神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第172話 楊志、青眼虎と一騎打ちを行うのこと

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林冲たちが到着して二日、陣を張った韓軍は、そこから一切動かなかった。

「おかしい、韓軍はなぜ動かない?」

『青眼虎』は試しに攻撃を仕掛けるが、その度に林冲と楊志は迎撃に出陣した。

「敵はほぼ全軍で迎撃してくるという事は、後続の援軍を待っているという事か」

「この城には、私しか指揮を取れるものもいないし、こちらも無理をせずに南京からの援軍を待とう」

青眼虎もそのまま籠城戦を続けた。

次の日、城壁の見張りからの報告を受けた青眼虎は耳を疑う。

「司令官代理と副司令官が、敵の陣地前に縛られているだと!」

慌てて城壁に昇って確認をすると、そこには両手を後ろに縛られた、寝間着姿の『ゴゴテイ』『レモテイ』が座らされていた。

「そんな馬鹿な!どうやって連れ出したのだ?」

困惑する青眼虎へ、林冲が降伏勧告を行う。

「城内の兵共よ、よく聞け!」
「昨日、城内の協力者の助けにより、この城の司令官を生け捕った」
「このまま抵抗を続けるのであれば、この二人を斬首し、城内の反乱軍と既に潜入している我が軍とで徐州城を火の海にする」

その話と同時に、城の両角から韓軍の兵が壁をよじ登って生きて、中央にいた青眼虎を取り囲んだ。

城壁にいた魔族兵1000が、左右に分かれて対応するが、『アリの兵団』が一気に押し潰していった。

「うわー!4本腕の人間が襲ってきた!」
「何だこいつら!俺たち魔族を次々と城下へ投げ飛ばしてやがる!」
「だめだ、こいつらの鎧が固くて弓や刀が通らない!」

そうこうするうちに、アリの兵が青眼虎の目前まで迫ってきた。

「おのれ!この青眼虎、ただでは死なんぞ!」

そう言い放つと、青眼虎は得意の棒術で次々とアリの兵を城下に飛ばしていった。

しかし、城下へ叩き落された韓兵は、すぐに起き上がり城壁を登り始めた。

「こんな奴ら、どうやって倒せばよいのだ?」

絶望の中戦い続ける青眼虎に、楊志が声を掛けた。

「やるじゃねえか青眼虎!今度は俺が相手をしてやるぜ!」

「青面獣!貴様何故寝返った!」

棒を構える青眼虎に、楊志は愛刀『吹毛剣』を抜刀した。

青眼虎は、体をクルクルと回しながら棒術を繰り出し、楊志を剣の間合いに入れさせない。

また楊志も、青眼虎の攻撃を軽くいなして様子を見ていたが、やがて楊志が質問をする。

「おい青眼虎、お前もしかして『下戸(酒が飲めない)』だったか?」

「その質問はなんだ青面獣?」

青眼虎は自分でした質問にハッとする。

「お前まさか…兵の酒に『毒』を入れたのか?」

「ご名答!と言いたいところだが、ちょっと違う」
「実は昨夜、お前たちが飲んだ酒瓶に、強力な『しびれ薬』を混ぜておいたのよ」

なるほど、だからこれだけ城壁で騒いでいても、誰一人兵が来ないのかと青眼虎は理解する。

「元・梁山泊軍のお前なら、この戦い方はよく見て来ていたよな?」

「俺が元梁山泊軍だと?戯言を言うのもたいがいにしろ!」

青眼虎が怒りだすと、楊志はやれやれと返事する。

「まぁ、俺も最初林冲に同じ事言われて、同じように否定していたのだがな」

そう言った楊志は剣を収め、姿勢を低くし、右足に重心を掛ける。

「何をする気だ青面獣!」

「すぐに分るよ!」

青眼虎の質問に返事をすると同時に、楊志は上半身人の姿に戻り、豹の下半身で地を蹴り一気に詰め寄る。

「うおっ!」

青眼虎は慌てて突きを繰り出すが、突いた棒を楊志に捕まれ引っ張られる。

体勢を崩した青眼虎の懐に入った楊志は、そのまま抜刀し、青眼虎の首を斬りつけた。

「ぐわっ!」

意識が飛んだ青眼虎は、そのまま突っ伏して倒れ込んでしまった。

「ふふふ、これが百地殿直伝の剣技『居合切り』と『峰打ち』だ!」

剣を収めた楊志は、意識のない青眼虎へ勝ち誇ったように言った。

それと同時に、穴を掘って忍び込んでいた張青たちが城門を開けて、徐州城を開放した。
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