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群雄進撃編
第182話 征夷大将軍の就任
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ピットたちが京都の御所内に引っ越してきて、早や1週間が過ぎようとしていた。
今日も日課である、ルクシルの稽古に付けて貰っているピット、そしてそれを眺める陸奥。
「ここまで!少し休憩しよう」
ルクシルの言葉に竹刀を止めて、礼をするピットとルクシル。
そのルクシルのもとに、待ってましたと侍女たちが、手ぬぐいをもって話しかける。
「ルクシル様!お疲れ様でございました!」
「この手拭いで汗を拭いてくださいませ!」
「ああ…いつもすまないな」
「あ、ピット様もどうぞ」
「ああ、ありがとう…」
ついでに手拭いをもらったピット。
「さすがルクシル様、女性には本当にモテますな!」
「あぁ、女性にも男性にもモテない陸奥君は、少しでもモテる様に剣の修行でもやったらどうだい?」
陸奥の皮肉をルクシルは笑って返す。
「いえいえ、私は生まれもって顔立ちと頭が良く、別に剣が出来なくても十分にモテますのでご心配には及びません」
実際、陸奥の顔は整っており、喋りさえしなければ十分モテるのだが、その口から出る皮肉めいた言葉のせいで、全てを台無しにしていた。
「二人って本当に仲がいいよね」
「ピット…もし君が命令するなら、僕は迷わずに彼を真っ二つに出来るよ?」
「おー、おー、これは脳筋の方が考えそうな例えですな!」
「ほう…よほど君は転生したいらしいな?」
ピットの何気ない一言で始まる二人の喧嘩も、今は当たり前の光景だ。
(パラピロポン♪パラピロポン♪)
突然、頭の中でミントからの着信音が鳴る。
(はいピットです)
(おおピットよ、元気にしておったか?)
(うん、昨日の夜も話したので相変わらず元気だよ?)
ちなみに二人は、毎日1時間以上、会ったり念話をしている。
ミントはため息交じりでピットに話す。
(ここにおるとな、毎日が退屈なのじゃよ)
(事あるごとに、侍従職(帝の世話役)が「あぶのうございます、あぶのうございます」と言って何もやらせてもらえんのじゃ)
(へぇ、いろいろと大変だね)
(それでな、一度あまりにも暇なのでこっそり出かけたら、あとで侍従職の奴らが泣いたり怒ったりして面倒くさかったのでのう)
ピットは、ミントに振り回されて大変な侍従職の人たちに同情した。
(ああ、このままじゃ、わらわは心が病んでしまいそうじゃ)
ミントは意外と面倒くさい人だった。
(わかったよミントちゃん、今度私と一緒に出掛けよう)
(それはまことか!)
急に元気になるミント。
(おお、久しぶりのデートじゃな!それは楽しみじゃ!)
ミントの声は、念話先?でも分かるくらいにテンションが上がっていた。
(おっと、そう言えば忘れておった)
ミントは気を取り直して話す。
(実は次の将軍を『とくのぶ』にすると、『四公会議』で決定したとのことじゃ)
(それ、絶対に忘れちゃいけないことだけど…そうか、これでやっと幕府との話が進むね)
ちなみに『四公会議』とは、亜人共和国の有力な藩主4人が集まり、将軍家と共に今後の幕府の方針などを取り決める会議である。
(それで明日『とくのぶ』が、わらわへ挨拶に参るので、ピットも一緒に参加せよという話じゃ)
(わかったよ、明日そっちに行くね)
そう話して念話を切るピット。
「なあルクシル、ピットさんは最近よく『居眠り』しているよな?」
「ああ…あれは帝と『頭の中』で話しているそうだ」
「へぇ、そいつはすごいな」
ちなみに念話の間、ピットの姿は目を瞑って居眠りしているように見える。
「二人とも、明日『虎の間』で『とくよし』公の征夷大将軍就任の儀が行われるらしい」
「えっ、突然とんでもないこと言いだしたぞ!」
ピットの言葉に驚く二人。
「しかし変だな?今までは『江戸城』にて帝の使者が赴いてやるんじゃなかったか?」
「それに確か行列みたいなのがあって、国民へ大々的に知らせるものだったはず…」
陸奥は前将軍の『将軍宣下(しょうぐんせんげ)』を知っており、このようなことは異例中の異例と言う。
「私にこの国のしきたりはよくわからないけど、『明帝』がそれでやると言っているからいいんじゃないのかな?」
