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群雄進撃編
第196話 百花繚乱
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天草四郎は、正面に魔法陣を出し、対面するルクシルに次々とファイヤーボールを撃ち続けた。
「わははは、ほらほら!どんどん行くよ!」
ルクシルは剣に魔法の障壁を張り、飛球を次々と跳ね返していく。
「剣に障壁を張るとか、本当に器用だね!」
口では褒めている四郎だが、内心はイライラしていた。
(こいつ、どれだけ魔法で攻撃しても、全て跳ね返しやがる!)
(こうなったら、あれを使うか)
四郎はファイヤーボールの攻撃をやめて、左手で自分の正面に障壁を張った。
そして右手を天に向かって上げ、掌に巨大な闇の玉を作り始めた。
「まずいな…あれは『デス・ボール』」
「あいつ…この辺一帯の生物を皆殺しにする気だ!」
そう理解したルクシルは、四郎の障壁に攻撃を仕掛ける。
「ハハハ、無駄だよおばさん!」
「この障壁は何重にも掛けてあるから、剣くらいの攻撃じゃビクともしないよ!」
そうしている間にも、四郎の右手にある黒い球はどんどん大きくなっていく。
ふと、四郎はルクシルに訪ねる。
「気になっていたんだけどさ、お前何で『変身』を自分にかけているの?」
「まぁ、どっちにしてもこれで終わるんだけどね」
大きくなっていくデス・ボールに、ルクシルは剣を鞘に納め、居合の姿で目を閉じる。
「おや?居合斬りでもやるのかい?」
馬鹿にする四郎を横に、ルクシルは静かにスキルを唱える。
『百花繚乱(ひゃっかりょうらん)』
その瞬間、ルクシルの周りに無数の花の幻覚が地面を覆う。
【報告:百花繚乱を使用に伴い、5分間の攻撃・防御・素早さ・魔力の基礎値が50%上昇・『神の領域』のバフ15%も加算され、計65%の上昇となります】
【注意:百花繚乱使用後は、体力が半分となり、12時間スキルが使えなくなります】
ルクシルの頭の内に、スキルについての説明が行われた。
(なんだ?一体何が起こっている?)
考える四郎の障壁に、ルクシルは居合で斬りつける。
一瞬にして砕け散る障壁。
そして、一緒に斬り落とされた四郎の右手!
「うぎゃー!!」
地面に落ちた右手と同時に『デス・ボール』は消滅し、四郎は地面で転げまわる。
「貴様―!よくも僕の右手を!!」
スキルを使ったルクシルの『変身』は解けており、燃えるような赤い瞳のダークエルフの姿がそこにあった。
倒れた四郎に、ルクシルは咲き乱れる花の中、凛とした姿で歩いてくる。
「えっ?おばあ様?」
そう呟いた四郎だが、ルクシルには聞こえなかった。
「天草四郎時貞、お前には『年上に対しての』礼儀を教えることが必要のようだ…」
そう言い放ったルクシルは、四郎の胸ぐらを掴み、右手で顔を殴り始めた。
「へぶら!」
「ぐばっ!ちょ、やめ、痛い!」
何かを言おうとする四郎だが、ルクシルは攻撃の手を緩めない!
「ごめ、ごふぇんなふぁい…」
「だめだ!お前は私に3回も『ババア!』と言った!」
「ババアなんて言ってまふぇん…おばさんでふ…許してください…」
「また言ったな!!」
「ひー!たふけてー!!」
幻覚の花の中、四郎を怒って殴り続けるルクシルの後ろ姿を、ピットとミントは黙ってみていた。
「やっぱり言われた事、気にしていたんだね…」
「なぁ、ピットよ、お前凄い女性を好きになったな…」
「さすがのわらわでも、何かあったとき、あやつからは助けてやる自信はないぞ?」
「…うん」
ピットはどっちか分からない返事で短く答えた。
やがて、スキルの有効時間を過ぎたルクシルは、気を失った四郎を投げ捨て、疲れた表情で戻ってくる。
「明帝、ご無事で?」
「うむ、そなたが奴を倒してくれたおかげで助かった、ありがとうな」
片膝を付き、礼を取るルクシルに、礼を言うミント。
ルクシルはピットに振り返る。
「ピット…私が言いたいこと、わかるな?」
「はい…ごめんなさい」
ルクシルを置き去りにして、ミントを助けに行ったことを素直に謝る。
「ルクシルよ、わらわに免じて許してやってくれ」
「ピットのおかげで、わらわも攫われずに済んだので、な?」
「ハァ…無事で済んだからよかったものの、次はこんなことが無いようにしてくれ」
ミントの助け舟で、ルクシルのお説教も終了する。
「さてと…あの侵入者どもをどうするかじゃが…」
ミントたちは、天草四郎が倒れている方向を見て、何者かが立っていることに気付く。
「誰じゃ?お前は!」
そこには、煌びやかな鎧を纏った、背の高い『エルフの若武者』が、気を失った四郎を抱きかかえていた。
「わははは、ほらほら!どんどん行くよ!」
ルクシルは剣に魔法の障壁を張り、飛球を次々と跳ね返していく。
「剣に障壁を張るとか、本当に器用だね!」
口では褒めている四郎だが、内心はイライラしていた。
(こいつ、どれだけ魔法で攻撃しても、全て跳ね返しやがる!)
