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群雄進撃編
第166話 運命の再会
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ピットとルクシルは藩邸を出て、近くにある相国寺へと向かった。
警護の為、少し離れた後ろを薩摩藩士2名がついてくる。
古都と言う街は、昼間も多くの人で活気にあふれている。
「なぁピット…君は自分の国を手に入れないといけないのだろう?」
「であるなら、今回の申し出は必ず受けるべきだよ」
ルクシルはピットの隣を歩きながら、静かに語りかける。
「それはわかっているのだけど…まだ会ったこともない人といきなり結婚だなんて…」
「フフフ…お前は前世でも相当の『奥手』だったのだろうな」
ルクシルの言葉に、ピットは反論できない。
「なあピット、これはきっと違うと思うけど…もし僕の事を考えて迷っているのなら、それは意味のない事だぞ?」
「えっ?」
驚いた顔をするピットに、ルクシルは訳を話す。
「君が僕の前世を教えてくれた時に…忘れていた『婚約者』の事を思い出したんだ」
「僕はもう一度だけ…その婚約者だった男に…今の気持ちを伝えてみたいんだ」
懐かしそうに語るルクシルを見て、初めて胸が締め付けられる感覚を知るピット。
「でも安心していい…君が僕を要らないと言わない限り、僕は君の護衛を続けるから…」
そう言って優しく微笑むルクシル。
「そっか…僕もルクシルがうまく行くように願っているよ」
「そして、すべてが終わったら…皆と一緒に故郷の屋久島へ行こう」
「ありがとうピット…いつか行ける日を楽しみにしているよ」
ピットの笑みに、微笑み返すルクシル。
二人はそのまま本堂でお参りし、藩邸へと帰って行った。
その日の夜、薩摩藩邸へ御所より『迎えの使者』がやってくる。
3人は駕籠に乗って御所入り口まで行き、そのまま『虎の間』へと案内される。
虎の間へ到着すると、部屋の真ん中に長テーブルと椅子が置かれて、3人の公家と思われる人物が立って待っていた。
「これはラビット・ピット様、わざわざ御所までお越しいただきありがとうございます」
「帝は準備にもう少し時間が掛かりますので、こちらに掛けてお待ちください」
そう話して3人を席に案内する。
西郷が上方に座り、隣にピット、大久保と並び、対面はピットの正面の席を開けて3人が座りなおす。
「本日はこのような時間にも関わらず、我が国との会談にお越しいただきまして、恐悦至極に存じます」
「帝もピット様に会えることを楽しみにしておりました」
「いえ、こちらこそ急な会談にご対応いただき、感謝に堪えません」
ピットの言葉に、3人は安堵して話を続ける。
「右から順にご挨拶させて頂きます」
「私が摂政を取り仕切っております関白の『まろ』、同じく関白の『おじゃる』、同じく関白の『しごく』です」
一通りの挨拶を終え、まろ卿が話し始める。
「この度は『我が国と共に戦っていただける』と伺っております」
「それで…単刀直入に申し上げますが、我々は勝てるのでしょうか?」
3人の公卿と西郷たちの目が、席を立ったピットへ一斉に向かう。
「…正直に申し上げますと、ただ撃退するだけであれば『わが国の力』だけで問題ありません」
その言葉に安堵する公卿たち。
「しかし、今回は撃退できたとしても、次に来た時にまた勝てる保証はありません」
『また、このままいけば今回の被害は甚大なものとなるでしょう』
「それはどういうことですか?」
焦る公卿たちの率直な質問に、ピットはため息交じりに回答する。
「単刀直入に申し上げますが、皆さまは内乱状態のまま他国と戦う事は可能だと思いますか?」
「この国はいま二つに割れて、我々外の者から見ても『内乱寸前』の国家にしか見えません」
「そんな状態で、国力も上の相手と戦うなど、自殺行為にしか思えません」
「この絶望的な状況で、我々が介入し侵略者と戦えば、この国土全てが戦場となり、焦土化は避けられません」
「このままでは、勝っても地獄、負けても地獄です」
「あなた方の国は、そんな勝利が欲しいのでしょうか?」
ピットのこの言葉に、何も反論できない公卿たち。
「パンッ!」
