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群雄進撃編

第146話 新たなる戦力たち

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江陵が陥落して2日。

孫堅は長沙城に戻り、転生と言う名の『死んだ兵の再編成』を行っている。

どうやら孫堅も、蟻に進化作を業やった為、終わった後も暫くの間、地面を見てぶつぶつ言っているらしい。

そしてまたこの江陵でも、ボウイと楠本イネが『進化』と『治療』の為に江陵を訪れていた。

「ジメンヲミテシンカ、ジメンヲミテシンカ…」

あの明るかったボウイの心が、ちょっとだけ壊れてしまったような気がしないでもないが、きっと気のせいだろう。

イネさんは風魔法を使った『ホバークラフト』の試作機に乗って来ていた。

どうやらうちの発明王軍団が、『魔法と科学』をテーマに、いろいろなものを作っている様である。

この『ホバークラフト』は非常に優秀で、魔法石10個に風属性『ウインド・ブースト』を込め、地上より1mほど浮き上がった状態で、搭載量200㎏で時速5㎞ほどの速度で進む事ができ、地形や水上など気にせず走破できるのだ。

魔力を燃料に飛ぶのだが、魔族兵から取り出した直径20㎝サイズの魔石フル充填使用で、約2時間は航行可能である。

現在、『ホバークラフト』は3台作られており、そのうちの2台が江陵まで来たのである。

「これがあると、大量の医療器具も楽に運べて助かるわ」

などなど、現場の声は上々である。

また、これを戦闘用に改造した兵器も完成しており、こちらは呼延灼達が運用できるように訓練中である。

ちなみに魔力補給は、捕虜になった魔族兵さん達から「死なない程度」に頂いている。
魔族は魔力が多いので、多少頂いても、一週間もすると全回復するみたいだ。

なお、その作品や工程を見に来る「エルフやドワーフ」達もいるらしく、殆どの者が、そのまま助手として働いているとの事。

彼らの知識や技術力が合わさって、このファンタジーな世界が、更に『変な方向』に行かないことを切に願う。

話は戻り、江陵には多くの『呉』と『荊州』に係る人物たちが潜んでいた。


孫権仲謀(そんけん・ちゅうぼう) 孫堅の次男、呉の初代皇帝。
呂範子衡(りょはん・しこう) 孫策の独立を助け、孫権に厚く信頼される。
孫尚香(そんしょうこう) 孫策・孫権の妹。武術が好きで弓腰姫(きゅうようき)と渾名された


黄忠漢升(こうちゅう・かんしょう) 蜀・五虎将の一人。大刀と弓の名手。
魏延文長(ぎえん・ぶんちょう) 蜀の宿将。強さは蜀の五虎将に匹敵する。
龐統士元(ほうとう・しげん) 別名鳳雛。孔明と同レベルの知略を持つ。
徐庶元直(じょしょ・げんちょく) 計略が得意で、意外に剣も使える(撃剣)。

更に、戦力ではないが

大喬(だいきょう) 小喬の姉で孫策の奥様。
小喬(しょうきょう) 大喬の妹で周瑜の奥様。
呉夫人(ごふじん)  孫堅の奥様で、孫策・孫権・孫尚香の母。才色兼備で、旦那や息子たちにも助言や諌言を行った。

「「兄上!」」

孫権と孫尚香が孫策のもとへ、笑顔で歩みより拱手した。

「おう、権に香も無事こちらに転生していたか!」

笑顔で話す三人に、母と妻たちが挨拶に来た。

「三人とも久しぶりね、これからまた一緒に暮らせるわね」

「孫策様、貴方様は前世では早々と身罷れましたので、私は大変寂しい思いをいたしました」
「せめて現世では長生きしてくださいね」

大喬は孫策と抱擁し、感涙の中話した。

「大喬よ、すまなかった」
「現世では『毒矢』と『呪い』には十分気を付けるぜ」

孫策は軽く前世での失敗を織り交ぜて、大喬へ謝罪した。

「あ~あ、私も早く周瑜様に会いたいな」

大喬たちの姿を見て、小喬は愚痴っていた。

「策郎(孫策の渾名)様、仲謀様お久しぶりです」

「呂範!また私たちのもとに戻って来てくれてうれしいぞ!」

呂範との再会に喜ぶ孫策と孫権。

「今後は建業方面へと領土を拡大し、更なる人材の邂逅を行いましょう」

呂範の提案に頷く二人。

その方面には、まだまだ数多くの『呉の家臣』達が眠っているはずだからだ。

「今、長沙城には親父(孫堅)と周瑜と陸遜がいるので、後程その戦略を練ろう」

「畏まりました」

そのあと、孫策たちは昔話に花を咲かせていた。

また、転生先に驚いた黄忠は、魏延と話し込んでいる。

「おい文長、どうやら現世の俺たちは、呉に仕えることになりそうじゃぞ?」

「いえ黄忠殿、どうやら我々の主は項羽様のようですぞ!」

「なんと、主は西楚ノ覇王様と申すのか!それは会うのが楽しみじゃな!」

「はい、覇王様の部下は猛将揃いと聞きますし、我々も負けないように頑張りませんとな」

ちなみに、黄忠は見た目も20代後半になっているため、『老黄忠』ではない。

「黄忠殿、魏延殿、久しいな」

「これは龐統殿、お久しぶりでございます」

「今回はわしの同門の男を、皆に紹介しようと思ってな」

「私の名は徐庶と申します、以後お見知りおきを」

「こちらこそよろしくお願いいたす」

蜀のメンバー同士であいさつを終え、実はと徐庶が話し出す。

「私と龐統殿は、最近まで秦の首都、咸陽におりまして、秦の宦官『趙高』と魏の『ピレネッタ公』が手を結び、『楚』の領地に攻撃を仕掛ける手筈を整えておるようでございます」

