神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第220話 兄弟の絆

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ここは江戸にある古びた長屋

作務衣を着た、小柄なリザードマンの獣人は、長屋の一室を借り、玄関先の道端で七輪にイワシを乗せて焼いていた。

「シンザブロウ兄―!」

軍服を着たガタイの良いリザードマンは、元気のよい声で、兄であるめざしを焼く男のもとへと駆け寄ってきた。

「どうしたジュンゴロウ?そなぁに慌てて?」

シンザブロウはイワシから目を話すことなく、団扇でパタパタと扇ぎながら、弟のジュンゴロウに訪ねる。

「実は今日内示があって、新政府の新造艦『三笠』に参謀として乗艦することが決まったんじゃ!」

「しかも!今回の『連合艦隊』の指揮執るのは『東郷元帥』じゃけんな!」

「あの東郷元帥の参謀になれるなんて、夢のようじゃ!」

大喜びで報告するジュンゴロウ。

「そうか…そりゃ良かったな」

シンザブロウは嬉しくも、感情を抑えて弟の出世を祝う。

「そう言うシンザブロウ兄も、どこかの『騎兵隊長』任されたのじゃろう?」

「わしゃ蝦夷・五稜郭の守備を任命された」

「そうか、蝦夷かぁ」

「あそこなら平地も多うて、騎兵には戦いやすいかもしれんな」

兄の任地に弟も納得する。

「そうなると、シンザブロウ兄ともしばらく会のうなるな…」

少し気を落とす弟に、兄は笑みを浮かべて話す。

「何、遠うに離れとっても、おまえの活躍はきっと耳に入ってくるけん、わしゃちっとも寂しゅうないぞな?」

「そうか!わしのもとにもシンザブロウ兄が活躍する話が入ってくるじゃろうけん、それ楽しみにしとこわい!」

「そういう事じゃ!」

シンザブロウとジュンゴロウは共に笑いあう。

「どうじゃ?丁度イワシが2尾焼けたけん、おまえも一緒に飯食べていかんか?」

「ははは!シンザブロウ兄は、どれだけ偉うなっても、生活が変わらんなぁ」

「わしゃどがいな時でも、この生活が性に合うとるけんな」

笑って答える兄に、弟は心の中で礼を言う。

(貧乏な中わしが生まれ、シンザブロウ兄が早うから働いてくれたおかげで、わしゃ寺に預けられずに、この道へと進む事ができた)

(シンザブロウ兄、いつも優しゅうしてくれて、だんだん(ありがとう)な)

「どうしたジュンゴロウ?早う飯食べるぞな!」

「わかった!」

二人は長屋へと入り、束の間の団欒を楽しむ。

後に、シンザブロウは『秋山好古(あきやま・よしふる)』、ジュンゴロウは『秋山真之(あきやま・さねゆき)』へと進化する。

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