神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第170話 魔族軍、韓軍との戦いで大いに悩まされるのこと

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「我が軍の…我が艦隊が燃えている…」

陸地で戦況を見つめていた司令官ウーロンは目の前で起こった惨劇を呆然と見ていた。

「司令官、敵艦隊上陸阻止のご指示を!」

副官ジュウロクの進言に、ウーロンは我を取り戻し、各兵団に指示を出す。

「前衛歩兵団は盾を並べて、上陸を防げ!」
「魔法兵・弓兵は、射程に入り次第、歩兵の後ろから火矢とファイヤーボールを撃ち込め!」
「騎兵団はそのまま後方で待機し、予備兵団と共に敵兵上陸時の殲滅に備えよ!」

陸戦では正しい指揮を行う司令官ウーロン。

ほぼ無傷の大型船団50隻は上陸に向けて船を進める。

敵歩兵団が上陸阻止に向けて戦闘態勢に入ったときに、上流側の山からドラが鳴り響く。

「てっ、敵の伏兵だ!」

魔族兵が左側を見ると、黥布の騎兵団1000が、山を駆け下り弓兵部隊に突撃してきた。

「何故あの位置から敵が現れるのだ!」

それもそのはず、魔族が陣地を敷く砂浜以外は、20㎞先まで崖になっており馬はおろか、人間の上陸さえ不可能な地形だ。

「たかが少数の騎兵だ!立て直して歩兵で包囲に持ち込め!」

突撃した黥布騎兵団を、前を向いていた歩兵団が後ろを向き攻撃に入る。

その時を待っていたかのように、今度は右側面から灌嬰の騎兵1000が山を駆け下りて弓兵部隊に突撃して来た。

更に後方の一本道から、曹参・秦明率いる歩兵部隊2000が襲い掛かる。

「がはははは!韓王の読み通りに敵は布陣しておるぞ!」

秦明は『狼牙棒』を振り回しながら突撃し、次々と敵の魔族兵を殴り倒す。

「韓王は、常に戦う前から勝利の道筋を決めておられましたからな」

曹参は敵の退路を断ちながら、補給物資に火を掛け火災を発生させた。

韓軍による側面・後方からの奇襲と、陣後方からの火災に、魔族軍は完全に混乱してしまう。

そんな状況で川岸線が維持できるはずもなく、大型船から次々に兵団が降りてきて、川岸にいる魔族兵を攻撃し始めた。

魔族軍は完全に包囲された状態となった。

この戦況を、対岸で韓信は戦況を見守った。

「ウーロンたちが、事前にここへ陣を敷くのはわかっていましたからね」
「だから私は、こちらの兵力と出撃時期を敵密偵に教えてあげたのです」
「敵密偵が、ちゃんと仕事をしてくれて助かりました」

