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群雄進撃編
第195話 総司と小次郎
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正面に向かい合うように立ち会う、総司と小次郎。
「初めまして、私の名は『佐々木小次郎』。君が死ぬまでの短い時間だが、よろしく頼む」
「こちらこそ小次郎殿。私は新撰組一番組組長『沖田総司』と申します」
「私も、伝説の剣士を討ち取って、子々孫々の自慢話とさせていただきます」
挨拶を終えた二人はそのまま構えに入る。
「いい構えだ、一分の隙もない」
「これは、迂闊に攻めたら、すぐに斬られてしまうな」
「それはこちらの台詞ですよ」
「こちらも貴方の長い大太刀で、攻め方が決まらずにいるのですよ?」
二人は言葉を交わしながらも、じりじりと自分の間合いに干渉できる距離まで詰める
瞬間、総司は小次郎の懐を狙い、間合いへと入り込む。
その動きに合わせて、小次郎から無数の剣撃が総司に向かって放たれる。
二人の数えきれないほどの金属音が、騒然とした御所の夜に音色を奏でる。
総司は愛刀『菊一文字』で、次々と小次郎の斬撃を弾き、間合いを狙うが、小次郎がそれをさせてくれない。
(速い!そして重い!)
攻めあぐねる総司の顔は笑っていた。
ふいに小次郎への斬撃が緩くなり、懐への道筋が見える。
(今だ!)
総司は一気に踏み込もうとする。
(おかしい?これは誘われている?)
(違う、罠だ!)
総司は、一歩踏み出すのをやめた瞬間、鼻っ面を大太刀が通り抜ける。
(これが狙い?否!きっと次が来る!)
咄嗟に判断した総司は、額を守るよう、頭上で刀を横向きに構え、同時に金属音が鳴る。
総司はそのまま小次郎の大太刀を払い飛ばし、態勢を整える。
「ほう、これは驚いた!」
「初見でこの『燕返し』に気付くとは、沖田殿は紛れもない天才だな」
「あなたほどの剣士に褒めて頂けるのは、うれしい限りです」
再び静かに対峙する二人。
今度は小次郎の方から仕掛けた。
小次郎は、上下左右・変幻自在の斬撃を次々と繰り出し、総司に攻撃の隙を与えない。
無数になり続ける金属音と、空気を切り裂くような刀の風切り音。
やがて、その剣撃に耐えきれなくなった総司は、一歩後ろへ飛び退く。
それを見逃さなかった小次郎は、二歩間合いを詰めて、一気にけりを付けに行こうとしたのだが、何かを察知した小次郎は一歩目で踏みとどまった。
そこへ総司が必殺の『三段突き』を繰り出す。
一撃目は上半身を反らして躱し、二撃目を体全体でのけ反り、小次郎の体勢を崩す。
三撃目は避け切れぬと判断した小次郎は、大太刀を総司の刀に当て、軌道が僅かに変わった刀先が小次郎の腕をかすめた。
小次郎は静かに、間合いの外にて構え直す。
「屈辱ですね、私の特技『三段突き』を、知らずに躱したのはあなたが2人目です」
「それは私の言葉です、貴方の突きは完全に躱しきれなかった」
みれば小次郎の右腕から、血がしたたり落ちていた。
ふと、二人は笑いだす。
「ハハハ!今夜は最高の夜だ」
「神は私の前に、これほどの剣士を用意してくれたのだから!」
「それは私とて同じ事です」
「伝説の剣士とここまで渡り合えたとなれば、皆に十分自慢できますから!」
再度総司は構え直し、『最後の攻防』に全てを掛けようとした時、不意に小次郎は剣を収める。
「どうしたのですか?」
不審に思った総司の言葉に、視線を外した小次郎は告げる。
「どうやら勝敗が付いたようだ」
そう言った小次郎の視線の先では、もう一つの戦いが決着を迎えていた。
「初めまして、私の名は『佐々木小次郎』。君が死ぬまでの短い時間だが、よろしく頼む」
「こちらこそ小次郎殿。私は新撰組一番組組長『沖田総司』と申します」
「私も、伝説の剣士を討ち取って、子々孫々の自慢話とさせていただきます」
挨拶を終えた二人はそのまま構えに入る。
「いい構えだ、一分の隙もない」
「これは、迂闊に攻めたら、すぐに斬られてしまうな」
「それはこちらの台詞ですよ」
「こちらも貴方の長い大太刀で、攻め方が決まらずにいるのですよ?」
二人は言葉を交わしながらも、じりじりと自分の間合いに干渉できる距離まで詰める
瞬間、総司は小次郎の懐を狙い、間合いへと入り込む。
その動きに合わせて、小次郎から無数の剣撃が総司に向かって放たれる。
二人の数えきれないほどの金属音が、騒然とした御所の夜に音色を奏でる。
総司は愛刀『菊一文字』で、次々と小次郎の斬撃を弾き、間合いを狙うが、小次郎がそれをさせてくれない。
(速い!そして重い!)
攻めあぐねる総司の顔は笑っていた。
ふいに小次郎への斬撃が緩くなり、懐への道筋が見える。
(今だ!)
総司は一気に踏み込もうとする。
(おかしい?これは誘われている?)
(違う、罠だ!)
総司は、一歩踏み出すのをやめた瞬間、鼻っ面を大太刀が通り抜ける。
(これが狙い?否!きっと次が来る!)
咄嗟に判断した総司は、額を守るよう、頭上で刀を横向きに構え、同時に金属音が鳴る。
総司はそのまま小次郎の大太刀を払い飛ばし、態勢を整える。
「ほう、これは驚いた!」
「初見でこの『燕返し』に気付くとは、沖田殿は紛れもない天才だな」
「あなたほどの剣士に褒めて頂けるのは、うれしい限りです」
再び静かに対峙する二人。
今度は小次郎の方から仕掛けた。
小次郎は、上下左右・変幻自在の斬撃を次々と繰り出し、総司に攻撃の隙を与えない。
無数になり続ける金属音と、空気を切り裂くような刀の風切り音。
やがて、その剣撃に耐えきれなくなった総司は、一歩後ろへ飛び退く。
それを見逃さなかった小次郎は、二歩間合いを詰めて、一気にけりを付けに行こうとしたのだが、何かを察知した小次郎は一歩目で踏みとどまった。
そこへ総司が必殺の『三段突き』を繰り出す。
一撃目は上半身を反らして躱し、二撃目を体全体でのけ反り、小次郎の体勢を崩す。
三撃目は避け切れぬと判断した小次郎は、大太刀を総司の刀に当て、軌道が僅かに変わった刀先が小次郎の腕をかすめた。
小次郎は静かに、間合いの外にて構え直す。
「屈辱ですね、私の特技『三段突き』を、知らずに躱したのはあなたが2人目です」
「それは私の言葉です、貴方の突きは完全に躱しきれなかった」
みれば小次郎の右腕から、血がしたたり落ちていた。
ふと、二人は笑いだす。
「ハハハ!今夜は最高の夜だ」
「神は私の前に、これほどの剣士を用意してくれたのだから!」
「それは私とて同じ事です」
「伝説の剣士とここまで渡り合えたとなれば、皆に十分自慢できますから!」
再度総司は構え直し、『最後の攻防』に全てを掛けようとした時、不意に小次郎は剣を収める。
「どうしたのですか?」
不審に思った総司の言葉に、視線を外した小次郎は告げる。
「どうやら勝敗が付いたようだ」
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