神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第189話 夢叶わぬ男たち

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『新撰組屯所』は、旧豪商の家を借り、改造して出来ている。

元豪商の家だけあって、中は広いが、40名の隊士たちが生活するには、さすがに狭く感じる。

また庭も更地にして広く使え、隊士たちの全体稽古は更地にて行っていた。

そして、この地を借りていた『かたもり』候が、大政奉還の決定に怒り、勝手に古都を去ってしまった為、彼らもこの地を去らなければならなくなった。

「局長、荷造りは今日中に終わりそうです」

「そうか、わかった」

奥の間で手紙を書いていたイサミ局長の後ろに、報告を終えた副長の『トシ』が座る。

「何を書いているのです?局長」

「これか?これはこの古都で、大した活躍も出来ずに離れることが悔しいと、帝に心情を書いていたのだよ」

「帝にですか?果たして読んでもらえますかね?」

「まさか!いくら俺でもそれくらいは判っているよ」

笑いながら筆を進める局長の背中を、寂しそうに見つめるトシ。

「局長、やはり会津に行くんですか?」

「あぁ、このまま古都にいても仕方ないし、会津に帰った『かたもり』公に今後どうするかを聞かないとな」

イサミは振り返らず返事をし、手紙を書き進める。

「なぁ局長、俺たちもう多摩に帰らないか?」

トシの一言に、イサミの筆は止まる。

「きっと会津に行っても、よそ者の俺たちは歓迎されはしない」
「いや、むしろ煙たがられると思うぜ?」

「そんなことはない!かたもり公や会津の人たちは、必ず迎え入れてくれる!」

向きなおって反論するイサミへ、トシも反論する。

「じゃあ、なんでかたもり公たちは古都を離れる際、俺たちに相談もなく行ってしまったんだ?」

「かたもり公や会津の重臣たちは、素行や身元の良く分からない俺たちを、お荷物と思って置いていったんだよ!」

「イサミさん、あんたはもうわかっているのだろう?」

トシの言葉に反論できないイサミ。

「なあ局長、皆の故郷『多摩』で、また最初からやり直そう」

「またみんなで楽しくやろうぜ!」

黙って目を瞑り考えるイサミ。

急に玄関が騒がしくなり、イサミはすっと目を開ける。

「何事だ!」

怒鳴るトシのもとに、玄関からやってきた『ヘイスケ』が慌てて報告する。

「た、大変です!」
「ラビット国の王と、海軍塾の坂本たちが来ております!」

「なんだと!」

顔を見合わせるトシとイサミに、ヘイスケは訊ねる。

「それで、お通ししますか?」

「すぐにお通ししろ!」

こうして、ピットたちと新撰組の会談が始まった。
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