神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第237話 昌幸の戦略

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函館上陸から一週間、武田軍は五稜郭の砲撃射程ギリギリまで進撃し、全軍で城を包囲したが、そのまま動けずに待機していた。

「勝頼様!一体いつになったら攻撃を行うのじゃ!」

「このようなところに、我々は軍艦に乗って観光に来たわけではございませんぞ!」

麻の軍議にて、小山田達家臣団が攻撃の催促を行うも、勝頼は軍配を持ったまま何も言わずに目を瞑っていた。

この現状を昌幸が説明する。

「敵の本城である五稜郭は、砲撃戦特化で作られた近代的な城であり、平地で隠れる事が出来ないこの地では、攻め手に相当の負担がかかる」

「更に星形で作られており、どこから攻め込むにも死角がなく、それを補佐するように小さな防衛陣があり、ここを突破せねば城に入ることも許されぬ」

現状を話す昌幸に、家臣団の顔は険しくなっていく。

「おのれ!奴らは城から出てこずに、儂らが攻めてくるのをひたすら待っておるのか!」

「昌幸殿よ!何か良い手はないのか?」

苛立ちが募る家臣団に、昌幸は策を説明する。

「この城を攻め落とすには、敵防衛陣の一角を砲撃にて集中攻撃し、そこを突破口に攻め入るしかござらぬ!」

昌幸は敵城の一角に、長距離射程の最新鋭砲『12ポンドアームストロング砲』全6門の配置を急がせていた。

(どうやら我々は、亜人連合の強さを計り違えていたようだ…)

今までの戦い方が通じずに、焦りと怒りが噴出する武田家臣団。

「あと二日もすれば、砲撃が開始できますゆえ、それまでは御辛抱くだされ」

昌幸の回答に、皆一斉に頷く。

「これにて軍議を終了する!」

「各々方、朝って以降の攻撃に備えて準備いたせ!」

「「「ハハッ!」」」

勝頼の号令で、一礼し席を立つ家臣団。

軍議を終え、安堵のため息をつく昌幸に、武田四天王の一人・山県昌景が声を掛ける。

「昌幸殿、苦労の多い職を任されて大変じゃな」

「これは山県様!御心遣い感謝いたしまする」

礼を取る昌幸。

「先ほどの我らの言葉は気にするではないぞ!かく言う儂や他の奴らも、あの城をどう攻めてよいか分からずに鬱憤が溜まっておるだけのことじゃからな!」

「まったくでございます、亜人の奴らはやっかいな城を造ってくれたものじゃ」

素直に二人は敵の城を褒めた。

「そんな中でも、お主はちゃんと攻略法を見つけたではないか?」

「流石は『真田幸隆(さなだ・ゆきたか)』殿の息子!大したものじゃと思っておる!」

山県は褒めるが、昌幸は首を振りながら答える。

「いえいえ、敵の罠とわかっているこの策を餌に、奴らの狙いを計りたいと思いまする」

「ほう?先ほどの策は敵に見抜かれていると?」

山県は質問に、昌幸は答える。

「此度はどうも、奴らが我らをここまで誘導したように思えましてな」

「一体何を企んでいるのかと、探りの意味合いも兼ねて引っかかってみる事に致しました」

「なるほど!一度痛い目を見れば、攻めよ攻めよと騒いでおる重臣たちも、少しは黙るであろうからな!」

「いえいえ山県様、そのような事は考えてござりませぬ…」

山県の言葉に、軽く否定する昌幸。

昌幸の戦略はあくまで持久戦であり、無駄に兵を減らしたくないのである。

このまま一度も戦わずにいれば、やがて家臣団から勝頼を臆病者と罵るものが現れかねないので、できるだけ有利な状況で手合わせをし、何もなければそのまま一気に攻略を行う構えでと昌幸は考えていた。

「さて、儂も軍師殿の指示通りに動けるよう、準備を行うとしよう!」

「山県様!できる限り兵の損害が少ない戦い方をお願いしますぞ!」

「この後の戦いの為にも!」

「?わかった、任せておけ!」

山県は片手をあげながら天幕を出る。

「どうか…このようなつまらぬ戦で命を落としませぬよう…」

昌幸は誰にも聞こえぬ声で呟いた。
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