神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第236話 武田騎兵団

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亜人連合国に浮かぶ3つの島の一つ・蝦夷。

この世界の蝦夷は北海道の1/10程度の大きさであり、東北の正面に浮かぶ小島である。

ひし形の島全体は山岳となっており、唯一の平地部分である西側に『函館』がある。

函館は20㎞ほどの平野となっており、周りを山に囲まれている。

またこの地は、首都江戸までの直線距離が200㎞ほどしかなく、万が一この地を取られてしまえば敵にとっての最前線基地になる為、亜人連合国にとっては絶対に取られてはいけない島である。

その為、この島には攻防に長けた西洋式の城『五稜郭』がある。

函館町の中心にあるその城は星形に造られ、城全体をお堀で囲まれており、『稜堡』で造られた各先端部に砲台に砲を配置している。

その先端部の間には半月堡(はんげつほ)と言う小さな防御陣があり、の後ろから安全に出撃できるようになっていた。

そして今、函館港に日ノ本の揚陸艦隊が到着し、兵たちが次々と下船する。

沖には日ノ本戦艦『甲斐』『信濃』が悠々と外遊し、弁天岬に布陣していた砲台を射程外から砲撃・完全沈黙させていた。

「ふははは!やはり信濃・甲斐の敵になるほどの奴らは、亜人共にはおらんかったのう!」

「その通りですな!最新鋭艦の長距離砲撃のまえでは、奴らの旧式装備では話になりませんのう!」

砲撃を受ける弁天岬を横目に、下船しながら機嫌よく話す『武田騎馬隊』の『小山田信茂(おやまだ・のぶしげ)』と『原昌胤(はらまさたね)』」

「勝頼様!家臣団率いる5,000のケンタウロス兵団及び20,000のオーク兵団・無事下船いたしました!」

海岸に張った陣の上座に座った『武田勝頼(たけだ・かつより)』は、父・信玄から預かった軍配を右手に持ち大きく頷く。

暫くして家臣団が揃い、軍議が始まる。

「勝頼様!蝦夷地への上陸は、つつがなく終了いたしました!」

各騎兵団長を務める『内藤昌豊(ないとう・まさとよ)』『馬場信春(ばば・のぶはる)』『山県昌景(やまがた・まさかげ)』が席を立ち、報告を行った。

席に座る小山田信茂・原昌胤・秋山虎繁(あきやま・とらしげ)・高坂昌信(こうさか・まさのぶ)も席を立ち一礼する。

「勝頼様、只今乱波(忍者)にて付近の調査を行っておりますので、しばらくお待ちください」

「分かった昌幸!軍師であるお前に任せる!」

「ハハッ!」

勝頼の軍師として参戦した『真田昌幸(さなだ・まさゆき)』は、慎重に物事を進める。

そんな中、物見より衝撃の事実が伝わった。

「報告致します!敵の砲台を確認いたしましたところ、宋国の魔族と思われる兵団が多数死んでおります!」

「何!魔族が敵兵にだと?!」

「宋国の奴らは裏切ったのか?!」

戸惑う家臣団に対し、昌幸は大きな声で場を制する。

「皆様方、落ち着かれよ!」

昌幸は物見に対して質問する。

「それで、その砲台のところに魔族兵はいかほど死んでおったのだ?」

「はい!およそ…500人程でございます!」

「生きていた者は?」

「おりました!その生き残っていた5名が、『我らの敵は日ノ本である!』と言い放ち、剣を抜いて襲い掛かってきました!」

「何じゃと!」

黙って聞いていた勝頼は席を立ち、声を上げるが、昌幸は尚も質問を続ける。

「それで、そ奴らはどうしたのだ?」

「はっ!剣を抜いて斬りかかって参りましたので、5人とも斬り倒しました」

「殺したか?!」

「はっ!」

「死体の中に、指揮官クラスはいたか?」

「いえ、全員下士官と一般兵でした!」

話を聞き終えた昌幸は、勝頼に考えを話す。

「ふむ、恐らくこれは、洗脳か死体操作を使って魔族兵を操っていたと思われます」

「人造人間は隷属契約を行った体を使用しておりますので、個人で裏切る事は出来ません」

「魔族将軍階級であれば可能ですが、そうなると今度は我が国との共闘契約で約束を守らねばなりませんので、我々を攻撃する事は出来ません」

「これは個別に捕まった者たちを殺し、ネクロマンサーの力を持つものが操作していたのではと考えられます」

昌幸の説明に、皆が納得する。

「なるほど、ネクロマンサーがいるという事は、迂闊に死ぬ事も出来ないな…」

「しかも500も同時に操作できるとは、上位のネクロマンサーか複数人いるのか…」

困惑する武将たちの心配を、昌幸は一蹴する。

「それだけの人数を操作するのであれば、複雑な指示を出す事は出来ないはずです」

「せいぜい『付近にいるものを倒せ』程度の指示でしょうし、動きも生前のような機敏さもなく、当然スキルや魔法も使えません」

「つまり、肉の壁と言う事だな?」

「その通りです」

「ただ、生きていた5人を操っていた者たちは、別のネクロマンサーが操作していた可能性があるので、注意が必要です」

昌幸の回答に、皆安堵する。

勝頼は席を立ち、皆に号令する。

「皆の者!聞いての通りだ!」

「敵の陣構えが分かり次第、攻撃に入るので各々の部隊の編成を行え!」

「「「おう!」」」

各武将は一斉に天幕を出る。

「勝頼様、宜しいでしょうか?」

「うむ、どうしたのだ?」

皆が居なくなり、昌幸は総大将の勝頼に考えを話す。

「此度の蝦夷攻略は、あまり急がない方が宜しいかと思われます」

「?何故だ?竹中半兵衛殿は早く落とすようにと仰せだが?」

「これ以上は内密に…」

昌幸は勝頼公に耳打ちする。

「なんと!それはまことか!」

「はい、副関白様に仕えております、我が息子・信繁(幸村)からの文ですので、間違いございません」

「信じられん…信長公が豊臣家を滅亡させようと考えているとは…」

狼狽する勝頼。

「殿!この件は本国にいるお館様(信玄)へ早急にお伝えくだされ!」

『我々はどちらに付くのかと?』

この言葉を聞き、勝頼も頷く。

「昌幸よ、よくぞ申してくれた!」

「急ぎ甲斐にいる父上に、この件を手紙に書いてくれ!」

「ハハッ!」

昌幸は急いで手紙を書き始める。

勝頼に話した内容と、もう一つの事実「裏切り」について…。
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