神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第258話 二人の二刀流

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清正たちが小西行長を挑発していたころ、呼延灼は日ノ本兵の倒れた上を駆けていく。

(あれが敵の副将か!)

敵を見定め進撃する呼延灼の前に、一人の武士が立ちはだかる。

その男が剣を抜き、呼延灼の愛馬『踢雪烏騅(てきせつうすい)』の足に太刀で斬りかかるも、踢雪烏騅は前足を上げてこれを躱す。
武士はそのまま馬の腹へと潜り込み、小太刀で馬の下腹部に突きを放つ!

間一髪、愛馬の危機を察知し、下馬した呼延灼の双鞭に小太刀をはじかれた。

「韓王から賜った大事な馬に斬りかかるとは、困った方じゃな」

踢雪烏騅は二人の戦いを邪魔しないようにと思ったのか、少し離れて主人の戦いを見守り始めた。

「日ノ本の剣士か?私の名は呼延灼!韓ノ国の将軍である!」

白い着物に赤い肩衣を着た武士は胸を張って挨拶をする。

「我が名は『宮本武蔵(みやもと・むさし)』と申す!」

「世話になっている六左衛門殿の主人である、小西行長殿の恩に報いるため、お主の相手をさせて頂く!」

名乗りを上げた武蔵は、腰から2本の刀を抜き構えた。
じりじりと詰め寄る二人。

やがて間合いに入ったと思った瞬間、双方が電光石火の速度で剣撃を放ち始めた。

武蔵は目にも止まらぬ速さで呼延灼に攻撃を仕掛けるが、呼延灼はそれをはじき受け止め流し躱す。

呼延灼の双鞭は重く、片手持ちである武蔵の刀をはじき飛すのだが、もう片方の刀が攻撃を仕掛けてくるため、次の攻撃に繋げられずにいた。

周りで見ていた妖怪たちは、その攻防を固唾をのみながら見て呟く。

『すごい、まるで化け物同士の戦いだ』と。

幾数十合の金属音が付近に響き渡ったであろうか、戦況は徐々に武蔵へ有利となっていく。

元々守勢であった呼延灼ではあったが、武蔵が呼延灼の鞭捌きを見切り、更に攻勢に出たのである。

左手に持った小太刀を囮に、右手の刀で主攻を、またその逆を瞬時に切り替え、呼延灼は翻弄される。

武具の隙間から斬られ、切り傷も少しずつ増えていく。

連環馬を指揮していた韓滔・彭玘も、将軍の劣勢には気付いていたが助太刀には向かわなかった。

「どうした呼延灼とやら!何なら部下を呼びよせて、助けてもらってもよいのだぞ?」

攻撃の手を休める事なく話しかける武蔵に、呼延灼はにやりと笑って返答する。

「いや、確かに其方は強いが、私一人で十分じゃ!」

「ほう?そこまで言うとは、何かまだ秘策でもあるのか?」

武蔵の目が鋭くなり、呼延灼の攻撃に備える。

「ご名答!」

呼延灼は武蔵に返事をすると同時に、固有スキルを発動した。

「行くぞ!」

掛け声と同時にふるった左の鞭を、武蔵は右手の刀で払い流す。

流すと同時に、武蔵は左手の小太刀で呼延灼に斬りに入り、呼延灼が鞭で防ぐ。

行く数度の攻防を繰り返したが、やがてその拮抗が崩れはじめる。

みるみるうちに、武蔵の剣速「基い」動きが遅くなっていったのだ。

(どういうことだ?奴に触れるたびに体が重くなっていく?!)

やがて武蔵は自身の重さに耐えられなくなり、片膝を付いてしまう。

その機を呼延灼が見逃すはずもなく、刀で防ぐ武蔵を双鞭でその上から叩き続け、遂に自重に耐えられなくなった武蔵はうつ伏せに倒れてしまう。

(だめだ…もう立つこともできぬ…)

もはやこれまでと覚悟する武蔵。

しかしここで、思わぬ援軍が上空より駆けつける。

「下間頼廉推参なり!」

「亜人国の名のある武将とお見受けした!」

「いざ!尋常に勝負!」

頼廉は名乗りを上げると、呼延灼に袈裟斬りかかった。

頼廉の袈裟斬りを、呼延灼は双鞭をクロスにして受け止める。

(?なんだこの違和感は?)

頼廉は、僅かに体が重くなったことに気付く。

「日ノ本の武将殿!奴の鞭には触れてはならぬ!」

「奴の双鞭に触れると、体が重くなって動けなくなるぞ!」

「!」

武蔵の一言で、全てを悟った頼廉は、部下たちに指示を出す。

「付近にいる日ノ本兵たち!あの男に石を拾って投げつけろ!」

「鴉たちは上空より、奴の背後から攻撃を仕掛けるのだ!」

頼廉の言葉を聞き、周りの妖怪たちは投石や炎、水などを吹き掛けて応戦を始めた。

(洒落臭い!私の鎧にそのような攻撃は効かぬ!)

(先にあの空飛ぶ指揮官を潰すか!)

呼延灼が頼廉に仕掛けようと考えたとき、味方の陣地より退却命令の法螺貝が鳴る。

(まぁ、本来の目的は達成できたのでよしとするか!)

呼延灼は愛馬・踢雪烏騅を呼び寄せ飛び乗った。

「日ノ本の兵士たちよ、今日は楽しませてもらった!」

「後日また会おう!」

呼延灼はそう言い残し、踵を返して自陣の障壁内へと撤退した。

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