神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第184話 大政奉還

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「まずは、この会話を誰にも聞かれぬようにせぬとな」

『空間遮断!』

帝のスキルで、虎の間の空間が外部と遮断される。

「まず、とくのぶ将軍より、自身が考えていることを話せ」

とくのぶはミントに一礼し、皆に話し始める。

「私が此度将軍職に就任いたしましたのは、今の幕府を終わらせるためです」

この言葉にミント以外は皆驚いた。

「つまり『とくのぶ』よ、お前は政権を朝廷に返す『大政奉還』を行うという事じゃな?」

ミントの言葉に、はいと答えるとくのぶ。

「いま、この国は将軍が存在している為に、『勤王』と『佐幕』が争っております」

「平時であればまだよいのですが、夷狄が攻め入ろうとしているときに、このような争いは致命的です」

「私も『とく』家の人間として、最後の責任を取ります」

「今回、『将軍職』を受けましたのはその為でございます」

話し終えたとくのぶに、ミントは問う。

「それで…お前は将軍職を辞して、今後は何をするつもりじゃ?」

「はい、先日長崎でお会いした、写真家の『ヒコマ』先生に弟子入りをして、写真や絵などを描いて過ごしたいと思います」

とくのぶの決意を聞き、ミントはため息を漏らす。

「なぁとくのぶよ、わらわは帥を買うておる」
「その夢はこの国の『政治家』を続けながらでもできるではないか?」

ミントの願いにも、とくのぶは首を振る。

「いえ、私はこのから身を引かせてもらいます」
「この国に仕えるものが二人いると、皆は混乱します」

「この国の太陽は、あなたひとつだけでいいのです」

全てを話し終えて、将軍と三公は平伏する。

「そうか、お前の覚悟はわかった」
「三公もそのことが分かっておった上で、とくのぶを将軍に推挙したのじゃな?」

「はい、我々も説得いたしたのですが、将軍様の意志は固く、その理由も鑑みまして、将軍様の意思を尊重させて頂きました」

そうか、と残念そうに短く返事をするミント。

「ただ一人、『よっとる公』だけは、将軍様の引退を頑なに反対致しておりました」

しまあき公の言には、ミントが即答する。

「亜奴は今、『日ノ本』の力を借りて、この国の朝廷を潰そうと画策しておる」

「「「まことですか」!」」」

驚く三公に、なぜかとくのぶが説明をはじめる。

「実は四公会議を行う前に、よっとる公から直接相談を受けたのだ」

「とくのぶ公にその気がありましたら、『朝廷』を全て排除し、征夷大将軍を頂点とした国家をつくることができますと」

「このとき私は、彼はどこかの国と通じていると判断し、彼の主張を聞き、断った上ですべて帝に報告致したのだ」

とくのぶ将軍がここまで話し終えた後、ミントが将軍から聞いた話から、よっとる公の企みを話す。

「土佐藩は代々『とく』家に仕えていた家柄」
「『帝』が獣人であることにも不満をあらわにしており、最初は『とく』家を頂点にした体制にしたかった様じゃ」

「それで、『日ノ本』の力を利用し、力で『朝廷』を壊滅させようと企んだ様じゃが、前将軍『とくもち』が『公武合体(朝廷と幕府を一つにする案)』を画策したため暗殺した」

「そして此度、とくのぶ将軍もその気がないと分かり、自身の策が失敗したと感じた為、敢えて自分を『わらわ』が見下すような質問をし、周りに怒ったと見せて、うまくこの場を退席したのであろう」

「そんなことをせずとも、前日のうちに帰ればよかったのではないでしょうか?」

だてむね公の質問を、ミントは笑って返す。

「その理由は簡単じゃ、わらわの婚約者である「ピット」王の姿を見ておきたかったのじゃよ」
「わらわに秘密がバレていると分かっていたとしても、な」

そうかと思った『だてむね』公は、逆にこのような質問をした自身を恥じる。

「気にしなくてもよいぞ、だてむね公よ」
「いま、そちがこの質問をしたおかげで、心の中で疑問に思っていた者達が、同じ考えを共有することができた」

「大事なのは、皆の矢印がちゃんと同じ方向を向いている事なのじゃ」

よっとる公への対応と違い、疑問がある者には丁寧に説明し、決して見下すようなことはしない。
これが明帝の本当の姿なのである。

「これで、よっとる公が生き残る道は、『日ノ本に朝廷と幕府を潰してもらう』以外無くなったわけじゃ…」

話し終えたミントは目を瞑り、とくのぶ将軍へ命令する。

「征夷大将軍、とくのぶに命ずる」
「帥は急ぎ『大政奉還』を行い、『徳川藩主』として兵を纏め上げよ!」

「ハッ!」

「三公も藩を一つにまとめ、『日ノ本』迎撃に備えておけ!」

「「「ハッ!」」」

ミントの勅令に従う4人。

「わらわは大政奉還後、各藩に此度の出来事を伝え、兵の準備と『戦争の指揮が執れる』者達
の朝廷への出仕を促す」

話し終えたミントは、隣に座るピットへと向き直る。

「わらわが愛して止まぬピット王よ…」
「どうかあなた様のお力をお貸しいただき、この国を救ってくださいませ…」

そう言ってピットの両手を取り、握りしめるミント。

(いやいや、さっきまで皆に凄んでおいて、急にそんな態度をとると逆に不自然だよ?)

(大丈夫じゃ!こいつらこの手の事には疎いからうまく行くはずじゃ!)

ピットは仕方なく話を合わせる。

「わかりました明兎様!」
「あなたの為・この国の為に我が戦力の全てを持って、日ノ本を追い払って見せましょう!」

そう言った後、ピットは将軍たちを見ると、なぜか拍手をして泣いていた。

「ピット王、我が国の為に協力を頂きましてありがとうございます!」

「帝とピット王様がここまで思いあっていたとは…」

「二人の強い絆は、きっと両国の繁栄に大きく係わっていくでしょう!」

「明兎様、私は自分の事のように嬉しく思いますぞ!」

うん、この人たち凄くチョロかった。

てか、こんな人たちが幕府や藩のトップって大丈夫なのだろうか?

ピットは少し心配になった。

「では皆の者、頼んだぞ!」

こうして2日後には『大政奉還』が行われ、全ての主導権を『朝廷』が握ることとなった。

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