神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第179話 秦の五将軍

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ここは『秦国』の首都・咸陽。

城内の玉座の間には、皇帝『胡亥(こがい)』が玉座に座り、右隣に宦官の趙高が立つ。

中央のカーペットを挟むように文官たちが左右に並び立ち、正面に鎧の武将が先頭に立ち、その後ろに4人の武将が横に並び立っている。

「将軍たちよ、忙しい中よく来てくれた!」
「此度は近々に行う『楚』への大侵攻について、将軍たちの意見を聞きたいと、皇帝の仰せで集まってもらった」

趙高の話に頷く皇帝と、黙って話を聞く将軍たち。

「では、此度の総大将である『オオセン大将軍』に伺いたい」

「オオセン大将軍は此度の楚攻略にどれほどの兵が必要であると思うか?」

趙高の質問に、オウセンは即答する。

「今の楚の領地は広大で、兵たちも練度が高く強敵です」

「最低でも100万は必要かと思われます」

オウセンの言葉に焦る趙高。

それもそのはず、今の秦国ではどう兵を集めても70万弱ほどしか集まらない。

それに楚の兵数は多く見積もっても30万弱。

それをオウセンは知らないはずもなく、暗に今回の出兵はやめた方が良いと言っているのである。

趙高はそれを察してか、他の将軍にも聞いてみる。

「オウセン大将軍はこう申しておるが、他に意見がある者はおるか?」

「リシン将軍はどうじゃ?そちは若いし、オオセン大将軍よりもっと良い考えがあるのではないか?」

趙高の言葉に少しだけ考え、答えるリシン。

「私であれば…兵200万はないと無理です」

「200万だと?」

その言葉に、あっけにとられる趙高。

「オウセン大将軍ですら100万必要と考えられているのに、私や他の将軍ではそれ以上の兵を用いねばとても達成できませぬ」

この言葉に、誰も言葉を発さない。

(こ奴ら、このわしの言葉に従わずになめた口を…)

心の中は怒りが渦巻く趙高だが、顔は穏やかに将軍たちに話す。

「そうか、将軍たちが無理と言うのであれば、他の誰にも実行は出来まい」
「オウセン大将軍よ、疑うようなことを言い申し訳なかった」

趙高の言葉に、オウセンは黙って頭を下げた。

「しかしだな、今回使える兵力は60万しかおらぬ」
「オウセン大将軍よ、足りぬ兵は其方の知略をもって補ってほしい」

とんでもないことを言い出す趙高に、オウセンは笑みを浮かべて答える。

「なるほど、足りぬ戦力は知恵を使ってですか…前丞相の李斯殿であれば、果たしてこのようなことを申したでしょうか?」

オウセンの冷たい視線と言葉に、趙高は焦る。

「仕方なかろう、彼は滅亡した燕の刺客『荊軻(けいか)』の恨みを受けて、暗殺されてしまったのだから」

「私も菲才の身なれど、『王の命を受けて』丞相を賜ったのだ」

二人のやり取りを聞き、皇帝は玉座から立ち上がった。

「ふたりともやめよ!」
「趙高の丞相就任は、朕が決定したことだ!」

「オウセンよ、お前もこの国を思う将であれば、今ある兵力で何とかしてみせよ!」
「これは朕の『命令』である!」

皇帝の言葉に、静まる玉座の間。

やがてオウセンは口を開く。

「…承知いたしました」
「菲才な身ではありますが、持てるものすべてを使い、楚攻略に心血を注ぎたいと存じます」

オウセンは拱手をして礼を取り、後ろに並ぶ将軍たちも同じように礼を取る。

皇帝の言を味方にした趙高は、意気揚々に号令を出す。

「ではオウセン大将軍よ!」
「其方に兵60万を授けるので、楚に奪われた領地を全て取り返してこられよ!」

「ハッ!」

オウセン達将軍は、礼を取りそのまま玉座の間を後にした。

(ククッ、オウセンの奴ら、いい気味だ!)
(私に恥をかかせようとして、逆に皇帝に一喝されるとは、思ってもおらんじゃったろうて!)

趙高の心の中は、小躍りしながら軍議は終了する。

そしてこれが、玉座の間で開かれた『秦国』最後の軍議となった。
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