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群雄進撃編
第165話 ある提案
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次の日の朝、大久保から「『イワトモ』卿より今夜『帝』との会談をお願いしたい」とのお願いがピットに届いた。
「まさか、こんなに早く会談が実現するとは思いませんでした」
「まぁ、相手が相手だし、俺たちの国は一刻も早く他国の支援を受けるようにしないと、甚大な被害が出ちまうからな」
ピットの言葉に、陸奥は現状を見た考えを話した。
「へぇ…陸奥殿もちゃんと考えはあるのだな」
「そうですね、どこかの石頭の方とは違い、俺は柔軟な考えができますので」
「ほう…どうやら陸奥殿は、僕の剣の錆になりたいようだな」
ルクシルが笑みを浮かべて、すぐさまピットの後ろに隠れた陸奥を見る。
「とりあえず、今夜の会談でこちらの方向性も決まるだろうから、それまでゆっくりしておこう」
そう話し終えたところで、西郷と大久保が打ち合わせに入ってくる。
「ピットさん、西郷さんに聞いたのですが、貴方はまだ結婚をされていないと伺いましたが本当でしょうか?」
「はい、まだですが?」
ピットの返事に、西郷と大久保の二人は頷き、ピットに相談を持ち掛ける。
「ピット様、これは『朝廷』の意向でもあるのですが、宜しければこの国の『帝』と婚姻していただいて、新たなこの国の『帝』になって頂けないでしょうか?」
「はい?」
この考えは全くなかったピット。
「はい、この数日御同行させて頂き、貴方様であればこの国の民達を、必ず幸せにできると確信いたしました」
「いや、ちょっと待ってください、まだ私は結婚するつもりは…」
焦るピットに大久保は話を続ける。
「御存知の通り、この国の帝は女帝で『ウサギの獣人』であります」
「えっ、獣人ってウサギだったの?」
ピットも、帝が女帝で獣人あったことは聞いていたのだが、種族までは御存知ではなかった。
「今の女帝は1年前に『前女帝』である母上様が崩御され、現帝が生れて1カ月で即位されました」
「いまは、勤王派『しごく』卿と佐幕派『まろ』卿『おじゃる』卿、中立の『イワトモ』卿で公務を取り仕切っているのですが、この時期にきて勤王・佐幕の双方が権力争いを始めたのです」
「そんなことをやっている暇はないと分かっている『イワトモ』卿に、今回の話を行ったところ、『それならばピット様と帝に御結婚していただき、国事をピット様にお願いして、我らで支えていこう』となったのです」
大久保が話し終えて、神妙な面持ちのピットに説明する。
「おいもこの案には賛成でごわす」
「仮にピット様が今回の件をお断りしても、貴方が『独身』である限り、常にどこかの勢力があなたを取り込むために同じことをやってくっでしょう」
「しかし、我が国は一夫一妻なので、『帝』を正妻にすれば、今後その様な者たちの権力争いから逃れることができるでごわす」
そして西郷は、ピットに耳打ちをする。
「それに…今の帝はとても『むぞか(かわいい)』方なので、ピットさんも気にいっち思うです」
「いや、容姿などではなく…」
この手の話はあまり得意ではないピット。
「とりあえず、今夜会談の時によく見てください」
「吉之助さぁが言うとあれですが、私が見ても可愛い方ですから」
「では夜に伺います」
そう言って二人はピットたちの部屋を後にした。
後に残った三人に気まずい空気が流れる。
「あのさ…言っておくけど僕はまだ結婚はしないからね!」
「…」
「うん?ピットさんは誰に話しているのかな?」
「いや、それは二人にだよ!」
「へえ…二人にねぇ…」
本当に困っているピットに、からかいながら返事する陸奥。
「なあピット…少し外を歩かないか?」
「そうだね…わかったよ」
ルクシルの言葉に誘われて、そのまま二人は古都の街中を歩きはじめる。
「まさか、こんなに早く会談が実現するとは思いませんでした」
「まぁ、相手が相手だし、俺たちの国は一刻も早く他国の支援を受けるようにしないと、甚大な被害が出ちまうからな」
ピットの言葉に、陸奥は現状を見た考えを話した。
「へぇ…陸奥殿もちゃんと考えはあるのだな」
「そうですね、どこかの石頭の方とは違い、俺は柔軟な考えができますので」
「ほう…どうやら陸奥殿は、僕の剣の錆になりたいようだな」
ルクシルが笑みを浮かべて、すぐさまピットの後ろに隠れた陸奥を見る。
「とりあえず、今夜の会談でこちらの方向性も決まるだろうから、それまでゆっくりしておこう」
そう話し終えたところで、西郷と大久保が打ち合わせに入ってくる。
「ピットさん、西郷さんに聞いたのですが、貴方はまだ結婚をされていないと伺いましたが本当でしょうか?」
「はい、まだですが?」
ピットの返事に、西郷と大久保の二人は頷き、ピットに相談を持ち掛ける。
「ピット様、これは『朝廷』の意向でもあるのですが、宜しければこの国の『帝』と婚姻していただいて、新たなこの国の『帝』になって頂けないでしょうか?」
「はい?」
この考えは全くなかったピット。
「はい、この数日御同行させて頂き、貴方様であればこの国の民達を、必ず幸せにできると確信いたしました」
「いや、ちょっと待ってください、まだ私は結婚するつもりは…」
焦るピットに大久保は話を続ける。
「御存知の通り、この国の帝は女帝で『ウサギの獣人』であります」
「えっ、獣人ってウサギだったの?」
ピットも、帝が女帝で獣人あったことは聞いていたのだが、種族までは御存知ではなかった。
「今の女帝は1年前に『前女帝』である母上様が崩御され、現帝が生れて1カ月で即位されました」
「いまは、勤王派『しごく』卿と佐幕派『まろ』卿『おじゃる』卿、中立の『イワトモ』卿で公務を取り仕切っているのですが、この時期にきて勤王・佐幕の双方が権力争いを始めたのです」
「そんなことをやっている暇はないと分かっている『イワトモ』卿に、今回の話を行ったところ、『それならばピット様と帝に御結婚していただき、国事をピット様にお願いして、我らで支えていこう』となったのです」
大久保が話し終えて、神妙な面持ちのピットに説明する。
「おいもこの案には賛成でごわす」
「仮にピット様が今回の件をお断りしても、貴方が『独身』である限り、常にどこかの勢力があなたを取り込むために同じことをやってくっでしょう」
「しかし、我が国は一夫一妻なので、『帝』を正妻にすれば、今後その様な者たちの権力争いから逃れることができるでごわす」
そして西郷は、ピットに耳打ちをする。
「それに…今の帝はとても『むぞか(かわいい)』方なので、ピットさんも気にいっち思うです」
「いや、容姿などではなく…」
この手の話はあまり得意ではないピット。
「とりあえず、今夜会談の時によく見てください」
「吉之助さぁが言うとあれですが、私が見ても可愛い方ですから」
「では夜に伺います」
そう言って二人はピットたちの部屋を後にした。
後に残った三人に気まずい空気が流れる。
「あのさ…言っておくけど僕はまだ結婚はしないからね!」
「…」
「うん?ピットさんは誰に話しているのかな?」
「いや、それは二人にだよ!」
「へえ…二人にねぇ…」
本当に困っているピットに、からかいながら返事する陸奥。
「なあピット…少し外を歩かないか?」
「そうだね…わかったよ」
ルクシルの言葉に誘われて、そのまま二人は古都の街中を歩きはじめる。
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