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群雄進撃編
第157話 古都へ
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再びピットの部屋に戻り、話を続ける。
「ところで龍馬さんの仲間たちは、皆大丈夫だったのですか?」
ピットの質問に、龍馬は笑いながら答える。
「おかげさまで、みんな大した怪我はしとらん」
「ピットさんの仲間の『半蔵』さんが、敵の兵隊30名を殆ど片付けてしまったぜよ」
龍馬の報告に頭を下げる半蔵。
「では、今回襲ったやつらの身元は判りました?」
「それが…今回の襲撃者は、全員自害してしもうたんじゃ」
「自決?30人全員ですか?」
ピットの質問に、龍馬も困惑した返事をする。
「そうじゃ、捕虜全員奥歯に『毒』を仕込んでおって、束縛されるや否や一斉に自害したらしい」
「自害した奴らの持ち物を調べておるが、今のところ何もわかっておらんがじゃ」
「ただ、猿や猪の獣人が多かったのを見て、犯人は薩摩と長州が結託してやったのだろうと、幕府の上層部は決め付けちょる」
龍馬は、このまま真犯人が見つからなければ、薩摩と長州が『将軍暗殺の首謀者』になる可能性が高いと推測した。
「それで、今後の幕府方の動きはどうなりそうです?」
このピットの質問には、龍馬の顔色も悪くなる。
「それなんじゃが、まず今回将軍様が亡くなったことで、幕府も慌てて次の将軍様を決めないかんがじゃ」
「それと同時に、今回の暗殺の責任を、全て勝先生に押し付けようとしちょる!」
「このまま何もせんかったら、勝先生は責任を取らされて『切腹』になってしまうがじゃ」
「そんな馬鹿な?勝先生はそもそもこの計画には反対だったじゃないですか!」
ピットは声を荒げるも、龍馬は無念そうに首を振る。
「結果的に、勝先生が乗船・管理しとる船で、将軍様が殺されたという事実が全てなんじゃ」
「連れ出して逃げようにも、勝先生は重傷で動く事も出来ん」
この時麟太郎は、足とあばらの骨を折る重傷で、満足に歩く事も出来ない状況だった。
「勝先生を助けたくても、わしもこのような状況」
「今どうするかを、思案しとるところなんじゃ」
左腕を骨折している龍馬も、今の自分が無力で悔しがっている。
ピットは目を瞑り、ただじっと考え…決断する。
「半蔵、ここから古都の薩摩藩邸までどれぐらいで走破できる?」
「はっ、一日あれば十分かと」
「わかった」
「龍馬さん、これから勝先生に、我々の身分を明かした上で、「私との会談」を求める手紙を、薩摩藩の「キッチョム」殿宛に書いてもらってください」
「その手紙を半蔵に持たせます」
「なるほど、それで?」
「半蔵には手紙を届けさせた後、そのまま本国へ戻ってもらい、『別動隊』を率いて、薩摩藩邸に駐屯させます」
「おいおい、そなことしたら幕府が薩摩を朝敵にするんじゃなかか?」
「それはないです」
断言するピットに、龍馬は驚く。
「私が直接、『帝』に『ラビット国の王』として謁見し、今回の事件を引き起こした『真犯人』を伝えます」
「真犯人?ピットさんは誰が黒幕か分かっとるがか?」
ピットは小声でその場の者達に話す。
「なんで…そんなところまで知っとるがか?」
「それは…私の『前世』に起因します」
ここまで話し、皆に指示を出す。
「龍馬さん、事は一刻を争います!」
「我々も今夜には立ちますので、急いで勝先生に手紙を書いて貰ってください」
「それと、薩摩藩邸の道案内ができる獣人を一人お願いします」
「わかった、それならイタチの『陸奥陽之助』が適任じゃ」
ピットは黙って頷く。
「半蔵、本国に戻ったら、『八重』も一緒に連れて来てくれ」
「あと、この者達にも来るように伝えてくれ」
ピットは半蔵に手紙を渡す。
「大変な任務だが、よろしく頼む」
「承知!」
「ルクシルさん、古都までは『獣化』した私の背中に乗って移動します」
「体の方は大丈夫ですか?」
「…問題ない」
「では皆さん、各々の任務を全うしてください!」
(もう二度と同じ過ちは繰り返さない…)
ピットは心の中で呟く。
その日の夜、ピットは一通の手紙を龍馬に渡して、闇の中、古都へと向かった。
場所は変わり、同時刻の古都にある『ある建物内』。
「がはははは、『トシ』、遂にこの日がやってきたぞ!」
「ふふっ、気合が入っていますね『局長』!」
『当たり前だ!今日が我ら『新撰組』の記念すべき日になるのじゃからな!』
「遂に我々の名を、古都に知らしめることになりますね」
「気張り過ぎるなよ『ソウジ』」
「『ケイスケ』副長こそ気を付けてくださいね」
「よし、『ゲンザブロウ』『ハジメ』『カシタロウ』『シンパチ』『ヘイスケ』『サノスケ』」
「ある方からの報告により、本日『不平分子』どもが『池田屋』に集結することが判明した!」
「今から我ら『新撰組』は、『池田屋』に集まる『不平分子』共を襲撃・捕縛する!」
「付近にいる怪しい輩も全て捕らえよ!」
「「「応!」」」
掛け声とともに、『ダンダラ羽織』を着た鬼たちは、『誠』の旗と共に、夜の闇へと消えていった。
