神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第197話 日ノ本の副関白

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「時貞…無茶をしおって」

その男は、小次郎が持ってきた『切り落とされた右腕』を切断された面に付ける。

『ハイ・ヒール!』

呪文と同時に、若武者の手はエメラルドグリーンに輝き、四郎の腕は元通りになり、ほかの外傷も同時に治癒した。

治療が終わると、四郎を小次郎へと渡し、ピットたちの方を向く。

『亜人共和国の皆様、此度は私の愚息『時貞』が迷惑をおかけしました』

エルフの武者は、皆に頭を下げる。

「私の名は『日ノ本の副関白・豊臣秀頼(とよとみ・ひでより)』と申します」

「日ノ本の副関白だと!?」

皆驚く中、ミントはいち早く質問する。

「して、お前の息子は何故わしを攫いに来た!」

「これは、私の父である関白・秀吉殿下を喜ばせようと、勝手に小次郎を連れて攻撃を仕掛けたのです」

静かに説明する秀頼だが、ミントは納得いかない。

「では、何故土佐の浪士共が、一緒に混ざっておる!」

「これは息子が、二人だけで攻め入るのは困難と考え、我が国と協力関係にある土佐の『よっとる』公に相談したようです」

なるほど、古都や御所の内部の造りを知る土佐の力を使い、一気に藤壺まで攻め込めたという事か。

「それで、そちは何故そのような事を、わらわ達に話すのか?」

「どれも、この国を攻める重要な情報ではないか?」

詰め寄るミントに、秀頼は声量を上げて答える。

「明帝、我らの国の者すべてが、この国に侵攻したいと考えているわけではありません」

「!!」

驚くピットたちに、秀頼は日ノ本の歴史を語り始める。

「それまでの日ノ本は、300年以上もの間、戦乱の時代を続けておりました」

「そして今から70年前、尾張の一大名であった『織田信長』公が頭角を表し、有数の大名たちを破り、『天下統一』を目指します」

「しかし、全国の大名たちや国衆の組織的な抵抗にあい、信長公の野望は、なかなか思うように進みませんでした」

「そんな中、信長公が各地を攻略する間に、当時信長公の配下であった、わが父『羽柴秀吉』が、多くの諸大名と公家衆・更には信長の部下を自分の味方へと付け、信長よりも地位の高い『関白』の座を手に入れる事に成功します」

「そして、関白となった父は『征夷大将軍』を信長に授け、それを賜った信長公は『帝の兵』として、各地の大名や国衆を討伐、または降伏させていきます」

「結果、征夷大将軍を賜った信長公は、僅か10年で日ノ本を統一する事になったのです」

秀頼の説明で、日ノ本の歴史を知るピットたち。

そして一人、ルクシルだけが震えながら話を聞いている。

「つまり、信長公や秀頼様の父・関白殿は、100年近く生きているという事ですよね?」

ピットの質問に、素直に答える秀頼。

「はい、信長公含め、複数の大名の中には、20~30代のまま姿を変えずに生きている者がおります」

「そして、父である太閤殿下は『人間』で、母は『エルフ』、その二人の子である私は『ハーフエルフ』となります」

自身はエルフとの混血であることを、何のためらいもなく話した秀頼。

もしかしたら彼は、自分たちの日ノ本に対して、疑問に思っていることも答えてくれるかもしれない。

そしてミントは、皆が一番聞きたいことを尋ねる。

「それで、日ノ本はなぜこの国に攻め込もうとすのじゃ?」

質問したミントの目を見て、秀頼は告白する。

「この戦争は、侵攻自体が目的ではありません」

秀頼の言葉に、一同疑問を持つ。

「では、なんの為に?」

秀頼は答える。

「信長公が『真の日ノ本統一』を実現させるためです」

「来るべき『決戦』に向けて、信長公は邪魔な太閤殿下の配下や、外様大名を中心に出兵させ、全国の大名の不満を全て太閤殿下に集中させるためなのです」

「なんじゃと?我が国の侵攻は、信長が日ノ本の内乱を有利に進める為であったのか!」

ミントの言葉に、秀頼は頷き言葉を続ける。

「そして我が父、太閤殿下には、時間がほとんど残されていないのです」

ここまで話し終えたとき、秀頼の隣に一人の忍が現れる。

「秀頼様、人が集まってきております。撤退を…」

「分かった、『佐助』」

うむと頷き、ミントへ挨拶する。

「明帝、もう少し話したかったが、時間がないようです」
「いつかまた、お会いできましたら、その時すべてお話しいたします」

『出でよ神龍!』

秀頼は召還術を使い、天空から巨大で蛇のような生き物が降りてくる。

「あれは、東洋の龍!」

秀頼たちは、ピットの言う東洋の龍へ飛び乗り、天高く舞い上がろうとした。

「待ってくれ!!」

呼び止めた声の主はルクシルだった。

「副関白様!あなたの母上は何方なのですか!」

ルクシルの突然の質問に、秀頼は即答する。

「母の名は『淀』です!」

それだけ言い残すと、龍は夜の星が広がる空へと消えていった。

「待ってくれ!…頼むから待ってくれ…」

ルクシルは、飛ぶ龍に右手を精一杯伸ばしながら追いかけ、やがて膝から崩れ落ちた。

「ルクシル…」

「ピット…僕は…僕は…」

ルクシルの正面でしゃがんだピットは、黙って背中に手を置き考える。

(ルクシル…君の過去には一体何があるんだ…)

地面に伏せて泣くルクシルを、ピットはさすって見つめる事しかできなかった。
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