神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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第99話 敗軍の将

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レッドキャップを捕らえてから3週間たった。

今日はレッドキャップたち捕虜の処遇を決める日である。

魔法によって縛られたレッドキャップは、以前の居城であった咸陽の玉座の間へと連れてこられた。

「どれ、玉座でふんぞり返ったウサギでも見てやるか」

そんなことを考え、顔を上げたレッドキャップの正面にある玉座を見上げるが誰もおらず、その階段の下に、背もたれのない椅子を並べて二人の人物が座っており、二人を挟むように両陣営の幹部たちが並んでいる。

「そうか、ラビット自身は他の王と同列であるということか」
「だがなぜだ?ひとりはイワイだとして、あと二人のエルフの王たちがいないようだが?」

そう考える中、韓信が話しをきりだす。

「お久ぶりですね、レッドキャップ殿」
「私は今、イワイから名を変えて韓信となりました」

韓信は縛られたレッドキャップに一礼をする。

「そうか、こういう時はおめでとうとでも言えばよいのかのう?」

笑いながら答えるレッドキャップ。

「ありがとうございます」
「おかげで前世のことも思い出して、皆と当時のことを語り楽しく過ごしております」

韓信の言葉に、それは良かったなと答えるレッドキャップ。

ふと、レッドキャップは双方の陣営を眺める。

並ぶものは皆人の姿となっており、中には思い出せないが懐かしい顔も見受けられる。

(そうか、俺にも前世があるのだな…)

レッドキャップは心の中で呟くと、ピットに向き問いかける。

「ラビット王よ!」
「私は己の力でこの森、そして世界を統一しようと考えていた!」
「貴殿はどのようにして世界を統一するつもりか?」

レッドキャップの質問に、ピットはさらりと答える。

「私は世界統一なんてしませんよ?」

「それでは各王を従える『覇者』になるつもりか?」

「いえ、覇者になるつもりもありません」

レッドキャップにはピットが何をやりたいのかが全く分からなかった。

「では、なぜ王になどになった?」

レッドキャップの質問に、ピットは即答で答える。

「自分が楽しめる国造りですね」

楽しめる国?レッドキャップは思う。

「そうです!そうです!」
「みんなでワイワイやって、何もなかったところに道や家が出来て」
「住んでいる人たちが生活するためにいろんな施設を建てて」
「それでよその国と貿易をしてバンバンお金を稼いで」
「そのお金で国を大きくしたり、事情があって生活が大変な人を助けたりして」
「それで人が集まってきたらまた街を大きくして…」
「こういうのを想像するだけで楽しくなりませんか?」

ピットは子供のように熱く語ってくれた。

あっけにとられたレッドキャップに、今度はピットが質問する。

「それで…レッドキャップ殿は世界を統一した後はどうされるのですか?」

レッドキャップは思った。

自身は世界の王になることを目標として生きてきた。

ただ、そのあとは何も考えていなかった。

答えられずにいるレッドキャップに、ピットは質問した。

「レッドキャップ殿も一緒に私たちとそんな世界を作りませんか?」

俺も一緒にだと? 

レッドキャップは驚く。

自身はこの森を混乱に陥れた者で、彼らの多くの仲間たちを殺したりもしている。

そんな自分を仲間に誘うなど普通ありえない!

何も言えずに下を向くレッドキャップに、ピットは今一度聞いてみる。

「ではレッドキャップ殿は、今でも周りの者を傷つけてでも、その夢を実現したいと思っています?」

レッドキャップは少し考えて、素直に答えた。

「今でも世界の覇者になりたい気持ちはある」
「だがそれは、他人を踏みつけてまで手に入れたいものではなくなっている…」

この言葉にその場にいた皆は驚く。

あの、自分の生きたいように生き、欲しいものを手にするためであれば手段を択ばないレッドキャップの横暴な部分がない。

「何故だろうか…以前はどんなことがあっても成し遂げたかったことだったのに」
「今はなぜそこまでして成りたかったのかわからない」

レッドキャップの疑問に、孔明は説明する。

「レッドキャップ殿、それはあなた達がその姿になったことにより、前世の残留思念ようなものがそうさせているのです」
「あなたは前世で、皇帝の行列を見たとき『彼取って代わるべき也』と申しております」
「前世で持っていた強い思いは、現世に生まれ変わったとき、行動の原動力・または足枷になるようです」
「レッドキャップ殿の場合は、原動力である野望が潰えたため、改めて前世の残留思念を冷静に考えることができるようになったのでしょう」

なるほど、孔明らしい正確な分析だと皆が思う。

「そうか…いろいろ腑に落ちなかったことが、ここにきてはっきりした」

(ピットとも話すことができた。もう、思い残すことはない)

「しかし、俺はお前たちと同じ夢を見るつもりはない!」
「俺には俺の、男の矜持がある!」
「ピット王よ、お前の夢が現実になるところをあの世から見ておるぞ!」

やはりか…孔明以下、レッドキャップを知るもの達は皆そう思った。

そんな空気の中、ピットはあきれた顔でレッドキャップに投げかける。
「レッドキャップ殿はそうやって全て終わらせようとしているけど、それって自分でやった後始末を残った人たちに押し付けているだけじゃないのですか?」

「なんだと!」

レッドキャップは怒り出す。

「じゃあ、これから後始末のために残される人たちの言葉を聞いてください」

そう言ってピットは外で待機している者たちの入室を許可する。
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