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群雄進撃編
第185話 友との再会
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先日『大政奉還』が行われ、『朝廷』と『幕府』は政務の引継ぎや、他藩への報告と今後の指示、各人事の選出など、多忙の境地に陥っていた。
また、大政奉還に反対していた、土佐藩の『よっとる』公と、会津藩の『かたもり』公など、一部の藩主は、古都を離れそれぞれの藩に帰ってしまった。
そしてピットも、ミントの補佐をすべく、他藩への話し合いに『代理』で赴いたりしている。
「ピットさん、陸奥、待っておったぞ!」
越前藩邸にて、ピットたちを嬉しそうに出迎える坂本龍馬。
龍馬が所属していた「神戸海軍操練所」は、前将軍『とくもち』暗殺の責任を取らされ解散となり、勝海舟(麟太郎より改名)も自宅蟄居の沙汰を受けていた。
「「龍馬さん、無事でしたか!」」
喜ぶピットと陸奥。
「あぁ、ピットさんの『とくのぶ』将軍にあてた手紙のおかけで、解散と勝先生の蟄居だけで済んだがじゃ!」
ピットは、龍馬に渡した手紙に『神戸海軍塾の者誰一人でも命を落とした場合、我が国との友好条約の締結は、今後一切行わない』旨の内容を記載しており、これを幕府が認めた形となった。
「ピットさん、あんたは儂ら『神戸海軍塾』みんなの命の恩人じゃ」
「げに…ありがとうな!」
龍馬はピットの両手を握り、頭を下げる。
「皆さんが無事で何よりです、私も安心しました」
久しぶりの再会に、感謝と喜び合う二人。
『おい龍馬、ピット様へのお礼もよいが、俺たちの事も紹介してくれ』
龍馬の後ろから、二人のリザードマンが竜馬に話しかけた。
「おお、すまん、すまん!」
龍馬は改まって二人を紹介する。
「こちらの男は『ナカシン』こと『中岡慎太郎(なかおか・しんたろう)』」
「儂とは考え方がちくっと違うが、先見の明がある『元・土佐勤王党』の同志じゃ」
龍馬の紹介に頭を下げる慎太郎。
「初めましてピット王、先ほど龍馬が説明した通り、私も土佐藩を脱藩し、龍馬と一緒に行動を共にております」
「この度、越前藩主であられる『まつしゅん』公に身元引受と『新しい軍隊』編成を願い出て、龍馬が、『海援隊(かいえんたい)』、私が『陸援隊(りくえんたい)』の指揮を執り、夷狄に対抗する兵の鍛錬を行っているところであります」
(そうか、前世では土佐藩が二人の脱藩を許し、海援隊と陸援隊の組織を立ち上げたのだが、現世は土佐藩が夷狄と手を組んだために、二人は越前の援助を受けることになったのか)
ピットは前世の歴史を思い出し、現世では良くも悪くも、全く違う状況になっていることを感じさせられた。
「それとあと一人が『池内蔵太(いけ・くらた)』、どんなに怪我をしても死なないことから、わしらの間では『不死身の内蔵太』と渾名しとる男じゃ!」
龍馬の言葉に、内蔵太もすぐに挨拶する。
「ピット王初めまして!ワシは豪快に戦うのが好きなので、龍馬さんの作った『海援隊』に入隊しました!」
「あ~戦が楽しみじゃな」
内蔵太の言動に、不謹慎だぞと怒る中岡。
「あと、今ここにはおらんが、よっとる公の考えに同意できず、脱藩した上士『タイスケ』と『トウジ』もあとから紹介するぜよ」
龍馬の言葉に、驚くピット。
(『乾退助(いぬい・たいすけ)』に『福岡藤次(ふくおか・とうじ)』…そうか、上士の中にもよっとる公の考えに賛同できない者はいるという事か)
「そうですか、身分を問わず、よっとる公の考え方に疑問を抱いた人もいるのですね」
「まあ、おるにはおるが、土佐藩内で声を上げれば、たちまち『ハンペン』率いる『土佐勤王党』に捕まってしまうからな」
「えっ?彼らは『帝』に尽くす組織じゃなかったのですか?」
ピットの疑問に答える龍馬。
「前にハンペンは、よっとる公に陶酔しとると言ったじゃろ?」
「ええ、確かよっとる公を妄信しすぎていると…」
ピットの返事に、そうなんじゃと答える龍馬。
「今ハンペンは、よっとる公に都合よく利用されているのを、頼られていると勘違いしており、藩主の指示通りに『土佐勤王党』を動かしておるんじゃ」
龍馬に替わり、中岡が説明する。
「俺も最近まで『土佐勤王党』にいたのだが、正直ハンペン先生の考えにはついていけなくなっていた」
「よっとる公の指示で、日ノ本の刺客と一緒にとくもち将軍を暗殺したり、藩内や党内でよっとる公の指示に疑問を唱えようものなら、『天誅組』なる暗殺部隊に、身分に関係なく斬り殺されていったのだ」
「かく言う俺と内蔵太も、そんな党に疑問を持ち、天誅組に命を狙われて脱藩したんですがね…」
ピットに説明し終えた中岡は、独り言のように呟く
「今の土佐勤王党は、よっとる公の汚れ仕事を引き受けるだけの組織に成り下がっている」
「そうなっても、俺や龍馬はハンペン先生を『友』のように慕っている」
「いつかハンペン先生が目を覚まし、また皆でバカができる日を信じて…」
「中岡、お前泣くなち」
「うるさい龍馬!お前も泣いとるじゃなかか!」
話し終えた中岡は、龍馬と一緒に涙を流し、ピットたちは静かに見守る。
ふと龍馬は我に返る。
