神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第147話 二人の龍虎

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ここは、江陵と長沙の中間付近に位置する村。

「大変だ!魔族の奴ら数千がこの村に向かってくるぞ!」
「なんでこんな小さい村に侵攻してくるんだ!」

人口1000にも満たない住民たちは、魔族の侵攻に戦々恐々とし始めた。

「もう、この村は捨てて逃げるしかない」

絶望する村長の前に、二人の獣人と竜人が現れた。

「村長、我々が奴らの足止めを行います」

その提案に驚く村長。

「行き倒れていた俺たちを、この村の者たちが救ってくれた」
「せめてもの御礼に、我々が時を稼ぎますので、江陵方面に退却してください」

「しかし数千が相手では、とてもじゃないがお二人だけでは厳しいかと…」

村長の心配をよそに、二人は笑いだす。

「ハハハッ、心配ご無用!」

「われらの強さは、そんじょそこらの魔族数千程度じゃ敵にもなりませんよ!」

そう話した二人は、ひらりと馬に跨り、魔族が進撃してくる方向へ駆け出した。

「どうかご無事で…」

彼らの無事を祈り、村民たちは逃亡の準備を始めた。

一方、江陵が陥落しているとは知らずに、江陵に退却を行う『ボン』『ジャワ』『ククレ』の魔族副官たち。

兵団は減りつつも、約5000人が付き従っていた。

「まさか150000の軍団で敗北してしまうとは…」

「あの化け物共め!」

「いったん江陵で立て直して、再起を図るしかないな」

副官たちが話しながら暫く進むと、蒼い鎧を着た一人の竜人が道を塞いでいる。

「我らの進む道を塞ぐとは、何奴だ、貴様!」

怒ったボンに、竜人は名乗りを上げる。

「我が名は槍の『しりゅう』!ここを通りたければ俺を倒して行け!」

「小癪な!掛かれ!」

ボンの指示で騎兵100が飛び出してきた。

「アイス・バーン!」

『しりゅう』は氷魔法を飛ばし、前を走る騎兵数人が落馬した。

それを乗り越え、魔族騎兵は突撃してくる。

『しりゅう』は華麗な槍裁きで、次々と魔族騎兵を倒していく。

「ええい、たかが竜人一人に何をしておる!」

ボンは怒って騎兵200で飛び出してきた。

「おっと、副官自らお出ましか!」
「これは敵わんな、逃げるとしよう」

そう言った『しりゅう』は、踵を返しもと来た道を駆けはじめた。

「逃がすな!追え!」

『しりゅう』を追って駆け出したボン率いる800の魔族騎兵。

「あの馬鹿!簡単に敵の挑発に乗りおって!」

ジャワとククレは慌ててボンを追う。

『しりゅう』は馬の速度を調整し、自分に追いつく3~5頭の騎兵を次々と倒していく。

そのまま『しりゅう』は、村とは違う方向へと誘導していく。

どれくらい走っただろうか。

やがて、一本の木の橋が見えてくると、『しりゅう』は馬の速度を上げて一気に駆け抜ける。

その橋の上には、一人の赤い虎の獣人が待ち構えていた。

「俺の名前は『燕人・よくとく』!」
「命の惜しくない奴らは掛かってこい!」

この挑発にボンは更に怒り、騎兵に突撃を指示する。

『よくとく』は、狭い橋の上に2頭ずつ並んでくる騎兵を、蛇矛で次々と薙ぎ払う。

「おらおら!お前たちでは歯ごたえがなさ過ぎて詰まらんわ!」

「そこの司令官みたいなやつ!部下に命令ばかりせずお前が掛かってこい!」

一騎打ちの挑発に乗りそうな勢いのボンだったが、自身が橋の上の男に勝てないのは判っている。

その場で躊躇しているボンを見て、『よくとく』は笑いながら馬鹿にする。

「これはとんだ臆病者よ!」
「俺は弱い者いじめは好かんので、このまま行かせてもらうぜ!」

そう言い放ち、『よくとく』は口から火を放ち、橋を燃やし始めた。

「じゃあな魔族ども!俺が恐ろしくなかったら追ってこい!」

『よくとく』はそのまま背を向けて川の向こうへ走り出す。

「逃がすか!」

ボンは背に翼を生やし、舞い上がった先にいる『よくとく』の背に槍を投げつけようとする。

突然、ボンの腹部に激痛が走る。

翼を出して舞い上がった『しりゅう』の槍が、ボンの腹を貫いた。

「飛べるのはお前らだけと思ったのか?」

「げぼっ」

口から血を吐いたボンは、そのまま墜落していった。

「じゃあな、魔族ども!」

二人は高笑いしながら去って行った。

やっとの事で追いついたジャワとククレは、地面に倒れたボンの姿を確認する。

「馬鹿が…敵の挑発になど乗るからこうなるのだ」

言葉とは裏腹に、肩を落とす二人。

残る橋は、ここから東にある近い橋と、村民たちが渡って逃げた遠くにある西側の橋。

「仕方ない、ここより近い東側の橋から渡るぞ」

魔族兵団はそのまま東側の橋へと向かった。
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