神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

文字の大きさ
上 下
197 / 317
群雄進撃編

第196話 百花繚乱

しおりを挟む
天草四郎は、正面に魔法陣を出し、対面するルクシルに次々とファイヤーボールを撃ち続けた。

「わははは、ほらほら!どんどん行くよ!」

ルクシルは剣に魔法の障壁を張り、飛球を次々と跳ね返していく。

「剣に障壁を張るとか、本当に器用だね!」

口では褒めている四郎だが、内心はイライラしていた。

(こいつ、どれだけ魔法で攻撃しても、全て跳ね返しやがる!)
(こうなったら、あれを使うか)

四郎はファイヤーボールの攻撃をやめて、左手で自分の正面に障壁を張った。

そして右手を天に向かって上げ、掌に巨大な闇の玉を作り始めた。

「まずいな…あれは『デス・ボール』」
「あいつ…この辺一帯の生物を皆殺しにする気だ!」

そう理解したルクシルは、四郎の障壁に攻撃を仕掛ける。

「ハハハ、無駄だよおばさん!」
「この障壁は何重にも掛けてあるから、剣くらいの攻撃じゃビクともしないよ!」

そうしている間にも、四郎の右手にある黒い球はどんどん大きくなっていく。

ふと、四郎はルクシルに訪ねる。

「気になっていたんだけどさ、お前何で『変身』を自分にかけているの?」
「まぁ、どっちにしてもこれで終わるんだけどね」

大きくなっていくデス・ボールに、ルクシルは剣を鞘に納め、居合の姿で目を閉じる。

「おや?居合斬りでもやるのかい?」

馬鹿にする四郎を横に、ルクシルは静かにスキルを唱える。

『百花繚乱(ひゃっかりょうらん)』

その瞬間、ルクシルの周りに無数の花の幻覚が地面を覆う。

【報告:百花繚乱を使用に伴い、5分間の攻撃・防御・素早さ・魔力の基礎値が50%上昇・『神の領域』のバフ15%も加算され、計65%の上昇となります】

【注意:百花繚乱使用後は、体力が半分となり、12時間スキルが使えなくなります】

ルクシルの頭の内に、スキルについての説明が行われた。

(なんだ?一体何が起こっている?)

考える四郎の障壁に、ルクシルは居合で斬りつける。

一瞬にして砕け散る障壁。

そして、一緒に斬り落とされた四郎の右手!

「うぎゃー!!」

地面に落ちた右手と同時に『デス・ボール』は消滅し、四郎は地面で転げまわる。

「貴様―!よくも僕の右手を!!」

スキルを使ったルクシルの『変身』は解けており、燃えるような赤い瞳のダークエルフの姿がそこにあった。

倒れた四郎に、ルクシルは咲き乱れる花の中、凛とした姿で歩いてくる。

「えっ?おばあ様?」

そう呟いた四郎だが、ルクシルには聞こえなかった。

「天草四郎時貞、お前には『年上に対しての』礼儀を教えることが必要のようだ…」

そう言い放ったルクシルは、四郎の胸ぐらを掴み、右手で顔を殴り始めた。

「へぶら!」

「ぐばっ!ちょ、やめ、痛い!」

何かを言おうとする四郎だが、ルクシルは攻撃の手を緩めない!

「ごめ、ごふぇんなふぁい…」

「だめだ!お前は私に3回も『ババア!』と言った!」

「ババアなんて言ってまふぇん…おばさんでふ…許してください…」

「また言ったな!!」

「ひー!たふけてー!!」

幻覚の花の中、四郎を怒って殴り続けるルクシルの後ろ姿を、ピットとミントは黙ってみていた。

「やっぱり言われた事、気にしていたんだね…」

「なぁ、ピットよ、お前凄い女性を好きになったな…」
「さすがのわらわでも、何かあったとき、あやつからは助けてやる自信はないぞ?」

「…うん」

ピットはどっちか分からない返事で短く答えた。

やがて、スキルの有効時間を過ぎたルクシルは、気を失った四郎を投げ捨て、疲れた表情で戻ってくる。

「明帝、ご無事で?」

「うむ、そなたが奴を倒してくれたおかげで助かった、ありがとうな」

片膝を付き、礼を取るルクシルに、礼を言うミント。

ルクシルはピットに振り返る。

「ピット…私が言いたいこと、わかるな?」

「はい…ごめんなさい」

ルクシルを置き去りにして、ミントを助けに行ったことを素直に謝る。

「ルクシルよ、わらわに免じて許してやってくれ」
「ピットのおかげで、わらわも攫われずに済んだので、な?」

「ハァ…無事で済んだからよかったものの、次はこんなことが無いようにしてくれ」

ミントの助け舟で、ルクシルのお説教も終了する。

「さてと…あの侵入者どもをどうするかじゃが…」

ミントたちは、天草四郎が倒れている方向を見て、何者かが立っていることに気付く。

「誰じゃ?お前は!」

そこには、煌びやかな鎧を纏った、背の高い『エルフの若武者』が、気を失った四郎を抱きかかえていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...