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群雄進撃編
第176話 昌平君の覚悟
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秦を長沙で大敗させた楚軍は、破竹の勢いで、且つての領地であった呉を奪還していく。
楚の首都・郢の朝議にて、軍師の徐庶が王と将軍たちへ、現状を説明する。
「前回、長沙城の戦いで、荊州方面の魔族軍はほぼ壊滅し、呉方面にいる魔族軍も我々の強さを恐れてか、次々と開城、または州からの撤退を行っております」
「現在孫策殿率いる呉方面軍は、既に呉の2/3を制圧し、残る会稽(かいけい)・建業(けんぎょう)・丹陽(たんよう)の州を制圧すれば、呉と荊州の南半分が我々の領地となります」
徐庶の言葉に、昌平君改め、『昌王』は黙って頷く。
「次に『秦』の動きですが、襄陽城に兵を集結される動きがみられます」
「近々こちらの首都・郢に大規模な攻勢を仕掛けるつもりかもしれません」
「秦と共闘同盟を結んだと思われます『魏』の動きですが、多くの造船業者に『軍船』の作成依頼を掛けているようです」
「こちらも数カ月以内にはある程度まとまった数の『軍船』が集まるでしょう」
「魏が侵攻してくる場所は、我らの首都を落とすうえで、襄陽城と連携がとりやすい『赤壁』付近で間違いないと思われます」
「また、両国の予想動員数は秦の兵力60万・魏の兵力40万の、計100万を超えてくる予想です」」
説明を終えて、徐庶は皆に一礼をして着席する。
「100万か…今動員できる最大の兵力をここ郢と赤壁に投入するという事は、敵もこの戦いに全てを掛けてくると軍師は読んでいるわけだな?」
「はい、さほど仲が良くない二国間で、わざわざ共闘を組みこちらへ攻めてくるのであれば、短期決戦でこの郢を落としに来るのが一番効率がよいです」
「それに、民衆から絶大な支持を得ております我々をこのまま放置すれば、悪政を行っている秦はもちろんの事、魏でも魔族に対しての内乱が発生し、我々との戦争どころではなくなるでしょうから」
敵の概算兵力と内情を話し終えた徐庶は、次に楚の内情を話し始める。
「それに対し、我が郢の兵力は10万で、いくら我が軍の兵が驚異的な強さを誇る『アリ兵』と言えど、10倍以上の兵力と戦うのは得策ではありません」
「また、各地で解放した民衆も我々を歓迎はしてくれておりますが、治安自体は安定しておりませんので、そこから兵を集めて戦うのも、あまりよいやり方ではありません」
徐庶の説明を聞き、昌王は答える。
「つまり軍師の考えは、敵がわざわざ集結するのを待つ必要はなく、いまいる郢の兵力で各個撃破を行うべきだという事だな?」
「その通りでございます」
「わざわざ敵が集結するのを待つ必要はありませんので、秦に対してはそれで宜しいと思います」
「秦に対して?魏はそうしなくてもよいのか?」
不思議に思う昌王に徐庶は説明する。
「はい、我々が秦に攻撃を仕掛けても、魏は秦へ援軍を送り込まないでしょう」
「理由はひとつ、今回の共闘は『楚を倒す』為であって、秦を助ける為ではないからです」
「魏の目的は、あくまで『元・秦の領地を手に入れる』ことであって、秦が滅んでも一向に構わないのです」
「ただ、直接魔族同士で戦うわけにもいきませんので、『楚が切り取った領地を、魏が奪い取る』考えに至ったのでしょう」
「魏はこの間に『黄河』を渡り、楚の領地に侵攻の為の橋頭保を作る可能性がありますので、これを警戒するよう周瑜殿達には伝えております」
徐庶の説明が終わり、昌王は席を立ち皆に号令を出す。
「我々の目標は『秦の魔族共を倒し、に領民を圧政から救う』ことです」
「そのうえで『魏』が楚に仕掛けてくるのであれば、かの国も敵と判断し討伐します」
「項燕将軍!」
「ハッ!」
「あなたに兵6万をお渡ししますので、『宜都(ぎと)城』の攻略に取り掛かってください」
「忍者衆の報告によると、守備兵4万、守備の指揮官は『モウテン』将軍、攻撃を『リシン』将軍が担っているとの事です」
「必ずやご期待に応えて見せましょう!」
「徐庶、項燕将軍の軍師を頼む」
「畏まりました」
「趙雲は兵2万を率いて、赤壁付近にある『江夏(こうか)城』に陽動を掛けよ」
「この地は守備兵3万、守備する武将は猛将として名高い『モウブ』将軍です」
「承知しました!」
「魏延・黄忠・張飛は、趙雲と共に行き江夏城の攻略を助けよ!」
「「「お任せあれ!」」」
「わたしと黒田八虎は、郢に残る兵3万のうち2万と、新たに長沙から補充される予定の兵2万を連れて、江陵城へと移動します」
昌王の言葉に、徐庶が待ったをかける。
「お待ちください!昌王自信が最前線の城に行くのは危険すぎます!」
「隣接する襄陽城は11万の兵が駐屯しており、更に守備するは秦国最強の武将として名高い『オウセン』将軍と『オウホン』将軍です」
「万が一彼等が江陵城に攻めてくれば、アリの兵と言えど、昌王様を守り通せるとは言い難いです」
徐庶の説得に、昌王は首を振る。
「今彼らを、こちらに引き付けておかねばならない理由はわかるであろう」
「目の前に『楚の王』がいると判れば、必ずこちらに注意が向く」
「この隙に他を攻略できれば、今後の展開が一気に楽になる」
「軍師の言葉はわかるが、ここは私と黒田八虎を信じろ!」
