神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第145話 魂を売った魏の将軍

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多くの兵を失い、江陵方面へ落ち延びていく司令官ハウス。

長沙城から江陵までは300㎞ほどあり、馬で進んでも8日はかかる距離だ。

落ち延びていくハウスたち一行たち、撤退時にいた兵2000も、途中で逃げ出してしまい、今や200足らずである。

「我々は、あんな化け物とこれから戦わねばならぬのか?」
「あれはもはや、魔族や人間、亜人などで相手ができる存在ではない」
「単体で戦えるとしたら、地上ではハイクラスの種族か、大型の魔物か、龍種くらいではないのか?」

ハウスは長沙の兵に、心底恐怖していた。

やがて日が落ち、森林部へと入りそのまま歩き続けていく。

ふと、道の真ん中に何か大きい木の板があり、そこに何か書き記されていた。

「一体何が書いてあるのだ?」

松明をもって書いてある文を読み始めたハウスは、見る見るうちに青ざめていく。

『龐涓この森の中にて死せん』

ハウスは悟った。

自分が転生者で、『魏の将軍・龐涓(ほうけん)』であることも、孫堅たちは知っていたと。

その瞬間、全方面から孫堅軍が攻撃を仕掛けてきた。

抵抗する間もなく倒されていく魔族騎兵。

やがて、一人残ったハウスは、孫堅に質問する。

「貴様、何故俺が『龐涓』だとわかった?」

「捕まえた魔族将軍たちを尋問し、あなたが異常に『孫一族を滅ぼす』と独り言を言っていたと聞いて、『前世に執着』した者が、悪魔か悪神と取引したのではと、家臣の陸遜が推理したのだ」

今度は孫堅がハウスに質問する。

「ハウス…いや、元魏の将軍『龐涓』殿、貴方ほどの功績をあげられた人物が、なぜ悪魔との契約などに応じられた?」

孫堅の言葉に、龐涓はやがて怒りを露にし答えた。

「俺はな、前世でお前らと同じ姓を名乗る『孫臏(そんびん)』に、これに似た計略を受けて殺されたのだ!」
「そして、私が死ぬ間際、ある神が私に取引を持ち掛けてきた」
「わたしに忠誠を誓うなら、この世界に転生させて、多くの『孫一族』の虐殺を手伝ってやろうと!」
「忌々しい孫一族を根絶やしに出来るならと、私は神と『契約』を結んだのだ!」

「我々は性が一緒なだけで『孫臏』とは関係ないはずだが?」

孫堅の問いに、笑みを浮かべながら答える。

「俺も最初はそう思っていたのだがな」
「魔族になると、そのうち『人間や亜人共』を殺せるのであれば、誰だっていいと思うようになったのだ!」

そう答え終わると、龐涓は笑い始めた。

「なるほど、もはやあなたは人の心は残っていないようだな」

そう言った孫堅は、腰に付けた青龍刀を抜く。

「せめて、私の手で現世の縁を断ち切ってあげましょう」

その言葉を聞き、龐涓はさらに大笑いをする。

「わっはっはっは!この世界でも、また『孫の性』に名を成さしめたか!」

そう言い放ち、龐涓は自分の剣で首を突き刺し、絶命した。

孫堅は静かに拱手する。

「龐涓殿、現世を最後に、来世では普通の生き方を送れますよう願っております」

そう呟き、部下に埋葬するよう指示した。

これにて、孫堅軍が陥落させた江陵は『楚』の領地となった。
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