神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第154話 王の覚悟

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やばい!ピットがめっちゃ弱っとる!
急いで『憑依』を使って『体力高速回復』や!

いだだだ!てか、憑依したらクッソ痛いやんけ!
骨も何カ所か折れとるし、脾臓と腎臓も一個破裂しとる!
こんな状態でピットよく生きてるな!

よし!体力高速回復で何とかなったで!
しかし、あの若武者は誰だ?
言葉からして九州南部っぽいけど。
薩摩藩には『中村半次郎』や『田中新兵衛』が手練れでいたと思うけど、どのタイプでもなかったし…
乗っていた『駆逐艦』は領域外に去って行ったので、誰だか分らずじまいやな。
俺ができるのはここまでだ。
ピットよ、健闘を祈る!

(…神様…ごめん…なさい…僕が…殺されて…しまった…為に…あなた…も死んで…しまった…)

(でも…きっと…彼ら…が…その…遺志…を…継いで…くれ…る…よ)

(アトハ…マカ…セタ…ヨ…ソウ…カ…)

幾ばくかの時間が過ぎ、ピットは船内のベッドの上で、夢から覚める。

「お目覚めになりましたか!」

見舞っていた半蔵が、慌ててピットに話しかけた。

「半蔵、ここは?」

「ここは船内でピット様のお部屋です」
「そして船は今、広島にあります『呉』に寄港中です」

上半身を起こしたピットは、体が軽くなっていることに気付く。

「おかしい、私はかなりのダメージを負ったはずなのに」

「はい、私は外皮が「キチン」ですので、あまりダメージは無かったのですが、ピット様は、なぜか全くケガがありませんでした」

不思議に話す半蔵に、ピットは呟く。

「そうか…神様、助けて頂きありがとうございます」

ハッと我に戻り、ピットは半蔵に訪ねた。

「ルクシルは?将軍様は?龍馬さんたちは?みんな大丈夫なの?」

「ルクシル殿は、あの武者が手加減したらしく、打撲程度で済んでおります」
「龍馬殿も麟太郎殿も、あばらなどを骨折しておりますが無事です」
「ただ、将軍様は…」
「最初の一撃で心臓を貫かれており、即死であったと思われます」

「そんな…『とくもち公』とはまだ何も話せていなかった」
「ちゃんと…前世を思い出していれば、運命は変わっていたかもしれなかったのに…」

半蔵の報告に肩を落とすピット。

「ピット様、どうかご自分を責めないでくだされ」
「もとはと言えば、私があなたをお守りできなかったのが原因です」

「違うよ半蔵、よく考えたらあんな規格外の化け物相手にした地点で、無事生き残れた方が奇跡だったんだよ」

頭を下げる半蔵を、ピットは即座に庇った。

「ただあの男、半獣化も出来るうえ、スキルも使える」
「一体何者だったのだ?」

少し考えた半蔵は、自身の答えをピットに話す。

「あの武者は、薩摩藩の者ではありません」
「私の知る限り、いまの薩摩に『半獣化』になれるものはいないはずです」
「半獣化ができるとなれば、我々がまだよくわからない『日ノ本』ではないかと推察します」

「日ノ本だって?では彼らが直接この国の『政治のトップ』である将軍を殺しに来たということ?」

「確証はありません」
「ただ、『宋』や『秦』内で、半獣化になれる上、あれほど『自分の意志』を持った者は報告に上がっておりません」

「そうか、であれば私も半蔵の見立てが正しいと思う」

上半身を起こしたピットは、手元のシーツを見つめる。

「それで…今後はどうなると思う?」

ピットの質問に、半蔵は僅かの間目を伏せ、ピットに向き返り自身の考えを話す。

「まず、王は恐らく、安全な本国へ帰って頂くことになります」
「次に丞相(孔明)が『韓王(韓信)』『覇王』より兵を借り受け、大尉(官兵衛)の指示で亜人連合国に『武力降伏』を迫ると考えられます」

黙って話を聞くピットに、半蔵は話を続ける。

「歯向かう勢力は力でねじ伏せ、早急に『日ノ本』に対しての軍整備を行い、臨戦態勢になるでしょう」
「『日ノ本』が仕掛けてくる以上、こちらは悠長に構えている時間はありませんので、この国で多少の血が流れる事は致し方ないと存じます」

話し終えた半蔵にピットは呟く。

「大の虫を生かして小の虫を殺す…半蔵の考えは、政治的には決して間違いじゃないと思う」
「でも、それって『日ノ本』のやろうとしている事と何が違うのだろうか?」
「これから先、私の顔色を窺って生活する亜人連合国の領民たち」
「それはもう、皆が笑って暮らせる『理想の国』ではない…」

ピットは意を決し、半蔵に告げる。

「私は国へは戻らない!」
「半蔵、亜人連合国の領民が血を流さぬよう、私にお前の力を貸してくれ!」

一瞬驚いた顔をした半蔵だが、すぐさま片膝をつき王に忠誠を尽くす。

「勿体なきお言葉!この服部半蔵、何があろうと王に付き従います!」

半蔵は信じていた。

王はきっとこの案を『否』とし、亜人連合国を血塗られた国にしないよう模索する事を。

そして何より、王が自分を必要とし、頼ってくれていることに、心の震えが止まなかった。

「半蔵、ルクシルは起きているか?」

「はい、今隣の部屋で休んでおります」

分ったと半蔵を部屋に残し、ピットはルクシルの部屋を訪ねた。
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