀家の質問に、隆景は神妙な面持ちで目を瞑る。

慣れない地で未知の兵数、理解を超えたカラクリに、敵武将が皆、半獣となれる状況…。

隆景は、短期間で敵を破ることは難しいと考えていた。

しかし、これほどの大軍を動かした上で、今後の物資を考えると、悠長に長期戦へ持ち込む事は出来ない。

軍師・小早川隆景は、決断し進言する。

「秀家様、ここは損害をある程度覚悟して、力押しで行くしかございませぬ」

「詳細は陣に戻りまして、本願寺軍の指揮官たちと共に説明いたします」

隆景の進言に、頷く秀家と行長。

こうして本陣に戻った秀家たちは、合流した本願寺軍と共に、夜遅くまで江戸城攻略の軍議を行った。
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