神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第215話 よっとる公の手紙

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時間は三か月前の御所へと戻る。

「ようピットさん!昨日はちゃんと眠れたか?」

縁側で顔を洗っていたピットに、陸奥が元気よく話しかけてきた。

「おはよう陸奥!君の予想通り、考え事をしていたら朝になったよ」

殆ど寝れていないピットは、疲れた顔をして陸奥に返事をする。

「そうか…あまり無理しないで、俺たちにも相談してくれよ」

心配する陸奥に、ありがとうとピットは返事する。

(ピットよ、起きておるか?)

(あ、おはようミントちゃん)

(少し話をするが、よいかのう?)

(うん?どうしたの?)

こう念話で話したピットだが、恐らく日ノ本とルクシルがらみの話とは予想していた。

(まずは昨日の襲撃の件だが、あのあと戻ってみると、わらわの寝室に2つの手紙が残してあったのじゃ)

(手紙?)

そう話して、ミントは2つの手紙の内容を簡潔に話した。

(私『よっとる』は、家臣『山田』の案を受け入れ、無断で『日ノ本』との闇貿易を始めた)

(何度か密貿易を行っているうちに、日ノ本の忍者『猿飛佐助』と言う者から、『関白・豊臣秀吉』より密書を受け取った)

(その内容は、『政敵である織田信長が、私の名を利用して亜人共和国を攻めようとしている』)

(『早期に国を纏め上げて、織田信長の攻勢に備えてほしい』と書いてあったそうじゃ)

(そのことを、当時の将軍『とくもち』に相談したところ、『とくのぶ』と協力し、『公武合体』と、わらわと『とくもち』の婚姻を考え付いた)

(万事、これでうまく行くと考えておった、よっとるであったが、何処からこの事が信長の耳に入り、結果『とくもち』が暗殺されてしまった)

(つまり、暗殺したのは『よっとる』公ではない誰かってこと?)

(そういう事だったのじゃ)

ピットの念話に反応し、話を続けるミント。

(これに驚いたよっとるだったが、さらに驚いたのが、次に送られてきた『副関白・豊臣秀頼』の密書であった)

そう話したミントは、よっとるの手紙と一緒に入っていた『豊臣家の押印が付いた密書』を読み上げる。

『信長が、豊臣家と親密関係にある武将や、外様大名を編成して、亜人連合侵攻を決定した』

『豊臣家も協力するので、早急に国を纏め上げて、信長討伐を協力ほしい』

(事の事態を理解したよっとる公は、『とくのぶ』に相談したのだが、とくのぶが『噓の報告』をわらわに行い、わらわもそれを信じて『よっとる』を冷遇してしまった)

ミントは少しの間黙り、さらに話を進める。

(よっとる自身も、わらわの対応に頭に来て、そのまま怒って帰ってしまったのじゃが、それでも何とかわらわに真相を伝えねばと、秀頼の息子『天草四郎』にこの手紙を託した、と書いてあったのじゃ…)

ミントは手紙を読み終えて、そっと呟く。

(わらわは、よっとるのことを誤解しておった…)

(あ奴は、最初から朝廷と幕府の未来を考えておったのじゃ)

(それにも拘らず、わらわは信用するものを間違えてしまったのじゃ)

ミントは自身のミスに落ち込む。

(ミントちゃん、自分を責めるのは後だよ!)

(まずは、信頼置けるものと手紙の内容を確認し、諸藩の団結を図るのが先決だ!)

(ピット…)

(それに、元はと言えばよっとる公が、亜人たちに対して差別などをやってきたから、大事なときに信用してもらえなかったのだからね!)

(フフ、ありがとうなピット)

ミントは少し照れながら返事をした。

(でも、手紙の内容は確かなの?)

(それは間違いない)

ピットの疑問を、ミントは一蹴した。

(この捺印は間違いなく豊臣家の物じゃ)

(それに…『豊臣秀吉』は信用できる男であることも『ルクシル』に聞いたのじゃ)

(ルクシルに?)

ミントから出た意外な名前に、ピットは驚く。

(これは口止めされておるがゆえ、全ては話せぬ…)

(ただ、豊臣秀吉は『ルクシルたち』の命の恩人であり、その意志を引き継いでおるのが、息子の『秀頼』なのじゃ)

(そうなの!!)

驚愕するピット。

(そう驚くでない!)

(彼女の姉である人物が秀頼の母であり、ルクシルはその叔母にあたる)

(!それはつまり、ルクシルが探していた家族が見つかったってこと?!)

(うむ、そういう事になるのう)

(ちなみに、あと一人の『妹』も、いるとのことじゃ)

(…そうか、ミントちゃんには、いろいろと話しているみたいでよかった)

ピットは、安心と複雑な気分になる。

(その辺も、また後日話せるようであれば話すとしようぞ)

(では、またな!)

こうしてミントの念話は切れた。

「ピットさん、明帝はなんだって?」

ピットは陸奥に、ルクシルが関係していないところだけを話す。

「なるほどな…つまり、天草四郎はこの戦争を終わらせる為に、一番上の明帝を攫おうとしたってわけか」

本当は四郎の真意を知っていたピットだが、いまは陸奥達には話さないことにした。

「よし!そうと決まれば、龍馬さん達に話しておかないとな!」

「そうだね、西郷さんや桂さんにも話しておかないといけないし」

「「じゃあ、早速出かけるか!」」

こうして二人は、龍馬のいる福井藩邸へと向かった。

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