神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第208話 風雲!高知城

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ここは土佐藩の高知城。

その大広間から、怒号が響き渡った。

「なんてことをしてくれた!!」

土佐の城主『よっとる公』は、怒りのあまり、持っていた酒の徳利を『ハンペン』に投げつけた。

徳利は、平伏したハンペンの頭に当たり、頭頂部から血が流れ落ちてくる。

「誰が御所に向かって火を放てと言った!!」

「わしが指示したのは『明帝に真相の手紙を渡してこい』であったろうが!」

「これで我が藩は、完全に『朝敵』となってしまったではないか!!」

怒りが収まらないよっとる公と、黙って平伏するハンペン。

「上様、私からも宜しいでしょうか?」

声を掛けたのは、土佐藩家老「ショウジロウ」だった。

「おう!ショウジロウ!何なりと申してみよ!」

よっとる公の許可を得て、ショウジロウはハンペンに詰問する。

「ハンペン!お前は『日ノ本』の奴らが、御所におられる明帝を、誘拐しようと考えていたことは、知っておったのか?!」

「はい、上士の山田様から、益田(天草)殿が『明帝とは面識がある』故に、従えばよい!」

「このことは、『よっとる公』の指示だ!と申されておりましたので、従っただけにございます」

ハンペンの言葉に、よっとるは反論する。

「わしはそのような許可など、出してはいない!!」

「わしが許可したのは、『明帝の縁者と言う者が、私の書面をもって、明帝へ弁明の力添えをするから、『護衛』を数人貸してほしい』と願い出てきたので、おまえにそう指示したではないか!」

「いいえ!私は、先ほど述べた言葉しか聞いておりませぬ!」

平伏しながら、必死に弁明するハンペン。

ここでショウジロウは、よっとる公に質問をしてみる。

「上様、連絡係の山田はどこにおりますか?」

「最近病気だと抜かして、登城しておらぬわ!」

(そうか、そういう事だったのか!)

ショウジロウは事の真相を理解した。

よっとる公はハンペンが大嫌いで、いつも『山田』を使って、ハンペンへ指示を出していた。

ハンペンもそれを理解し、山田の言葉を、よっとる公の言葉として動いていた。

日ノ本の連中は、このことを逆手に取り、この山田を使って、双方に偽情報を送っていたのだ!

そういえば、最初に日ノ本との『密貿易』を話したのも奴だったな...。

「上様!どうやら我々は『日ノ本』の連中に嵌められたようですぞ!」

その時、大広間へ急報を告げに藩士が入ってきた。

「た、大変です!」

「土佐湾に『日ノ本』の艦隊が現れ、砲撃を行っております!」

「何じゃと!!」

よっとる公が立ちあがろうとした時、複数の黒ずくめの集団が乱入してきた。

ハンペンやショウジロウは、反撃しようにも帯剣しておらず、その場で取り押さえられる。

「やはり、先に手を打って正解だったな」

扇子を持って現れたその男は、忍者の頭領らしき人物と話す。

「直家殿、この城の制圧は既に終わっております」

「うむ!流石は伝説の忍者衆『風魔族』じゃな!」

(風魔族?日ノ本の忍者衆?!)

(ならば、直家とは一体?)

必死に考えを張り巡らせるショウジロウ。

「よっとる公、我が国はこれから『亜人連合国』を攻める為の陣地として、この土佐を借り受ける!」

「貴様ら!勝手なことを!」

怒るよっとる公に、直家は近づき、そっと耳打ちする。

「よっとる公よ、悔しかろう!」

「!」

「徳家の忠臣と謳われた貴様ら一族が、我が国の計略で、『朝敵』まで身を落としたのだからな」

「!!」

「しかし、安心してよいぞ」

「お前たちを朝敵にした『朝廷』も、間もなく消滅するのだからな!」

「貴様―!!」

よっとる公の怒りを他所に、直家は指示を出す。

「よっとる公以下の重臣たちを捕らえ、一カ所に幽閉せよ!」

「よっとる公!お前たちはそこで、自分の国が消えゆくのでも見ておくのだな!」

その言葉を聞き、一人の男が笑いだす。

「アーッハハハハハ!」

「うん?お前は確かハンペンとかいう下級武士」

「何じゃ?気でも触れたのか?」

直家は興味で聞いてみる。

「いや!これから日ノ本が、我が国に壊滅させられるのを想像すると、笑いが止まらんのですよ!」

「ほ~う?」

直家は挑発に乗らず、ハンペンから情報を聞き出そうとする。

「貴様らは、既に死地へと踏み込んでいることを、知ることになるがじゃ!」

『わが国の志士たちを舐めるなよ!』

(なんじゃ、ただの精神論か…)

大した情報はないと判断し、風魔に指示を出す。

「この「ハンペン」と言う郷士は、地下牢に繋げておけ!」

ハンペンはそのまま連行される。

(リョウマ、おまえの言う通り、わしの考えは間違えちょったようじゃ…)

(どうか、お前に託した『勤王党』の者たちで、日ノ本の侵攻をとめてくれ!)

(俺はあの世で、お前らの行く末を見守っちょるぞ!)

背筋を伸ばし連行されるハンペンの頬には、涙がとめどなく流れ続けた。

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