こちらも伊賀衆の情報により、敵の兵力と迎撃に出た時期を把握した韓信は、あらかじめ伏兵を配置して迎え撃ったのであった。

「ウーロン司令官、このままでは敗北は避けられません」
「一旦泗州城に戻り、軍を立て直しましょう!」

副官ジュウロクの進言に従い、ウーロンは騎兵団を連れて、唯一の退路である一本道の強行突破を試みる。

曹参と秦明は無理して道を守らなかったため、容易に突破を許してしまう。

その道から次々と逃げ出していく魔族兵たち。

「泗州への退路から逃げられるぞ!」

「司令官達はその道から既に退却してしまったぞ!」

混乱するあちこちから、韓軍の声が聞こえる。

一度逃げられることが判ると、魔族たちは誰も戦おうとせずに、次々と逃げ出し始めた。

各部隊がそれを追撃し、次々と倒れていく魔族兵たち。

朝から始まった長江水戦も、夕方には40000の魔族兵団が壊滅状態となり大勢は決した。

この戦場から20㎞ほど先には泗州城がある為、一気に山間の道を駆け抜け退却するウーロンたちであるが、途中何度も彭越の配下によるゲリラ戦を仕掛けられる。

道に岩を落とし、騎兵が一気に駆け抜けられないようにした後、スピードを落として進もうとする魔族を、投石と弓矢で次々に攻撃を仕掛ける。

そこを抜けてもまた落石があり、同じ攻撃を繰り返された魔族はひたすらに兵を消耗していく。

明け方になり、ウーロン率いる騎兵2000は数十騎にまで減らされて、なんとか泗州城まで到着した。

「司令官、泗州城の城壁に『韓』の旗がなびいております!」

副官の言葉に城壁を見ると、韓の旗が無数になびいていた。

「お待ちしておりましたぞ、指揮官ウーロン!」

城壁では李左車が、樊瑞と笑いながらウーロンたちを見下ろしていた。

「お前たちがあまりにもわかり易い動きだったから、各城の領民たちと連動して『濠州城』『楚州城』『寿州城』も返してもらったぞ!」

「馬鹿な!信じられん!」
「俺たちが出立したのは4日前だぞ?そんな短期間で何故そんなことができる!」

樊瑞の言葉に、怒りと疑いを捨てきれないウーロン。

「いちいち説明は致しませんので、あとは討ち取られた後に考察してください」

李左車がそう告げると、城門が開き韓将2騎が突撃してきた。

「全員、奴らを躱して徐州城へ逃げるぞ!」

ウーロンとジュウロクは、泗州城を通り過ぎてさらに北である交通の要所『徐州城』へ向かおうとする。

「たった2騎で突撃とは、気でも狂ったのか!」

突撃してくる二人は、大きな円盾を正面に持ち、次々と飛刀と標鎗を投げ始めた。

「ぐわっ!」
「げぼっ!」

投げた飛刀と標鎗は、馬上にも拘らず騎兵の喉を的確に捉えていく。

「騎乗しながら何と言う腕だ!」

ウーロンとジュウロク以外は、皆飛刀と標鎗で倒され、韓軍の将二人と一騎打ちとなる。

ウーロンやジュウロクの槍や氷の魔法は、全て二人の円盾に防がれてしまう。

このままでは勝ち目がないと悟ったウーロンとジュウロクは、呼吸を合わせて、馬上から上空へ飛び立った。

「覚えておれ!貴様ら、顔は覚えたぞ!」

上空20ⅿほどで、悔しそうな顔をする2人に背を向け、ウーロンたちは飛び去ろうとする。

その瞬間、二人は馬の背中に乗り、そのまま跳躍しながら背負った投げ槍を投げつけた。

「ぐはっ!」

跳躍により加速した投げ槍は、逃げ出した司令官達の鎧を貫通し、腹を突き抜けて串刺しとなる。

そのまま墜落する司令官達へ、着地した二人は、素早く手に持ち替えた飛刀と標鎗を投げつける。

投げた飛刀は、落ちていく司令官達の首根っこを寸分狂わず捕らえ、そのまま地面に激突し絶命した。

絶命した敵指揮官を見届けた二人は、勝ち名乗りを上げる。

「敵司令官ウーロン及び副官ジュウロクは、樊瑞様の配下『八臂哪吒(はっぴなた)・項充(こうじゅう)』『飛天大聖(ひてんたいせい)・李袞(りこん)』が討ち取った!」

この声を聞き、城壁の韓軍は歓声を上げた。

「これは、これは、樊瑞殿の副官二人は規格外の強さを持ってらっしゃいますな」

「ありがとうございます、彼らが合流したので、私も術に集中して戦うことができます」

樊瑞は「両腕」とも言えるべき二人と邂逅し、本職である術者としての力を、ますます発揮していく事となる。

「さて、ここまでは予定通りに進みました」
「あとは『新戦力』の方々が無事結果を出すまで待つとしましょう」

「奴らなら問題なく『徐州一帯』を制圧するでしょう」

李左車の言葉に自信をもって答える樊瑞。

「それに、楚から送られた「兵団」を合流させておりますので…」

「あれは…私が敵の指揮官なら、部下には『戦わずに逃げよ』と指示を出したくなりますな」

どうやら『長沙の悪夢』は、ここ宋国でも繰り広げられることとなりそうである。

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