ピットは掌で机をたたき、皆を注目させた。
「目を覚ましてください!」
「皆さんの好きな『政治ごっこ』は、いまの国があってできることです」
「もう、佐幕や勤王などやめて一つになり『国家存亡の危機』にあたりましょう」
ここまで話し終え、周りを見渡すピット。
西郷たちは黙って公家たちを見つめ、公家の連中はひそひそ話に従事している
(この公家たちはだめだな…)
ピットがあきれていると、虎のふすまの裏から大笑いが聞こえ始める。
「ハッハッハッ!公家衆の皆様、あまり他国の王の前で情けない部分を御見せしてはなりませんぞ!」
「その声は『イワトモ』卿!」
「貴様は将軍暗殺の件で蟄居中のはずだぞ!」
「我々より官位が下のくせに何たる言い草!いったい誰の許可を得てこの席に現れた!」
憤慨する公家衆。
「誰の許可?この場の誰も許可していないのであれば、あとはもうお一人しかおりますまい」
襖を開け、イワトモ卿と一緒に現れたのは、ウサギの耳を生やし、十二単を着たかわいらしくも凛とした女性であった。
「「「これは、帝!」」」
ピット以外の者は、椅子から降りその場で平伏し、ピットは軽くお辞儀をする。
「イワトモ卿を虎の間に呼んだのは、わらわであるが、何か問題でも?」
「「「いえ、滅相もございませぬ!」」」
公家たちは帝に畏怖し、震えながら答えた。
「そうか、そうか、まさかお前たちが、わらわの決定に何か意見するとは思わなかったのでな」
「「「ははっ!」」」
冷たい口調の帝に、一同は再度ひれ伏す。
「では、ここから『王同士』の対談を行うゆえ、皆外で待たれよ」
「「「!」」」
「なんじゃ?たった今、わらわの決定に異議はないと言ったのは、虚言であったのか?」
「「「いえ…承知いたしました!」」」
慌てて部屋を出ていく公家たち。
「イワトモに、西郷・大久保よ、暫く王と二人で話すので、少し席を外してもらえるか?」
公家たちとは違い、優しい言葉で願い出る帝に、低頭し部屋を出た3人。
『空間遮断!』
帝のスキルで、虎の間の空間が外部と遮断される。
「さて、始めようか」
「ラビット・ピット王…いや、元・わらわの大切な代理人『神谷真実(かみや・まこと)』よ!」
「あなた様は!」
そしてここに、ラビット国・亜人連合国のトップ会談が始まる。
警護の為、少し離れた後ろを薩摩藩士2名がついてくる。
古都と言う街は、昼間も多くの人で活気にあふれている。
「なぁピット…君は自分の国を手に入れないといけないのだろう?」
「であるなら、今回の申し出は必ず受けるべきだよ」
ルクシルはピットの隣を歩きながら、静かに語りかける。
「それはわかっているのだけど…まだ会ったこともない人といきなり結婚だなんて…」
「フフフ…お前は前世でも相当の『奥手』だったのだろうな」
ルクシルの言葉に、ピットは反論できない。
「なあピット、これはきっと違うと思うけど…もし僕の事を考えて迷っているのなら、それは意味のない事だぞ?」
「えっ?」
驚いた顔をするピットに、ルクシルは訳を話す。
「君が僕の前世を教えてくれた時に…忘れていた『婚約者』の事を思い出したんだ」
「僕はもう一度だけ…その婚約者だった男に…今の気持ちを伝えてみたいんだ」
懐かしそうに語るルクシルを見て、初めて胸が締め付けられる感覚を知るピット。
「でも安心していい…君が僕を要らないと言わない限り、僕は君の護衛を続けるから…」
そう言って優しく微笑むルクシル。
「そっか…僕もルクシルがうまく行くように願っているよ」
「そして、すべてが終わったら…皆と一緒に故郷の屋久島へ行こう」
「ありがとうピット…いつか行ける日を楽しみにしているよ」
ピットの笑みに、微笑み返すルクシル。
二人はそのまま本堂でお参りし、藩邸へと帰って行った。
その日の夜、薩摩藩邸へ御所より『迎えの使者』がやってくる。
3人は駕籠に乗って御所入り口まで行き、そのまま『虎の間』へと案内される。
虎の間へ到着すると、部屋の真ん中に長テーブルと椅子が置かれて、3人の公家と思われる人物が立って待っていた。
「これはラビット・ピット様、わざわざ御所までお越しいただきありがとうございます」
「帝は準備にもう少し時間が掛かりますので、こちらに掛けてお待ちください」
