神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第247話 伊予の戦い 2

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翌日、美しかった伊予の町並みは、一夜にして焼け野原となってしまった。

陶晴賢率いる第二水軍は、敵の反撃を警戒しつつも、無事伊予への上陸を果す。

周りのあちこちから煙が立ちあがり、焦げ臭いにおいが街一帯に充満していた。

建物の下には、種別不明の焼死体が無数に転がっている。

「輝元様!無事伊予の町を陥落致しました」

片膝を付き、輝元に報告する晴賢と長房親子。

「晴賢よ…他に手はなかったのか?」

上陸を果たした毛利輝元は、その惨状を目の当たりにし、晴賢を褒めるより先にこの言葉がつい出てしまう。

「何をおっしゃられる?これは戦ですぞ?」

晴賢は驚いたような顔で輝元の顔を見上げる。

「こちらの被害はほとんど出ておりませぬ!さらに住民共もおりませんので、暴動を起こされる心配もない!」

「一体何が不満なのでしょう?」

晴賢の言葉に返す言葉がない輝元。

「そうか…そうだな」

「こちらの被害を出さず、見事敵の後ろを抑えてくれた!」

「晴賢よ!見事であった!」

「ははっ!」

晴賢と長房は頭を下げる。

「では早速廃材を片付けて、我らの陣を構築すると致します」

「待て、晴賢!」

「はい?」

立ち上がり作業に入ろうとする晴賢を、輝元は呼び止める。

「ここで亡くなった伊予の住民を、丁重に埋葬してやってくれ」

「…承知致しました」

晴賢は軽く頭を下げて、輝元と別れた後、舌打ちをしながら長房に指示を出す。

「長房!死体を一カ所に集めて埋めておけ!」

「ははっ!」

父と別れた後、長房は面倒くさそうに、こんどは部下へ指示を出した。

「おい!この黒焦げになった死体を集め、全て海に放り込め!」

「!宜しいのですか?!」

「晴賢様は今、埋葬せよと申されておりましたが?」

部下の言葉に、長房は鼻で笑う。

「ふん!死んだものはただの抜け殻じゃ!」

「ましてや無数にある敵の住民の亡骸を、いちいち集めて埋葬するなど時間の無駄じゃ!」

「海に投げ込んでおけば、小魚共が喰って後に豊漁になろうと言うものじゃ!」

長房の言葉は、部下たちも同意し兼ねるものであったが、上官である長房の命令には従うしかなかった。

部下たちは承知し、指示通りに亡骸を海へと投げ捨てた。

後に長房のこの行動が、晴賢が疑念に思うきっかけを永遠に失わせてしまう。

こうして伊予の町は毛利軍の手に落ち、乃木率いる第三軍は挟撃の危機にさらされた。
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