神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第160話 双方の駆け引き

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「まずは朝廷に働きかけ、帝へ我々が『とくもち』公暗殺には関わっていない事を説明いたす」
「それからこの国の窮状を説明し、一致団結して『夷狄』共を撃ち払うしかなか」

キッチョムの説明に、ピットは質問する。

「なるほど、しかし、朝廷はいまの薩摩藩の言い分を聞いてくれるのでしょうか?」
「相手は将軍暗殺まで実行し、薩摩を追い落とそうとする者達」
「当然、帝が薩摩藩の弁明など聞かないよう手を打っているのではないでしょうか?」

ピットの言葉に押し黙るしかないキッチョム。

「キッチョム殿、ここはひとつ、私に賭けてみませんか?」

「ピット殿に賭ける?」

キッチョムの言葉にピットは頷く。

「今の私の名は、日ノ本や宋国・秦国・魏、そして三龍合衆国や大英海龍国、トレビアン帝国まで知れ渡っています」

「それを公家の『イワトモ』卿に説明し、私が帝と『王同士の対談』を望んでいるとお伝えください」

「もし帝が会わないと申したら?」

キッチョムの質問に、ピットは笑みを浮かべて答える。

「その時は、もうこの国との交渉の必要はありませんので、本国に帰らせて頂きます」
「あとは、この次にこの国を治めた者と、再度交渉か戦争を行いますので…」

「ピット王は我々を脅されるのか!」

怒ったシンベエは刀に手を掛け、同時にルクシルも剣に手を掛ける。

陸奥は焦った顔で、正座したまま双方の顔を見ている。

そして、ピットはシンベエを睨みつける。

「シンベエ殿、2度目ですよ?」
「キッチョム殿の質問に素直に答え、それを刀で威嚇するシンベエ殿」
「一体どちらが脅しているのですかね?」

「!」

張り詰めた緊張感の中、突然キッチョムは笑いだす。

「ハッハッハッ!」
「シンベエ、もうよか、ちゃんと座っとれ」

「…すみもはん、ピット様、キッチョムどん」

シンベエは謝罪し座りなおす。

「それで…私は無事『試験』に合格できましたか?」

ピットの言葉に、キッチョムは驚きながら謝罪する。

「試すようなことをして申し訳なかです」
「我々も藩…いや、この国の命運を決める話なので、ピット様がどのようなお考えなのか?すべてを預けれれる方なのかを試させて頂きました」

キッチョムたち一同は姿勢を正し、ピットに礼を取る。

「実はピット様が話された内容の半分を、我々も情報として得ておりもうした」
「しかし、3国が同時にこの国を攻撃してくる事に関しては初耳でした」

「この国の力では、3国はおろか、『宋国』『日ノ本』のどちらかが攻め込んできても、敗北すっでしょう」
「それほどまでに、この国は危機に面していると、我々も考えております」

「我々も協力させて頂きますので、どうかピット様のお力をお貸しください」

この言葉と同時に、キッチョムたちの体が薄白く光りだした。

「皆様の気持ちはわかりました」
「今後の話をする前に、皆さまに前世の記憶を戻します」

その瞬間、5人の体は眩しく光だし、進化を遂げる。

こうして、キッチョムは『西郷隆永(さいごう・たかなが)』、イチゾウは『大久保一蔵(おおくぼ・いちぞう)』、タテワキは『小松帯刀(こまつ・たてわき)』、ハンジロウは『中村半次郎(なかむら・はんじろう)』、シンベエは『田中新兵衛(たなか・しんべえ)』にそれぞれ進化した。

「ピット様、あいがとごわす」
「おかげで色々なことを思い出せもうした」

「一蔵どん、明日『イワトモ』卿に会って、ピット様を帝と対談できるように話しとくんせ」
「帯刀さんは、我が殿『島津斉彬(しまず・なりあきら)』様にお会いして、今日の事の報告ば頼みます」
「半次郎は帯刀さん、新兵衛は一蔵どんの護衛ばしてくれ」

皆は相槌を打ち、そのまま部屋を出ていった。

「おいはその間に、ピット様を連れて、古都におる要人たちを紹介します」

「西郷さん、私を信じて頂いてありがとうございます」

ピットの感謝の言葉に、西郷は謝罪を述べる。

「数々のピット様への非礼、どうかお許しください」
「大したおもてなしも出来ませんが、ここではどうかゆっくりお寛ぎください」
「明日また伺います」

そう言って西郷は部屋を出ていった。

「は~本気で疲れたぜ!」

「お前は何もやっていないだろ!」

疲れた顔で足を延ばした陸奥に、ルクシルはつっこんだ。

「陸奥さんもルクシルもお疲れ様」
「とりあえずみんなには信じてもらえたよ」

さっきとは打って変わり、穏やかな顔になるピット。

「しかしピットさんは肝が据わってるな~」
「正直、あれだけ薩摩藩士にすごまれると、なかなか強気な話はできないけど、ピットさんは何食わぬ顔でやってのけるからなぁ」

「そうだな…以前のピットからは想像できないくらい、堂々とした姿だったな」

「いや…本当はもうクタクタですよ」
「あれだけの言葉、よく次から次に出たなと…我ながら感心します」

胡坐を解き、両手を支えに足を延ばして天井を眺めるピット。

「それで、西郷さんはどんな方を紹介されるのだろうな?」

「うーん、公家の方じゃないかな、たぶん」
「以外と佐幕の要人かもしれませんね」

陸奥の言葉に思案する二人。

しかし2日後、3人には想像できなかった人物が登場した。
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