神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第238話 五稜郭の戦い 1

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武田陣営がアームストロング砲の配備を終えた夜、戦闘は突然始まった。

「敵襲!敵城方角より騎兵らしき部隊がこちらに向けて銃を発砲中!」

見張りからの報告に、夜襲を予想していた武田陣営は臨戦態勢で臨んでいた。

高坂昌信は歩兵団に指示を出す。

「前衛のオークに鉄の盾を持たせ、敵の銃撃と突撃を防げ!」

高坂が布陣したオークたちの盾には、甲高い金属音が次々と鳴り響く。

「鉄砲兵はその隙間から銃撃を行い、敵を近づけさせるな!」

隙間から一斉に射撃を行うオーク兵の攻撃は効果的で、攻めあぐねた奇襲部隊はそのまま城内へと引き上げる。

「追撃はするな!伏兵が潜んでおるやもしれぬ!」

昌幸の指示は全軍に徹底しており、どの部隊も夜襲部隊を追うとはしなかった。

こうして武田軍は、初日の夜襲を損害無しで撃退した。

「ふん!亜人の奴ら、全然大したことなかったでござるな!」

「まぁ初日やし、様子見と言うところでござろう」

そのまま朝になり、小山田と原は何かあると思って構えていた亜人連合の、実はなんの策もない夜襲攻撃に拍子抜けしていた。

「しかし内藤殿や、馬場殿は貧乏くじを引いたでござるな!」

「まったく、奴らはこの本陣を狙っておる様であるし、彼等はただ城を眺めるだけの仕事となろうて!」

笑いあう二人を横目に、昌幸は高坂に質問する。

「高坂弾正殿はどう思われるか?」

「うむ…確かに此方が準備した状態での奇襲であったため、何もできずに退却したのは判るのだが…」

「だが?」

昌幸は高坂の話の続きを待つ。

「こちらと同じく、敵も損害がほとんど出ていない」

「あれは形だけの奇襲にしか思えないでござるな…」

「なるほど…」

昌幸は考える。

城の奴らが狙っているのは一体何か?

こちらと同じく持久戦か?

されど奴らの旧式大砲では、ここまで届かない事は判明しており、配備さえ終わってしまえば、城に向かって一方的に砲撃が可能だ。

(もしや、あの城にいる兵力は意外に少数なのか?)

考えを巡らせる昌幸のもとへ、前方より報告が入る。

「報告!敵城より騎兵団1,000程が、歩きながらこちらに向かっております!」

「何じゃと!」

昌幸は確認するため、慌てて陣地の前へと行く。

目を凝らした先には、騎馬が横一列に並んで悠々とこちらに歩いて来ている姿が映った。

「おのれ奴ら!舐めおって!」

怒った原昌胤は、昌幸に願い出る。

「軍師殿!儂に奴らの攻撃を命じて下され!」

「…わかり申した!」

一瞬迷った昌幸だが、ここで止めれば味方の士気に影響すると考え、出撃許可を出した。

「原殿は騎兵2000を率い、敵騎兵団へ攻撃を仕掛けよ!」

「承知!」

原昌胤は承服すると、預かったケンタウロス団に号令をかける。

「全軍!あのふざけた行進を行う敵騎馬隊を捻り潰す!」

「儂に続け!!」

「「「応!!!」」」

原昌胤は先頭に立ち、2㎞ほど先の騎兵団に突撃した。

次々と砲撃にさらされる原の騎馬隊であったが、50㎞以上のスピードで進撃してくる為か、砲撃の被害はほとんどなかった。

原騎馬隊の突撃開始に合わせて、城から出た騎兵団も陣形を作り直していた。

(なんだ?中心の俺に対して一列に並ぶような陣形?長蛇か?)

「全軍!敵の突撃に備えよ!」

原騎馬隊の前方兵団はライフル銃を持ち、後ろの者たちは両手に短槍と盾を持ち、やや速度を落としながら前進する。

双方の距離が500mを切り、原や他の前衛が銃を構えたとき、敵の先頭が上空に向かって短銃を撃つ。

乾いた音が平野になり響き、それと同時に一列の部隊が左右へと分かれ、一気に展開していく。

(しまった!突撃ではなく展開か!)

「団長!敵が二手に分かれました!」

「分かっている!我らは右に分かれた奴らを追う!」

「承知!」

原団長の指示を聞き、騎馬隊は右へと舵を切り敵の後ろを取りに行く。

左に分かれた城側の騎兵団は、待ってましたとばかりに原騎馬隊の後ろに回り込み、銃撃を開始した。

ケンタウロス騎兵団は、スピードが速い替わりに戦闘と疾走を同時に行えない。

対して城側の騎兵団は、足で馬を操作しつつ、両手で持ったライフルで狙撃を行える。

これにより、後方のケンタウロスは、次々と倒されていく。

(奴ら、馬に乗ってあれほど正確な射撃ができるのか!)

原騎兵隊は、敵の近代戦の旨さにより、徐々に戦局が不利になっていく。

やがて陣形は、敵右部隊の後方を攻撃しながら、敵左後方部隊に、殿が攻撃を受け続ける状態となった。
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