神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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群雄進撃編

第117話 中央軍の敗北

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司令官のコカは混乱の境地にあった。

「荊州城の兵団は籠城戦の準備を行っている」

これが建康府を出陣した時に聞いた最後の報告だった。

コカにとって、荊州城での攻城戦をいかに早く終わらせるかが問題であり、途中で敵が30000の大軍に襲い掛かってくることなど想定していなかったのである。

そして今、山頂は敵襲を受けて大混乱となってしまった。

前方では穴に落ちた騎兵たちが焼かれ悲鳴を上げる。

後方では火の手が上がり、戦闘が行われているのか怒号と悲鳴が入り混じっている。

先ほどまで隊長たちに指示を与えていた青面獣は、敵将と思われる獣人と一騎打ちを始めてしまっていた。

「司令官殿!我々はどのように敵と対峙すればよろしいのでしょうか?」
「司令官殿!穴から敵兵と思われる兵団がこちらに向かってきております、ご指示を!」
「「司令官殿!」」

指揮系統を失った魔族兵たちは、司令官に指示を仰ぐが、敵どころか味方の状況すら把握できていないコカに、この場を指揮するのは不可能であった。

「お前たちは近くにいる敵兵を倒していけ!」
「俺は上空へ飛び状況を確認する!」

簡単な指示を出し、コカは背中からコウモリのような翼を出して一気に上空へ飛び立った。

ある程度の上空まで上がり見下ろすと、その惨状が一面に広がった。

山頂付近に大きく空いた穴、長い隊列からはあちこちから火の手が上り、隊列の後方は敵兵団により魔族兵が次々と斬り倒されている。

「何故だ…如何してこうなった?」

愕然と呟くコカに、誰かが後ろから声を掛ける。

「どうしてこうなった?成る様にして成っただけの話だ」

振り返るとそこには、黒装束の男が羽を出して宙に浮いていた。

「誰だ、貴様は!」

コカは焦って男に聞くと、男は笑って答えた。

「俺の名か?俺の名前は百地丹波、伊賀衆の頭領だ」
「敵か味方かは聞かなくてもわかるだろう?」

百地からただならない殺気を感じ取ったコカは、脱兎の如くその場を逃げ出した。

「やれやれ、次は鬼ごっこか…」

そう呟いた百地は、足元に小さな竜巻を発生させ、羽を収納するとその竜巻に片足を乗せ、コカの方へ一気に跳躍した。

急いで逃げるコカの背中に突然激痛が走り、前方へ吹き飛ばされた。

振り向き背中を確認すると、男の頭が自分の背にめり込んでいる。

「一体どこに行こうとしているのだ?」

百地の頭が背中から離れた瞬間、コカは血を吐きながら地上に落ちようとするが何とか耐える。

「貴様ら…いったい何者なのだ…?」

弱弱しく質問するコカに百地は答える。

「そうだな…お前ら魔族が世界を乱すのでそれを正しにきた者…とでも答えておこうか」

馬鹿な…と答えてコカは気を失う。

百地はチョーカーに付いた魔石を使い、コカを拘束する。

「魔族どもよ、よく聞け!」

「貴様らの司令官と副官、及び将軍共はすべて片付けた!」

「おとなしく投降すればよし!抵抗するものは皆殺しとする!」

上空から見え聞こえする百地の言葉と司令官の状況に、中央軍の魔族たちは戦意を失い全て投降した。
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