「…そうか、まあそれほどまでにこの国の将軍様の地位は下がっている、って事なのだろうな」
ピットの言葉に、自分なりの答えを出す陸奥。
こうして次の日を迎え、御所にて『将軍宣下』がしめやかに取り行われた。
今日も日課である、ルクシルの稽古に付けて貰っているピット、そしてそれを眺める陸奥。
「ここまで!少し休憩しよう」
ルクシルの言葉に竹刀を止めて、礼をするピットとルクシル。
そのルクシルのもとに、待ってましたと侍女たちが、手ぬぐいをもって話しかける。
「ルクシル様!お疲れ様でございました!」
「この手拭いで汗を拭いてくださいませ!」
「ああ…いつもすまないな」
「あ、ピット様もどうぞ」
「ああ、ありがとう…」
ついでに手拭いをもらったピット。
「さすがルクシル様、女性には本当にモテますな!」
「あぁ、女性にも男性にもモテない陸奥君は、少しでもモテる様に剣の修行でもやったらどうだい?」
陸奥の皮肉をルクシルは笑って返す。
「いえいえ、私は生まれもって顔立ちと頭が良く、別に剣が出来なくても十分にモテますのでご心配には及びません」
実際、陸奥の顔は整っており、喋りさえしなければ十分モテるのだが、その口から出る皮肉めいた言葉のせいで、全てを台無しにしていた。
「二人って本当に仲がいいよね」
「ピット…もし君が命令するなら、僕は迷わずに彼を真っ二つに出来るよ?」
「おー、おー、これは脳筋の方が考えそうな例えですな!」
「ほう…よほど君は転生したいらしいな?」
ピットの何気ない一言で始まる二人の喧嘩も、今は当たり前の光景だ。
(パラピロポン♪パラピロポン♪)
突然、頭の中でミントからの着信音が鳴る。
(はいピットです)
(おおピットよ、元気にしておったか?)
(うん、昨日の夜も話したので相変わらず元気だよ?)
ちなみに二人は、毎日1時間以上、会ったり念話をしている。
ミントはため息交じりでピットに話す。
(ここにおるとな、毎日が退屈なのじゃよ)
(事あるごとに、侍従職(帝の世話役)が「あぶのうございます、あぶのうございます」と言って何もやらせてもらえんのじゃ)
(へぇ、いろいろと大変だね)
(それでな、一度あまりにも暇なのでこっそり出かけたら、あとで侍従職の奴らが泣いたり怒ったりして面倒くさかったのでのう)
ピットは、ミントに振り回されて大変な侍従職の人たちに同情した。
(ああ、このままじゃ、わらわは心が病んでしまいそうじゃ)
ミントは意外と面倒くさい人だった。
(わかったよミントちゃん、今度私と一緒に出掛けよう)
(それはまことか!)
急に元気になるミント。
(おお、久しぶりのデートじゃな!それは楽しみじゃ!)
ミントの声は、念話先?でも分かるくらいにテンションが上がっていた。
(おっと、そう言えば忘れておった)
ミントは気を取り直して話す。
(実は次の将軍を『とくのぶ』にすると、『四公会議』で決定したとのことじゃ)
(それ、絶対に忘れちゃいけないことだけど…そうか、これでやっと幕府との話が進むね)
ちなみに『四公会議』とは、亜人共和国の有力な藩主4人が集まり、将軍家と共に今後の幕府の方針などを取り決める会議である。
(それで明日『とくのぶ』が、わらわへ挨拶に参るので、ピットも一緒に参加せよという話じゃ)
(わかったよ、明日そっちに行くね)
そう話して念話を切るピット。
「なあルクシル、ピットさんは最近よく『居眠り』しているよな?」
「ああ…あれは帝と『頭の中』で話しているそうだ」
「へぇ、そいつはすごいな」
ちなみに念話の間、ピットの姿は目を瞑って居眠りしているように見える。
「二人とも、明日『虎の間』で『とくよし』公の征夷大将軍就任の儀が行われるらしい」
「えっ、突然とんでもないこと言いだしたぞ!」
ピットの言葉に驚く二人。
「しかし変だな?今までは『江戸城』にて帝の使者が赴いてやるんじゃなかったか?」
「それに確か行列みたいなのがあって、国民へ大々的に知らせるものだったはず…」
陸奥は前将軍の『将軍宣下(しょうぐんせんげ)』を知っており、このようなことは異例中の異例と言う。
「私にこの国のしきたりはよくわからないけど、『明帝』がそれでやると言っているからいいんじゃないのかな?」
「…そうか、まあそれほどまでにこの国の将軍様の地位は下がっている、って事なのだろうな」
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