この国は今、戦乱に向けて一気に加速していく。
「ところで龍馬さんの仲間たちは、皆大丈夫だったのですか?」
ピットの質問に、龍馬は笑いながら答える。
「おかげさまで、みんな大した怪我はしとらん」
「ピットさんの仲間の『半蔵』さんが、敵の兵隊30名を殆ど片付けてしまったぜよ」
龍馬の報告に頭を下げる半蔵。
「では、今回襲ったやつらの身元は判りました?」
「それが…今回の襲撃者は、全員自害してしもうたんじゃ」
「自決?30人全員ですか?」
ピットの質問に、龍馬も困惑した返事をする。
「そうじゃ、捕虜全員奥歯に『毒』を仕込んでおって、束縛されるや否や一斉に自害したらしい」
「自害した奴らの持ち物を調べておるが、今のところ何もわかっておらんがじゃ」
「ただ、猿や猪の獣人が多かったのを見て、犯人は薩摩と長州が結託してやったのだろうと、幕府の上層部は決め付けちょる」
龍馬は、このまま真犯人が見つからなければ、薩摩と長州が『将軍暗殺の首謀者』になる可能性が高いと推測した。
「それで、今後の幕府方の動きはどうなりそうです?」
このピットの質問には、龍馬の顔色も悪くなる。
「それなんじゃが、まず今回将軍様が亡くなったことで、幕府も慌てて次の将軍様を決めないかんがじゃ」
「それと同時に、今回の暗殺の責任を、全て勝先生に押し付けようとしちょる!」
「このまま何もせんかったら、勝先生は責任を取らされて『切腹』になってしまうがじゃ」
「そんな馬鹿な?勝先生はそもそもこの計画には反対だったじゃないですか!」
ピットは声を荒げるも、龍馬は無念そうに首を振る。
「結果的に、勝先生が乗船・管理しとる船で、将軍様が殺されたという事実が全てなんじゃ」
「連れ出して逃げようにも、勝先生は重傷で動く事も出来ん」
この時麟太郎は、足とあばらの骨を折る重傷で、満足に歩く事も出来ない状況だった。
「勝先生を助けたくても、わしもこのような状況」
「今どうするかを、思案しとるところなんじゃ」
左腕を骨折している龍馬も、今の自分が無力で悔しがっている。
ピットは目を瞑り、ただじっと考え…決断する。
「半蔵、ここから古都の薩摩藩邸までどれぐらいで走破できる?」
「はっ、一日あれば十分かと」
「わかった」
「龍馬さん、これから勝先生に、我々の身分を明かした上で、「私との会談」を求める手紙を、薩摩藩の「キッチョム」殿宛に書いてもらってください」
「その手紙を半蔵に持たせます」
「なるほど、それで?」
「半蔵には手紙を届けさせた後、そのまま本国へ戻ってもらい、『別動隊』を率いて、薩摩藩邸に駐屯させます」
「おいおい、そなことしたら幕府が薩摩を朝敵にするんじゃなかか?」
「それはないです」
断言するピットに、龍馬は驚く。
「私が直接、『帝』に『ラビット国の王』として謁見し、今回の事件を引き起こした『真犯人』を伝えます」
「真犯人?ピットさんは誰が黒幕か分かっとるがか?」
ピットは小声でその場の者達に話す。
「なんで…そんなところまで知っとるがか?」
「それは…私の『前世』に起因します」
ここまで話し、皆に指示を出す。
「龍馬さん、事は一刻を争います!」
「我々も今夜には立ちますので、急いで勝先生に手紙を書いて貰ってください」
「それと、薩摩藩邸の道案内ができる獣人を一人お願いします」
「わかった、それならイタチの『陸奥陽之助』が適任じゃ」
ピットは黙って頷く。
「半蔵、本国に戻ったら、『八重』も一緒に連れて来てくれ」
「あと、この者達にも来るように伝えてくれ」
ピットは半蔵に手紙を渡す。
「大変な任務だが、よろしく頼む」
「承知!」
「ルクシルさん、古都までは『獣化』した私の背中に乗って移動します」
「体の方は大丈夫ですか?」
「…問題ない」
「では皆さん、各々の任務を全うしてください!」
(もう二度と同じ過ちは繰り返さない…)
ピットは心の中で呟く。
その日の夜、ピットは一通の手紙を龍馬に渡して、闇の中、古都へと向かった。
場所は変わり、同時刻の古都にある『ある建物内』。
「がはははは、『トシ』、遂にこの日がやってきたぞ!」
「ふふっ、気合が入っていますね『局長』!」
『当たり前だ!今日が我ら『新撰組』の記念すべき日になるのじゃからな!』
「遂に我々の名を、古都に知らしめることになりますね」
「気張り過ぎるなよ『ソウジ』」
「『ケイスケ』副長こそ気を付けてくださいね」
「よし、『ゲンザブロウ』『ハジメ』『カシタロウ』『シンパチ』『ヘイスケ』『サノスケ』」
「ある方からの報告により、本日『不平分子』どもが『池田屋』に集結することが判明した!」
「今から我ら『新撰組』は、『池田屋』に集まる『不平分子』共を襲撃・捕縛する!」
「付近にいる怪しい輩も全て捕らえよ!」
「「「応!」」」
掛け声とともに、『ダンダラ羽織』を着た鬼たちは、『誠』の旗と共に、夜の闇へと消えていった。
この国は今、戦乱に向けて一気に加速していく。
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