力強い昌王の言葉に、徐庶は何も言わずに拱手をする。
「それでは各人、与えられた命に従い行動せよ!」
「「「ハッ!」」」
昌王の言葉で朝議は終了し、そのまま攻略の準備へと移った。
楚の首都・郢の朝議にて、軍師の徐庶が王と将軍たちへ、現状を説明する。
「前回、長沙城の戦いで、荊州方面の魔族軍はほぼ壊滅し、呉方面にいる魔族軍も我々の強さを恐れてか、次々と開城、または州からの撤退を行っております」
「現在孫策殿率いる呉方面軍は、既に呉の2/3を制圧し、残る会稽(かいけい)・建業(けんぎょう)・丹陽(たんよう)の州を制圧すれば、呉と荊州の南半分が我々の領地となります」
徐庶の言葉に、昌平君改め、『昌王』は黙って頷く。
「次に『秦』の動きですが、襄陽城に兵を集結される動きがみられます」
「近々こちらの首都・郢に大規模な攻勢を仕掛けるつもりかもしれません」
「秦と共闘同盟を結んだと思われます『魏』の動きですが、多くの造船業者に『軍船』の作成依頼を掛けているようです」
「こちらも数カ月以内にはある程度まとまった数の『軍船』が集まるでしょう」
「魏が侵攻してくる場所は、我らの首都を落とすうえで、襄陽城と連携がとりやすい『赤壁』付近で間違いないと思われます」
「また、両国の予想動員数は秦の兵力60万・魏の兵力40万の、計100万を超えてくる予想です」」
説明を終えて、徐庶は皆に一礼をして着席する。
「100万か…今動員できる最大の兵力をここ郢と赤壁に投入するという事は、敵もこの戦いに全てを掛けてくると軍師は読んでいるわけだな?」
「はい、さほど仲が良くない二国間で、わざわざ共闘を組みこちらへ攻めてくるのであれば、短期決戦でこの郢を落としに来るのが一番効率がよいです」
「それに、民衆から絶大な支持を得ております我々をこのまま放置すれば、悪政を行っている秦はもちろんの事、魏でも魔族に対しての内乱が発生し、我々との戦争どころではなくなるでしょうから」
敵の概算兵力と内情を話し終えた徐庶は、次に楚の内情を話し始める。
「それに対し、我が郢の兵力は10万で、いくら我が軍の兵が驚異的な強さを誇る『アリ兵』と言えど、10倍以上の兵力と戦うのは得策ではありません」
「また、各地で解放した民衆も我々を歓迎はしてくれておりますが、治安自体は安定しておりませんので、そこから兵を集めて戦うのも、あまりよいやり方ではありません」
徐庶の説明を聞き、昌王は答える。
「つまり軍師の考えは、敵がわざわざ集結するのを待つ必要はなく、いまいる郢の兵力で各個撃破を行うべきだという事だな?」
「その通りでございます」
「わざわざ敵が集結するのを待つ必要はありませんので、秦に対してはそれで宜しいと思います」
「秦に対して?魏はそうしなくてもよいのか?」
不思議に思う昌王に徐庶は説明する。
「はい、我々が秦に攻撃を仕掛けても、魏は秦へ援軍を送り込まないでしょう」
「理由はひとつ、今回の共闘は『楚を倒す』為であって、秦を助ける為ではないからです」
「魏の目的は、あくまで『元・秦の領地を手に入れる』ことであって、秦が滅んでも一向に構わないのです」
「ただ、直接魔族同士で戦うわけにもいきませんので、『楚が切り取った領地を、魏が奪い取る』考えに至ったのでしょう」
「魏はこの間に『黄河』を渡り、楚の領地に侵攻の為の橋頭保を作る可能性がありますので、これを警戒するよう周瑜殿達には伝えております」
徐庶の説明が終わり、昌王は席を立ち皆に号令を出す。
「我々の目標は『秦の魔族共を倒し、に領民を圧政から救う』ことです」
「そのうえで『魏』が楚に仕掛けてくるのであれば、かの国も敵と判断し討伐します」
「項燕将軍!」
「ハッ!」
「あなたに兵6万をお渡ししますので、『宜都(ぎと)城』の攻略に取り掛かってください」
「忍者衆の報告によると、守備兵4万、守備の指揮官は『モウテン』将軍、攻撃を『リシン』将軍が担っているとの事です」
「必ずやご期待に応えて見せましょう!」
「徐庶、項燕将軍の軍師を頼む」
「畏まりました」
「趙雲は兵2万を率いて、赤壁付近にある『江夏(こうか)城』に陽動を掛けよ」
「この地は守備兵3万、守備する武将は猛将として名高い『モウブ』将軍です」
「承知しました!」
「魏延・黄忠・張飛は、趙雲と共に行き江夏城の攻略を助けよ!」
「「「お任せあれ!」」」
「わたしと黒田八虎は、郢に残る兵3万のうち2万と、新たに長沙から補充される予定の兵2万を連れて、江陵城へと移動します」
昌王の言葉に、徐庶が待ったをかける。
「お待ちください!昌王自信が最前線の城に行くのは危険すぎます!」
「隣接する襄陽城は11万の兵が駐屯しており、更に守備するは秦国最強の武将として名高い『オウセン』将軍と『オウホン』将軍です」
「万が一彼等が江陵城に攻めてくれば、アリの兵と言えど、昌王様を守り通せるとは言い難いです」
徐庶の説得に、昌王は首を振る。
「今彼らを、こちらに引き付けておかねばならない理由はわかるであろう」
「目の前に『楚の王』がいると判れば、必ずこちらに注意が向く」
「この隙に他を攻略できれば、今後の展開が一気に楽になる」
「軍師の言葉はわかるが、ここは私と黒田八虎を信じろ!」
力強い昌王の言葉に、徐庶は何も言わずに拱手をする。
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