神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第169話 韓軍、長江で水戦を行うのこと

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ここは宋国の首都、東京開封府。

ここにある軍務局内で、大尉の童貫は激怒していた。

「東昌府が『梁山泊軍』の奇襲を受けて大損害を被っただと!」

『神行太保』の書簡を受け取った童貫は、怒りに震えていた。

「おのれ梁山泊軍!何もしてこないので放置しておれば調子に乗りおって!」

「では私は、いまから房州に赴任している『轟天雷』を呼びに行ってきます」

「待て、『神行太保』!」

「はい?」

「轟天雷は後からで良いので、済州と東昌府の司令官にこの書簡を渡し、同時に梁山泊に攻め込む手筈を整えさせろ!」

「畏まりました」

(やれやれ、東昌府にまたとんぼ返りかよ)

『神行太保』は退出し、そのまま済州と東昌府に向かった。

場所は変わり、『韓』の首都・建康府。

大陸2番目の長さがある川・長江(ちょうこう)に隣接したこの都市は、貿易や漁業が主流で、魔族から解放された国は活気を取り戻し、魔族の支配領域である近辺の州は、韓軍が来てくれることを心待ちにしていた。

その川岸に陣を敷いた韓信へ、丞相より報告が入る。

「韓王、『泗州(ししゅう)』『濠州(ごうしゅう)』『楚州(そしゅう)』『寿州(じゅしゅう)』の4州の攻撃準備、すべて整いました」

「ご苦労様、丞相。それで敵の軍備はどんな感じだい?」

「はい、現在建康府から攻め込めるのは『泗州』のみです」
「建康府と泗州の川幅は、狭いところでも2㎞ほどあるので、攻め込むにはこの位置から渡河が一番近く、目立ちます」
「我々の動きを見て、宋軍はこの付近に兵団を集結させており、その数40000です」
「総司令官は『ウーロン』、副司令官を『ジュウロク』、水軍司令官を『ソウケンビ』と名無しの魔族が4人」
「敵陣地は上陸地点が砂浜となっており、歩兵部隊10000を並べ、その後ろに弓兵4000と魔法兵2000、更にその後ろに敵本陣及び、騎兵2000と予備兵力10000、水軍に8000と補給部隊の兵力です」

『また、この陣地の双方は山となっており、川面は崖で上陸は不可能です』

「尚、敵水軍は大型船150、小型船50で編成しているようです」

「対する我らの上陸兵は3000、大型船50、小型船50で、水軍総帥を『李俊』、副官に『張横』『張順』、既に作戦の準備はできております」

「わかりました丞相、敵の動きは予定通りですね」

韓信は席を立ち命令を下す。

『水軍総帥に命令する、全軍渡河し敵魔族を殲滅せよ!』

ドラの号令と共に、船団は一斉に渡河を開始する。

一方、泗州に陣を張る宋軍も、船団200隻が出撃し、陸兵も上陸阻止の為に火矢と火球魔法で待ち構える。

「敵の艦艇は我らの半分、数の上ではこちらの勝利は揺るがんな!」

水軍司令官『ソウケンビ』は、巨大な指揮官船『楼船(ろうせん)』の一番上から艦隊の動きを見ていた。

両軍の距離が50ⅿを切り、弓の攻撃準備を始めたところで、李俊が水魔法を唱える。

『水流操作』

これにより敵船団の中心に複数の渦が発生し、艦艇が思うように進まなくなる。

思うように動けなくなった敵船団を確認した李俊は、上流側を進む韓軍の大型戦闘艦『闘艦(とうかん)』の陰に隠れていた小型船『蒙衝(もうしょう)』20隻に突撃のドラを鳴らし、魔族船団の中央から入り込み、一気に内部へ割り込んできた。

「敵は風と流れを読んで、一気に我が艦隊の中央へ突入して参りました!」

「何をやっている、早く火矢を掛けろ!」

「なりません!ここまで接近されたら我が船団も火の海となります!」

水上戦の経験が少ない水軍司令ソウケンビの指示を、部下が止める。

「ならば弓矢を撃ち込め!」

その混乱した中央船団の中を、一気に抜けてくる5隻の小型艦艇があった。

「速い!あれは敵の高速船『走舸(そうか)』です!」

走舸5隻は真っすぐに、ソウケンビの乗船する楼船側面に突き刺さった。

「まずい、船内に乗り込ませるな!」 

魔族将軍が指示を出したのもつかの間、次々と斬り込み隊が乗り込み暴れはじめる!

「蜂須賀小六推参!この船に乗る大将首をもらい受けに参った!」

名乗りを上げた蜂須賀衆は抜刀し、魔族を次々と斬り倒し始めた。

魔族たちも武器を持ち戦い始めるが、揺れる船上での戦いに慣れておらず、弓や飛び魔法が当たらないどころか、白兵戦すらままならない状態だ。

やがて張横、張順の部隊も乗り込み、指揮官船はいよいよ大乱闘となってきた。

「ソウケンビ様、この船は危険です!」
「別の闘艦に乗り換えて指揮を取り直しましょう!」

10名ほどの護衛と、指令室から退避するソウケンビだったが、運悪く張横と鉢合わせとなる。

「見つけたぜ司令官!今すぐ投降するか殺されるか選べ!」

そう言ったにもかかわらず、短気な張横は両手に『呉鉤』を持ち、次々と護衛を切り裂いていく。

「わ、わかった降伏する」

護衛が皆斬り倒された後、ソウケンビは慌てて青龍刀を捨てて降伏した。

「ふん、俺としちゃあ最後まで抵抗してほしかったんだがな!」

そう言って手を後ろで結束し、ソウケンビを甲板へと連れだした。

甲板に出たその瞬間、ソウケンビは急に走り出し、背中に翼を生やして空に飛び上がった。

「貴様!逃げやがったな!」

「ははは!お前のような単細胞の殺戮者など相手にしていられるか!」
「じゃあな!」

そう言って振り向き、上に昇ろうとした瞬間、槍がソウケンビの喉を突き抜けた。

「げぼっ」

血を吐きながら甲板に叩きつけられたソウケンビ。

「だ…だれが…おでにやりを…?」

ソウケンビのその言葉に、建物の屋根からバンダナを巻いた男が飛び降りてきた。

「お前が水軍司令官か?俺は韓軍水軍総帥の李俊だ」
「お前に逃げられると、また別の船で指揮を取られ困るからな」
「だから真っ先に倒させてもらった」

そう言って李俊は、ソウケンビの喉に刺さった槍を引き抜いた。

その瞬間、ソウケンビはバタバタと苦しんだが、すぐに動かなくなった。

「俺は槍より剣の方が好きなのだがな」

李俊は腰に付けた名刀『霜鋒(そうほう)』を触りながら答える。

「よし、付近の船に火を放って退却だ!」

こうして李俊たちは、油をたっぷり染み込ませて乗ってきた『走舸』や、船本体に火を付け、敵船団を火の海にして、自分たちの指揮官船に戻って行った。
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