神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

文字の大きさ
上 下
216 / 317
群雄進撃編

第214話 仲間の為に

しおりを挟む
昌王とオウセン率いる(元秦軍)は、終戦締結の為、江陵城の前で会談を開いた。

オウセンはオウホンと、昌王は項梁が、共に主の後ろで立っている。

「昌平君…いや、今は楚の王・昌王であったな?」

「オウセン将軍、どちらでもいいですよ」

二人はふっと笑う。

「正直に申すとな、お前からこの話を聞いた時、成功せぬであろうと思っておった」

「そうですね、私が逆の立場でも、貴方と同じように信じなかったでしょう」                                                                                     

「しかし…まさか、『6人』で10,000以上が守る咸陽を制圧し、皇帝と趙高を討ち取ったなど、一体何の夢物語を聞かされたのかと思いましたよ」

「ああ、これでやつらの為に、苦しめ殺された多くの領民たちの無念も、少しは晴れたであろう」

「まったく…あの『項羽』の連中には、兵法の常識が、全く通用しないとはな…」

「同感です」

二人が話しているところへ、ボウイと陳平がやってきた。

「お二方とも、待たせましたな!」

「いえ、我々も話し込んでおりました」

昌王は二人を見て質問する。

「それで、項羽殿は?」

「それが、師匠(項羽)が言うには『秦の事は、統治するもので決めてくれ!』との事だ」

ボウイの言葉に二人は驚く。

「どういう事だ?秦の領土は『項羽』が治めるのではないのか?」

「まったく訳が分かりません!彼には何か別の考えがあるのですか?」

困惑する二人に、ボウイが説明する。

「何でも、『俺たちは世界の悪魔族を殲滅するので、悪魔族を殲滅した土地は要らぬ!』って言ってたぜ!」

「なっ?秦の領地は要らぬと申すのですか?」

昌王は驚く中、オウセンは笑い始めた。

「ワハハハハハ!」

「何がおかしいのだ!オウセン?!」

昌王の質問に、オウセンは答える。

「昌王よ!そりゃおかしいに決まっておる!」

「魔族に乗っ取られた国とはいえ、これまで俺は、その秦国に命を捧げて尽くしてきたのだぞ!」

「その国を滅ぼした男が、『悪魔が居なくなったので、秦はもう要らぬ』とあっさり言い捨てたのだ!」

「これが笑わずにいられるものか!」

困惑と憤慨の入り混じった二人に、陳平は拱手して答える。

「お二方とも、それは覇王を誤解しております」

「御史大夫(陳平の役職)殿、どういう事だ?」

「覇王は知ってしまったのですよ」

「国や領土を獲るよりも、解放した民衆に感謝される『達成感と満足感』に!」

「覇王は新たな『達成感』を得るために、更なる『魔族退治』を行いたいようです」

陳平の説明に、項梁はぽつりと呟く

「そうか…項羽は変わったな…」

「そうですね、昔の項羽なら、きっと咸陽で略奪や虐殺を行っていたでしょう」

陳平も同意する。

「さて、では項羽殿が統治を放棄した『秦国』はどのように致しましょうか?」

考え始めた昌王に、オウセンは笑って話す。

「ならば、お前が統治すればよいではないか?昌王よ」

「私が?!」

驚く昌王に、オウセンは説明する。

「お前は元々、秦国に長く住んでいたし、国の内情にも詳しかろう」

「それに、お前さえよければ、俺たち『秦の五将軍』が配下に加わろう」

「本当か?!オウセン将軍!」

「ああ、気心が知れたお前のもとなら、俺たちも全力で戦えるからな」

「私も、父上と同じ考えです」

オウセンの言葉に、オウホンも同意する。

少し考えこむ昌王。

「そうか…また皆と共に『中華統一』を目指すのも、悪くないかもしれませんね!」

「ああ、しかし、あとはもう『魏』しか残っていないがな!」

二人は顔を見合わせて笑い出す。

「それでは、城内に宴席を設けておりますので、皆で今後を話し合いましょう!」

昌王に誓った二人は無事進化し、『王翦(おうせん)』大将軍・息子の『王賁(おうほん)』将軍
となり、後日合流する『蒙武(もうぶ)』『蒙恬(もうてん)』『李信(りしん)』と共に、今後の楚を盛り立てていく事となる。

同じ時刻の咸陽。

「大王、このまま咸陽を統治しなくても宜しいのですか?」

亜父の質問に、項羽は笑う。

「亜父よ!ここにいては、まだ見ぬ世界の『強者』と戦えぬではないか!」

「俺は、自分の領地を治めて生きるような、そんな退屈な生涯を送りたくないだけだ!」

項羽の言葉に、龍且たちと馬超たちは歓喜する。

「がはははは!流石は我らの大王様だ!」

「世界を股にかけての『遊牧』ですな!」

「皆簡単に言うが、補給問題とか大変なんじゃぞ…」

盛り上がる武将たちに対して、前途多難の范増。

(まあ良いか。陳平ももう少しいてくれるようだし、大王の行く先を見てみたいしのう)

なんだかんだ言っても、范増は大王の『予想できない未来』に魅かれているのだ。

「さて亜父よ、次はどこへ行こうか?」

項羽の質問に、范増は笑って答える。

「その様な事、私があえて申し上げる必要もありますまいて!」

他の家臣たちも、一斉に頷く。

「フフッ…聞くまでもないな」

『全軍!亜人連合に向けて出陣するぞ!!』

「「「応!!!」」」

項羽の掛け声とともに、『項羽軍』は一斉に飛び立った。

盟友・ピットの危機を救うために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

インフィニティ•ゼノ•リバース

タカユキ
ファンタジー
女神様に異世界転移された俺とクラスメイトは、魔王討伐の使命を背負った。 しかし、それを素直に応じるクラスメイト達ではなかった。 それぞれ独自に日常謳歌したりしていた。 最初は真面目に修行していたが、敵の恐ろしい能力を知り、魔王討伐は保留にした。 そして日常を楽しんでいたが…魔族に襲われ、日常に変化が起きた。 そしてある日、2つの自分だけのオリジナルスキルがある事を知る。 その一つは無限の力、もう一つが人形を作り、それを魔族に変える力だった。

聖獣達に愛された子

颯希
ファンタジー
ある日、漆黒の森の前に子供が捨てられた。 普通の森ならばその子供は死ぬがその森は普通ではなかった。その森は..... 捨て子の生き様を描いています!! 興味を持った人はぜひ読んで見て下さい!!

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

処理中です...