神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

文字の大きさ
上 下
158 / 317
群雄進撃編

第157話 古都へ

しおりを挟む
再びピットの部屋に戻り、話を続ける。

「ところで龍馬さんの仲間たちは、皆大丈夫だったのですか?」

ピットの質問に、龍馬は笑いながら答える。

「おかげさまで、みんな大した怪我はしとらん」

「ピットさんの仲間の『半蔵』さんが、敵の兵隊30名を殆ど片付けてしまったぜよ」

龍馬の報告に頭を下げる半蔵。

「では、今回襲ったやつらの身元は判りました?」

「それが…今回の襲撃者は、全員自害してしもうたんじゃ」

「自決?30人全員ですか?」

ピットの質問に、龍馬も困惑した返事をする。

「そうじゃ、捕虜全員奥歯に『毒』を仕込んでおって、束縛されるや否や一斉に自害したらしい」
「自害した奴らの持ち物を調べておるが、今のところ何もわかっておらんがじゃ」

「ただ、猿や猪の獣人が多かったのを見て、犯人は薩摩と長州が結託してやったのだろうと、幕府の上層部は決め付けちょる」

龍馬は、このまま真犯人が見つからなければ、薩摩と長州が『将軍暗殺の首謀者』になる可能性が高いと推測した。

「それで、今後の幕府方の動きはどうなりそうです?」

このピットの質問には、龍馬の顔色も悪くなる。

「それなんじゃが、まず今回将軍様が亡くなったことで、幕府も慌てて次の将軍様を決めないかんがじゃ」
「それと同時に、今回の暗殺の責任を、全て勝先生に押し付けようとしちょる!」
「このまま何もせんかったら、勝先生は責任を取らされて『切腹』になってしまうがじゃ」

「そんな馬鹿な?勝先生はそもそもこの計画には反対だったじゃないですか!」

ピットは声を荒げるも、龍馬は無念そうに首を振る。

「結果的に、勝先生が乗船・管理しとる船で、将軍様が殺されたという事実が全てなんじゃ」
「連れ出して逃げようにも、勝先生は重傷で動く事も出来ん」

この時麟太郎は、足とあばらの骨を折る重傷で、満足に歩く事も出来ない状況だった。

「勝先生を助けたくても、わしもこのような状況」
「今どうするかを、思案しとるところなんじゃ」

左腕を骨折している龍馬も、今の自分が無力で悔しがっている。

ピットは目を瞑り、ただじっと考え…決断する。

「半蔵、ここから古都の薩摩藩邸までどれぐらいで走破できる?」

「はっ、一日あれば十分かと」

「わかった」
「龍馬さん、これから勝先生に、我々の身分を明かした上で、「私との会談」を求める手紙を、薩摩藩の「キッチョム」殿宛に書いてもらってください」
「その手紙を半蔵に持たせます」

「なるほど、それで?」

「半蔵には手紙を届けさせた後、そのまま本国へ戻ってもらい、『別動隊』を率いて、薩摩藩邸に駐屯させます」

「おいおい、そなことしたら幕府が薩摩を朝敵にするんじゃなかか?」

「それはないです」

断言するピットに、龍馬は驚く。

「私が直接、『帝』に『ラビット国の王』として謁見し、今回の事件を引き起こした『真犯人』を伝えます」

「真犯人?ピットさんは誰が黒幕か分かっとるがか?」

ピットは小声でその場の者達に話す。

「なんで…そんなところまで知っとるがか?」

「それは…私の『前世』に起因します」

ここまで話し、皆に指示を出す。

「龍馬さん、事は一刻を争います!」
「我々も今夜には立ちますので、急いで勝先生に手紙を書いて貰ってください」
「それと、薩摩藩邸の道案内ができる獣人を一人お願いします」

「わかった、それならイタチの『陸奥陽之助』が適任じゃ」

ピットは黙って頷く。

「半蔵、本国に戻ったら、『八重』も一緒に連れて来てくれ」
「あと、この者達にも来るように伝えてくれ」

ピットは半蔵に手紙を渡す。

「大変な任務だが、よろしく頼む」

「承知!」

「ルクシルさん、古都までは『獣化』した私の背中に乗って移動します」
「体の方は大丈夫ですか?」

「…問題ない」

「では皆さん、各々の任務を全うしてください!」

(もう二度と同じ過ちは繰り返さない…)

ピットは心の中で呟く。

その日の夜、ピットは一通の手紙を龍馬に渡して、闇の中、古都へと向かった。

場所は変わり、同時刻の古都にある『ある建物内』。

「がはははは、『トシ』、遂にこの日がやってきたぞ!」

「ふふっ、気合が入っていますね『局長』!」

『当たり前だ!今日が我ら『新撰組』の記念すべき日になるのじゃからな!』

「遂に我々の名を、古都に知らしめることになりますね」

「気張り過ぎるなよ『ソウジ』」

「『ケイスケ』副長こそ気を付けてくださいね」

「よし、『ゲンザブロウ』『ハジメ』『カシタロウ』『シンパチ』『ヘイスケ』『サノスケ』」

「ある方からの報告により、本日『不平分子』どもが『池田屋』に集結することが判明した!」
「今から我ら『新撰組』は、『池田屋』に集まる『不平分子』共を襲撃・捕縛する!」
「付近にいる怪しい輩も全て捕らえよ!」

「「「応!」」」

掛け声とともに、『ダンダラ羽織』を着た鬼たちは、『誠』の旗と共に、夜の闇へと消えていった。

この国は今、戦乱に向けて一気に加速していく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

聖獣達に愛された子

颯希
ファンタジー
ある日、漆黒の森の前に子供が捨てられた。 普通の森ならばその子供は死ぬがその森は普通ではなかった。その森は..... 捨て子の生き様を描いています!! 興味を持った人はぜひ読んで見て下さい!!

処理中です...