(こうなったら、あれを使うか)
四郎はファイヤーボールの攻撃をやめて、左手で自分の正面に障壁を張った。
そして右手を天に向かって上げ、掌に巨大な闇の玉を作り始めた。
「まずいな…あれは『デス・ボール』」
「あいつ…この辺一帯の生物を皆殺しにする気だ!」
そう理解したルクシルは、四郎の障壁に攻撃を仕掛ける。
「ハハハ、無駄だよおばさん!」
「この障壁は何重にも掛けてあるから、剣くらいの攻撃じゃビクともしないよ!」
そうしている間にも、四郎の右手にある黒い球はどんどん大きくなっていく。
ふと、四郎はルクシルに訪ねる。
「気になっていたんだけどさ、お前何で『変身』を自分にかけているの?」
「まぁ、どっちにしてもこれで終わるんだけどね」
大きくなっていくデス・ボールに、ルクシルは剣を鞘に納め、居合の姿で目を閉じる。
「おや?居合斬りでもやるのかい?」
馬鹿にする四郎を横に、ルクシルは静かにスキルを唱える。
『百花繚乱(ひゃっかりょうらん)』
その瞬間、ルクシルの周りに無数の花の幻覚が地面を覆う。
【報告:百花繚乱を使用に伴い、5分間の攻撃・防御・素早さ・魔力の基礎値が50%上昇・『神の領域』のバフ15%も加算され、計65%の上昇となります】
【注意:百花繚乱使用後は、体力が半分となり、12時間スキルが使えなくなります】
ルクシルの頭の内に、スキルについての説明が行われた。
(なんだ?一体何が起こっている?)
考える四郎の障壁に、ルクシルは居合で斬りつける。
一瞬にして砕け散る障壁。
そして、一緒に斬り落とされた四郎の右手!
「うぎゃー!!」
地面に落ちた右手と同時に『デス・ボール』は消滅し、四郎は地面で転げまわる。
「貴様―!よくも僕の右手を!!」
スキルを使ったルクシルの『変身』は解けており、燃えるような赤い瞳のダークエルフの姿がそこにあった。
倒れた四郎に、ルクシルは咲き乱れる花の中、凛とした姿で歩いてくる。
「えっ?おばあ様?」
そう呟いた四郎だが、ルクシルには聞こえなかった。
「天草四郎時貞、お前には『年上に対しての』礼儀を教えることが必要のようだ…」
そう言い放ったルクシルは、四郎の胸ぐらを掴み、右手で顔を殴り始めた。
「へぶら!」
「ぐばっ!ちょ、やめ、痛い!」
何かを言おうとする四郎だが、ルクシルは攻撃の手を緩めない!
「ごめ、ごふぇんなふぁい…」
「だめだ!お前は私に3回も『ババア!』と言った!」
「ババアなんて言ってまふぇん…おばさんでふ…許してください…」
「また言ったな!!」
「ひー!たふけてー!!」
幻覚の花の中、四郎を怒って殴り続けるルクシルの後ろ姿を、ピットとミントは黙ってみていた。
「やっぱり言われた事、気にしていたんだね…」
「なぁ、ピットよ、お前凄い女性を好きになったな…」
「さすがのわらわでも、何かあったとき、あやつからは助けてやる自信はないぞ?」
「…うん」
ピットはどっちか分からない返事で短く答えた。
やがて、スキルの有効時間を過ぎたルクシルは、気を失った四郎を投げ捨て、疲れた表情で戻ってくる。
「明帝、ご無事で?」
「うむ、そなたが奴を倒してくれたおかげで助かった、ありがとうな」
片膝を付き、礼を取るルクシルに、礼を言うミント。
ルクシルはピットに振り返る。
「ピット…私が言いたいこと、わかるな?」
「はい…ごめんなさい」
ルクシルを置き去りにして、ミントを助けに行ったことを素直に謝る。
「ルクシルよ、わらわに免じて許してやってくれ」
「ピットのおかげで、わらわも攫われずに済んだので、な?」
「ハァ…無事で済んだからよかったものの、次はこんなことが無いようにしてくれ」
ミントの助け舟で、ルクシルのお説教も終了する。
「さてと…あの侵入者どもをどうするかじゃが…」
ミントたちは、天草四郎が倒れている方向を見て、何者かが立っていることに気付く。
「誰じゃ?お前は!」
そこには、煌びやかな鎧を纏った、背の高い『エルフの若武者』が、気を失った四郎を抱きかかえていた。
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