神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

文字の大きさ
上 下
167 / 317
群雄進撃編

第166話 運命の再会

しおりを挟む
ピットとルクシルは藩邸を出て、近くにある相国寺へと向かった。

警護の為、少し離れた後ろを薩摩藩士2名がついてくる。

古都と言う街は、昼間も多くの人で活気にあふれている。

「なぁピット…君は自分の国を手に入れないといけないのだろう?」
「であるなら、今回の申し出は必ず受けるべきだよ」

ルクシルはピットの隣を歩きながら、静かに語りかける。

「それはわかっているのだけど…まだ会ったこともない人といきなり結婚だなんて…」

「フフフ…お前は前世でも相当の『奥手』だったのだろうな」

ルクシルの言葉に、ピットは反論できない。

「なあピット、これはきっと違うと思うけど…もし僕の事を考えて迷っているのなら、それは意味のない事だぞ?」

「えっ?」

驚いた顔をするピットに、ルクシルは訳を話す。

「君が僕の前世を教えてくれた時に…忘れていた『婚約者』の事を思い出したんだ」
「僕はもう一度だけ…その婚約者だった男に…今の気持ちを伝えてみたいんだ」

懐かしそうに語るルクシルを見て、初めて胸が締め付けられる感覚を知るピット。

「でも安心していい…君が僕を要らないと言わない限り、僕は君の護衛を続けるから…」

そう言って優しく微笑むルクシル。

「そっか…僕もルクシルがうまく行くように願っているよ」
「そして、すべてが終わったら…皆と一緒に故郷の屋久島へ行こう」

「ありがとうピット…いつか行ける日を楽しみにしているよ」

ピットの笑みに、微笑み返すルクシル。

二人はそのまま本堂でお参りし、藩邸へと帰って行った。

その日の夜、薩摩藩邸へ御所より『迎えの使者』がやってくる。

3人は駕籠に乗って御所入り口まで行き、そのまま『虎の間』へと案内される。

虎の間へ到着すると、部屋の真ん中に長テーブルと椅子が置かれて、3人の公家と思われる人物が立って待っていた。

「これはラビット・ピット様、わざわざ御所までお越しいただきありがとうございます」

「帝は準備にもう少し時間が掛かりますので、こちらに掛けてお待ちください」

そう話して3人を席に案内する。

西郷が上方に座り、隣にピット、大久保と並び、対面はピットの正面の席を開けて3人が座りなおす。

「本日はこのような時間にも関わらず、我が国との会談にお越しいただきまして、恐悦至極に存じます」

「帝もピット様に会えることを楽しみにしておりました」

「いえ、こちらこそ急な会談にご対応いただき、感謝に堪えません」

ピットの言葉に、3人は安堵して話を続ける。

「右から順にご挨拶させて頂きます」

「私が摂政を取り仕切っております関白の『まろ』、同じく関白の『おじゃる』、同じく関白の『しごく』です」

一通りの挨拶を終え、まろ卿が話し始める。

「この度は『我が国と共に戦っていただける』と伺っております」
「それで…単刀直入に申し上げますが、我々は勝てるのでしょうか?」

3人の公卿と西郷たちの目が、席を立ったピットへ一斉に向かう。

「…正直に申し上げますと、ただ撃退するだけであれば『わが国の力』だけで問題ありません」

その言葉に安堵する公卿たち。

「しかし、今回は撃退できたとしても、次に来た時にまた勝てる保証はありません」
『また、このままいけば今回の被害は甚大なものとなるでしょう』

「それはどういうことですか?」

焦る公卿たちの率直な質問に、ピットはため息交じりに回答する。

「単刀直入に申し上げますが、皆さまは内乱状態のまま他国と戦う事は可能だと思いますか?」

「この国はいま二つに割れて、我々外の者から見ても『内乱寸前』の国家にしか見えません」

「そんな状態で、国力も上の相手と戦うなど、自殺行為にしか思えません」

「この絶望的な状況で、我々が介入し侵略者と戦えば、この国土全てが戦場となり、焦土化は避けられません」

「このままでは、勝っても地獄、負けても地獄です」

「あなた方の国は、そんな勝利が欲しいのでしょうか?」

ピットのこの言葉に、何も反論できない公卿たち。

「パンッ!」

ピットは掌で机をたたき、皆を注目させた。
「目を覚ましてください!」
「皆さんの好きな『政治ごっこ』は、いまの国があってできることです」
「もう、佐幕や勤王などやめて一つになり『国家存亡の危機』にあたりましょう」

ここまで話し終え、周りを見渡すピット。

西郷たちは黙って公家たちを見つめ、公家の連中はひそひそ話に従事している

(この公家たちはだめだな…)

ピットがあきれていると、虎のふすまの裏から大笑いが聞こえ始める。

「ハッハッハッ!公家衆の皆様、あまり他国の王の前で情けない部分を御見せしてはなりませんぞ!」

「その声は『イワトモ』卿!」

「貴様は将軍暗殺の件で蟄居中のはずだぞ!」

「我々より官位が下のくせに何たる言い草!いったい誰の許可を得てこの席に現れた!」

憤慨する公家衆。

「誰の許可?この場の誰も許可していないのであれば、あとはもうお一人しかおりますまい」

襖を開け、イワトモ卿と一緒に現れたのは、ウサギの耳を生やし、十二単を着たかわいらしくも凛とした女性であった。

「「「これは、帝!」」」

ピット以外の者は、椅子から降りその場で平伏し、ピットは軽くお辞儀をする。

「イワトモ卿を虎の間に呼んだのは、わらわであるが、何か問題でも?」

「「「いえ、滅相もございませぬ!」」」

公家たちは帝に畏怖し、震えながら答えた。

「そうか、そうか、まさかお前たちが、わらわの決定に何か意見するとは思わなかったのでな」

「「「ははっ!」」」

冷たい口調の帝に、一同は再度ひれ伏す。

「では、ここから『王同士』の対談を行うゆえ、皆外で待たれよ」

「「「!」」」

「なんじゃ?たった今、わらわの決定に異議はないと言ったのは、虚言であったのか?」

「「「いえ…承知いたしました!」」」

慌てて部屋を出ていく公家たち。

「イワトモに、西郷・大久保よ、暫く王と二人で話すので、少し席を外してもらえるか?」

公家たちとは違い、優しい言葉で願い出る帝に、低頭し部屋を出た3人。

『空間遮断!』

帝のスキルで、虎の間の空間が外部と遮断される。

「さて、始めようか」
「ラビット・ピット王…いや、元・わらわの大切な代理人『神谷真実(かみや・まこと)』よ!」

「あなた様は!」

そしてここに、ラビット国・亜人連合国のトップ会談が始まる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

聖獣達に愛された子

颯希
ファンタジー
ある日、漆黒の森の前に子供が捨てられた。 普通の森ならばその子供は死ぬがその森は普通ではなかった。その森は..... 捨て子の生き様を描いています!! 興味を持った人はぜひ読んで見て下さい!!

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...