「それは本当か?」

話がひと段落した孫策たちが、徐庶の話に割って入る。

「はい、復活したばかりの楚が『異常な速さ』で複数の秦の城を撃破し、国力を付けているのを警戒し、二国間で共闘同盟を結んだようです」

「なるほど、理由はわかったが、なぜその情報を持っている?」

孫策の疑問に、龐統が答える。

「彼と私は少し前まで『秦』の文官として使えていたのですが、丞相『李斯(りし)』と宦官趙高の言い争いを徐庶が偶然聞き、魏と共闘することを知ることになり、自身の身を案じて咸陽から逃亡したのです」

「つまり、秦の丞相は共闘に反対であったと?」

「その通りです」

「我々の考えも、『魏』が楚の新領地を狙っているのが見え見えでしたので、丞相は反対するであろうと読んでおりましたが、途中で丞相が暗殺されてしまい、さらに悪い事に、徐庶の使用人が我々もこの同盟に反対していると、宦官共に密告したのです」

そうか、と考え始める孫策に、呂範が意見する。

「この件は早めに本国郢に伝えるべきだと考えます」

「わかった」

「徐庶殿、龐統殿、このまま郢に行ってもらい、この件を項梁殿に話してくれ」

「わかりました」

二人は拱手をし、そのまま馬で郢へと向かった。

「黄忠殿、魏延殿」

「二人はこの後、この江陵に向かっている『ボン』『ジャワ』『ククレ』の敗残軍を殲滅してほしい」
「兵数は大したことないだろうが、付近の村を襲ったりしたら厄介だ」
「私の兵2000をお渡しするので、よろしく頼む」

「「承知しました」」

黄忠、魏延も拱手をし、そのまま兵を連れ討伐に向かった。

続いて捕虜の対応なのだが、到着早々、イネが淩統を𠮟りつけていた。

「まったく、あなたは何を考えているのですか!」

「だってこいつ、前世で親の仇だったから…」

「前世の恨みを、現世に持ち込まないでください!」
「危うく『こうは』さんは、死ぬところだったのですよ!」

イネさんに叱られて、ションボリする淩統。

「イネ殿、もうその辺でいいです」
「知らなかったとはいえ、もとはと言えば、前世の俺がこいつの親父を『射殺』したのが原因ですから…」

部屋の奥から顔を包帯でぐるぐる巻きにされた、『こうは』改め『甘寧興覇(かんねい・こうは)』が現れた。

体のけがなどは、回復魔法である程度回復したようだ。

「甘寧殿、前世での恨みがあったとはいえ、申し訳なかったです」

「いや、気にしないでくれ」
「正直なところ、貴殿にここまでボコボコにされるほどの、『力の差』があるとは思わなかった」

どちらかと言えば、ここまで圧倒的に打ち負かされたことに、ショックを受けているようだ。

「あ、それはたぶん大丈夫です」
「甘寧殿も、進化による半獣化が使用でき、戦闘力が格段に上がっているはずです」

「え、そうなのか?」

試しに半獣化になると、筋骨隆々となり力がみなぎってくる。

「こいつはすげーぜ!」

ついでに顔に巻いた包帯も剥がれ、パンパンに腫れ上がった顔から血が噴き出している。

「あんたたち、いい加減にしなさい!」
「せっかく治療したのに、何馬鹿なことやっているの!」

「あ、すみません…」
「俺、悪くないのに怒られた」

イネさんに怒られ、素直に謝る甘寧と納得がいかない淩統。

「そういえば、淩統の強さは半獣化を考慮しても、強すぎのような気がしたが?」

「ああ、これは俺たちの体が蟻ベースになっているからですよ」
「確認したのですが、腕力は25倍になり、移動速度も時速20㎞ほどになって、さらに外皮がカニの甲羅などと同じ『キチン』になったので、物理攻撃が効きにくくなっているんですよ」

「あーだからお前の親父さんは、頭に矢が当たっても、ちょっと傷が入ったくらいだったのか」
「蟻の体って反則だな」

「さらに、長沙城付近で死んでも、すぐに転生ができるため、うちの都督(周瑜)と陸遜が、長沙を使って魔族兵を削るだけ削ろうと「長沙城ホイホイ」を考え付いたんですよ」
「しかも、元秦兵はもちろん、魔族兵も「元人間や亜人」だったらしく、そいつらも兵として転生させたようです」

この作戦で、当初40000程度だった孫堅軍の兵力も、今や200000を超える大兵団となっていた。

「あいつらが作った魔族兵の魂を『ロンダリング』して、凶悪な孫堅兵に転生させる、悪魔どもにとっては悪夢でしかないな」

「はい、転生を確認した2人が、すぐこれを考え付いたみたいです」

「うちの都督たち、エグいな」

甘寧と淩統は、自分たちの軍師に恐怖を感じた。
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