そう話して3人を席に案内する。
西郷が上方に座り、隣にピット、大久保と並び、対面はピットの正面の席を開けて3人が座りなおす。
「本日はこのような時間にも関わらず、我が国との会談にお越しいただきまして、恐悦至極に存じます」
「帝もピット様に会えることを楽しみにしておりました」
「いえ、こちらこそ急な会談にご対応いただき、感謝に堪えません」
ピットの言葉に、3人は安堵して話を続ける。
「右から順にご挨拶させて頂きます」
「私が摂政を取り仕切っております関白の『まろ』、同じく関白の『おじゃる』、同じく関白の『しごく』です」
一通りの挨拶を終え、まろ卿が話し始める。
「この度は『我が国と共に戦っていただける』と伺っております」
「それで…単刀直入に申し上げますが、我々は勝てるのでしょうか?」
3人の公卿と西郷たちの目が、席を立ったピットへ一斉に向かう。
「…正直に申し上げますと、ただ撃退するだけであれば『わが国の力』だけで問題ありません」
その言葉に安堵する公卿たち。
「しかし、今回は撃退できたとしても、次に来た時にまた勝てる保証はありません」
『また、このままいけば今回の被害は甚大なものとなるでしょう』
「それはどういうことですか?」
焦る公卿たちの率直な質問に、ピットはため息交じりに回答する。
「単刀直入に申し上げますが、皆さまは内乱状態のまま他国と戦う事は可能だと思いますか?」
「この国はいま二つに割れて、我々外の者から見ても『内乱寸前』の国家にしか見えません」
「そんな状態で、国力も上の相手と戦うなど、自殺行為にしか思えません」
「この絶望的な状況で、我々が介入し侵略者と戦えば、この国土全てが戦場となり、焦土化は避けられません」
「このままでは、勝っても地獄、負けても地獄です」
「あなた方の国は、そんな勝利が欲しいのでしょうか?」
ピットのこの言葉に、何も反論できない公卿たち。
「パンッ!」
ピットは掌で机をたたき、皆を注目させた。
「目を覚ましてください!」
「皆さんの好きな『政治ごっこ』は、いまの国があってできることです」
「もう、佐幕や勤王などやめて一つになり『国家存亡の危機』にあたりましょう」
ここまで話し終え、周りを見渡すピット。
西郷たちは黙って公家たちを見つめ、公家の連中はひそひそ話に従事している
(この公家たちはだめだな…)
ピットがあきれていると、虎のふすまの裏から大笑いが聞こえ始める。
「ハッハッハッ!公家衆の皆様、あまり他国の王の前で情けない部分を御見せしてはなりませんぞ!」
「その声は『イワトモ』卿!」
「貴様は将軍暗殺の件で蟄居中のはずだぞ!」
「我々より官位が下のくせに何たる言い草!いったい誰の許可を得てこの席に現れた!」
憤慨する公家衆。
「誰の許可?この場の誰も許可していないのであれば、あとはもうお一人しかおりますまい」
襖を開け、イワトモ卿と一緒に現れたのは、ウサギの耳を生やし、十二単を着たかわいらしくも凛とした女性であった。
「「「これは、帝!」」」
ピット以外の者は、椅子から降りその場で平伏し、ピットは軽くお辞儀をする。
「イワトモ卿を虎の間に呼んだのは、わらわであるが、何か問題でも?」
「「「いえ、滅相もございませぬ!」」」
公家たちは帝に畏怖し、震えながら答えた。
「そうか、そうか、まさかお前たちが、わらわの決定に何か意見するとは思わなかったのでな」
「「「ははっ!」」」
冷たい口調の帝に、一同は再度ひれ伏す。
「では、ここから『王同士』の対談を行うゆえ、皆外で待たれよ」
「「「!」」」
「なんじゃ?たった今、わらわの決定に異議はないと言ったのは、虚言であったのか?」
「「「いえ…承知いたしました!」」」
慌てて部屋を出ていく公家たち。
「イワトモに、西郷・大久保よ、暫く王と二人で話すので、少し席を外してもらえるか?」
公家たちとは違い、優しい言葉で願い出る帝に、低頭し部屋を出た3人。
『空間遮断!』
帝のスキルで、虎の間の空間が外部と遮断される。
「さて、始めようか」
「ラビット・ピット王…いや、元・わらわの大切な代理人『神谷真実(かみや・まこと)』よ!」
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