「いかん、ピットさんを『まつしゅん』公のところへ案内せんといかんじゃった!」
そう言って、龍馬は慌ててピットたちを邸内へ案内した。
また、大政奉還に反対していた、土佐藩の『よっとる』公と、会津藩の『かたもり』公など、一部の藩主は、古都を離れそれぞれの藩に帰ってしまった。
そしてピットも、ミントの補佐をすべく、他藩への話し合いに『代理』で赴いたりしている。
「ピットさん、陸奥、待っておったぞ!」
越前藩邸にて、ピットたちを嬉しそうに出迎える坂本龍馬。
龍馬が所属していた「神戸海軍操練所」は、前将軍『とくもち』暗殺の責任を取らされ解散となり、勝海舟(麟太郎より改名)も自宅蟄居の沙汰を受けていた。
「「龍馬さん、無事でしたか!」」
喜ぶピットと陸奥。
「あぁ、ピットさんの『とくのぶ』将軍にあてた手紙のおかけで、解散と勝先生の蟄居だけで済んだがじゃ!」
ピットは、龍馬に渡した手紙に『神戸海軍塾の者誰一人でも命を落とした場合、我が国との友好条約の締結は、今後一切行わない』旨の内容を記載しており、これを幕府が認めた形となった。
「ピットさん、あんたは儂ら『神戸海軍塾』みんなの命の恩人じゃ」
「げに…ありがとうな!」
龍馬はピットの両手を握り、頭を下げる。
「皆さんが無事で何よりです、私も安心しました」
久しぶりの再会に、感謝と喜び合う二人。
『おい龍馬、ピット様へのお礼もよいが、俺たちの事も紹介してくれ』
龍馬の後ろから、二人のリザードマンが竜馬に話しかけた。
「おお、すまん、すまん!」
龍馬は改まって二人を紹介する。
「こちらの男は『ナカシン』こと『中岡慎太郎(なかおか・しんたろう)』」
「儂とは考え方がちくっと違うが、先見の明がある『元・土佐勤王党』の同志じゃ」
龍馬の紹介に頭を下げる慎太郎。
「初めましてピット王、先ほど龍馬が説明した通り、私も土佐藩を脱藩し、龍馬と一緒に行動を共にております」
「この度、越前藩主であられる『まつしゅん』公に身元引受と『新しい軍隊』編成を願い出て、龍馬が、『海援隊(かいえんたい)』、私が『陸援隊(りくえんたい)』の指揮を執り、夷狄に対抗する兵の鍛錬を行っているところであります」
(そうか、前世では土佐藩が二人の脱藩を許し、海援隊と陸援隊の組織を立ち上げたのだが、現世は土佐藩が夷狄と手を組んだために、二人は越前の援助を受けることになったのか)
ピットは前世の歴史を思い出し、現世では良くも悪くも、全く違う状況になっていることを感じさせられた。
「それとあと一人が『池内蔵太(いけ・くらた)』、どんなに怪我をしても死なないことから、わしらの間では『不死身の内蔵太』と渾名しとる男じゃ!」
龍馬の言葉に、内蔵太もすぐに挨拶する。
「ピット王初めまして!ワシは豪快に戦うのが好きなので、龍馬さんの作った『海援隊』に入隊しました!」
「あ~戦が楽しみじゃな」
内蔵太の言動に、不謹慎だぞと怒る中岡。
「あと、今ここにはおらんが、よっとる公の考えに同意できず、脱藩した上士『タイスケ』と『トウジ』もあとから紹介するぜよ」
龍馬の言葉に、驚くピット。
(『乾退助(いぬい・たいすけ)』に『福岡藤次(ふくおか・とうじ)』…そうか、上士の中にもよっとる公の考えに賛同できない者はいるという事か)
「そうですか、身分を問わず、よっとる公の考え方に疑問を抱いた人もいるのですね」
「まあ、おるにはおるが、土佐藩内で声を上げれば、たちまち『ハンペン』率いる『土佐勤王党』に捕まってしまうからな」
「えっ?彼らは『帝』に尽くす組織じゃなかったのですか?」
ピットの疑問に答える龍馬。
「前にハンペンは、よっとる公に陶酔しとると言ったじゃろ?」
「ええ、確かよっとる公を妄信しすぎていると…」
ピットの返事に、そうなんじゃと答える龍馬。
「今ハンペンは、よっとる公に都合よく利用されているのを、頼られていると勘違いしており、藩主の指示通りに『土佐勤王党』を動かしておるんじゃ」
龍馬に替わり、中岡が説明する。
「俺も最近まで『土佐勤王党』にいたのだが、正直ハンペン先生の考えにはついていけなくなっていた」
「よっとる公の指示で、日ノ本の刺客と一緒にとくもち将軍を暗殺したり、藩内や党内でよっとる公の指示に疑問を唱えようものなら、『天誅組』なる暗殺部隊に、身分に関係なく斬り殺されていったのだ」
「かく言う俺と内蔵太も、そんな党に疑問を持ち、天誅組に命を狙われて脱藩したんですがね…」
ピットに説明し終えた中岡は、独り言のように呟く
「今の土佐勤王党は、よっとる公の汚れ仕事を引き受けるだけの組織に成り下がっている」
「そうなっても、俺や龍馬はハンペン先生を『友』のように慕っている」
「いつかハンペン先生が目を覚まし、また皆でバカができる日を信じて…」
「中岡、お前泣くなち」
「うるさい龍馬!お前も泣いとるじゃなかか!」
話し終えた中岡は、龍馬と一緒に涙を流し、ピットたちは静かに見守る。
ふと龍馬は我に返る。
「いかん、ピットさんを『まつしゅん』公のところへ案内せんといかんじゃった!」
そう言って、龍馬は慌ててピットたちを邸内へ案内した。
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