神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第152話 狙われた将軍

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長崎から大阪へ進んでいく『富士山丸』。

地図にすると、本州の日本海側は大陸となっており、太平洋側は日本の陸地と似た形となっている。

また、九州・四国・北海道など、日本に似た島が、同じく海側に点在している。

準備を終えて出港した富士山丸はいま、下関付近を通過中である。

長崎を出港して2日目、ピットはルクシルと船首の甲板に出て、楽しそうに海を眺めていた。

「ピットさん!船旅は満喫してるがか?」

龍馬が陽気に声を掛けてくる。

「はい、おかげさまで色々な体験ができて、本当に楽しく過ごしています」

ピットは空いた時間を使って、船内のいろんなところを龍馬たちに案内してもらっていた。

「そうかーそれは良かった!」

「ルクシルさんも楽しんでくれとるがか?」

「…」

ルクシルは無言でお辞儀をした。

「わははは、まぁ二人とも楽しんでおるのであれば何よりじゃ!」

挨拶が終わった龍馬にピットが話を切り出す。

「それで…将軍はまだお忙しいみたいですね?」

「そうなんじゃ、今重臣たちと、古都到着後の打ち合わせをやっとるのじゃが、いろいろ大変そうでのう」

ここで龍馬は、ピットの耳元に小声で話す。

「実はのう、今回の上京で、『将軍様と帝の結婚」を行う予定なのじゃ」

「結婚ですか?!」

「シーッ、声が大きいぜよ!」

あまりの衝撃に声が大きくなるピットを、慌てて制する龍馬。

「今までの弱腰外交で、公家衆にも軽く見られておる幕府を、次期将軍候補の一人である『とくのぶ』公が、幕府と朝廷の結びつきを強くする為に、『将軍と帝を結婚』させ、幕府と朝廷を一つにする『公武合体』を考え付いたのじゃ」

「なるほど、それが実現すれば、勤王派は口出しできずに、幕府がそのまま政権を維持できると言う訳ですね」

「そういう事じゃ!」

「いや~最初ピットさんは人が良いだけの王様かと思っておったが、すぐに分ってくれて助かるぜよ」

龍馬は、ピットの理解力の良さに大喜びである。

「公家衆の反対もあるが、今回の縁談が決定すれば間違いなく勤王派は立場が苦しくなる」
「わしゃ、怒った勤王派が暴発することが一番怖いんじゃ」

龍馬はそのあとに発生するかもしれない『内戦』を心配していた。

ふと、ピットは遠くの海の上に黒い影があるのに気づく。

「龍馬さん、あの海の上にある黒い影は何ですか?」

「わしゃ近目じゃきに、遠くがよく見えんのじゃ…」

龍馬は細めた目で黒い影を見る。

「ありゃ…蒸気船かのう?何処の藩の船じゃ?」

「…おい、あの船こっちに近づいているぞ!」

ルクシルが龍馬にそう告げた途端、船の前方で水柱が上がる!

「いかん、あの船が砲撃をしてきたぞ!」

「ピットさん達も急いで艦橋に上がるぞ!」

龍馬が艦橋に向かって、走りながら大声で指示を出す。

「逃げるぞ!全速前進!」

「総舵手、面舵45度!右前方にある小島を盾にして砲撃を躱してくれ!」

「ヨーソロー!」

全速航行中の富士山丸付近に複数の水柱が上がる。

「後部砲門、敵艦の鼻先に砲を撃ち込め!」

後部砲門が一斉に火を噴くが、敵艦の手前に着水する。

「だめじゃ、向こうの船の方が速くて射程も長い!」

龍馬は敵艦の性能が上だと分かると、付近にある小島を盾に躱しながら進んだ。

「まずいな、周りにバレぬよう、一隻で古都に来たのが仇になってしまった」

「もう少し行けば幕府の主力艦隊との合流地点だから、そこまで逃げ切るしかない!」

麟太郎は悔やむが、そもそも麟太郎は、将軍を古都に行かせること自体を反対していた。

しかし上層部は、古都の幕府を支持する公家衆の要望により、『古都にて婚姻を執り行う』を受け、勤王派に悟られぬよう『極秘裏』に進める為、麟太郎の進言を退けたのだった。

小島の裏に入ると、敵の砲撃が止む。

「よし、取り舵90度!そのまま直進して脱出する!」

艦長が指示を出した瞬間、見張りからの鐘が響き渡る。

「敵と思しき小船艇数隻が本艦に取り着きました!」

「なんじゃと!」

報告と同時に斬り込んできた『イノシシと猿』の獣人達。

獣人達は付近の水兵たちを次々と襲い始めた。

「こなくそー!」

「ピットさん!今船上にいるのはまずいきに、船内に入って将軍様と合流してくれ!」

そう言い残し、龍馬も槍と『ピストル』を持ち、応戦に向かう。

「ピット様、早く船内へ!」

ルクシルと共に、将軍がいる船室へと向かうが、狭い船内の至る所に幕臣が斬り倒されている。

やがて、将軍のいる部屋に到着すると、そこには異様な光景が広がっていた。
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