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第90話 魔物たちの矜持
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後方に進むにつれ、旗本たちは恐怖を感じた。
そこでは規格外の何かが大暴れをし、爆発や土煙、悲鳴などがいり混じって聞こえてくる。
その現場に到着した時、皆は目を疑った。
人が空を飛び回り、爆薬や手裏剣を投げ、下では風魔法の真空斬りを行い、魔物たちが無抵抗に倒れていく姿を。
それでも魔物たちは誰一人逃げずに、その異形の者たちと戦っている。
従弟熊たちはその中に突撃し、ゴブリンたちに指示を出す。
「お前たちは100歩下がり陣を構築せよ!」
「その間俺たちがこの場を凌ぐ!」
戦っていたゴブリン・コボルト・オークたちは急いで下がり、盾を並べて、道いっぱいに壁を作った。
たとえ相手が飛んでくるとしても、それしか手はないからだ。
5分ほどで陣を構築し、前方に備えたときにはすでに戦闘は終了していた。
「まさか…みんなやられたのか?」
土煙が過ぎると、そこには黒づくめの男たちだけが立っており、地面には討ち取られたであろう旗本たちが転がっている。
黒づくめの男たちはゆっくりと近づいてくるが、魔物たちは誰一人として逃げ出そうとしない。
その姿を見ていた1人の男が名乗りを上げる。
「我が名は百地丹波、伊賀衆の頭領である」
「お前たちはこれほどの戦力差があると分かっていてなぜ逃げぬ?」
「我らは逃げるものは追うなと王から仰せつかっておる」
「今からでも逃げるがよい、我らはレッドキャップのみを倒せばよいのだ!」
百地の説得にも誰一人動かない魔物たち。
やがて一人のゴブリンが百地に返事をする。
「あんたがこの化け物たちの親分か?」
「俺たちは死んでもここを動かねぇ!」
では、と進もうとする部下を百地は制す。
「一体なぜそこまで義理立てをする?」
「あの熊はお前たちの森で虐殺をしたような輩であるぞ!」
その言葉に、魔物たちは激しく抗議する。
「レッドキャップ様を悪く言うな!」
「あの方は俺たち下級の魔物たちを同じ仲間として引き入れてくれたんだ!」
なんだと?と思いつつも黙って聞く百地にゴブリンは話を続ける。
「俺はなぁ、初めてできた子が女の子でよぉ」
「とてもかわいくてしょうがなかった」
「だがよぉ、そんな可愛い娘がエルフの奴らに射殺されてしまったんだ」
「ただ自分たちの領域に入ったからって理由でだぞ?」
「1歳の娘にそんことがわかるわけねえだろ!」
「あいつら俺たちが何言ったって聞いてもくれやしねぇ」
「ただ、下級魔物がこの森で生きていけるだけでもありがたいと思えとか」
「俺たちを感情のねぇ生き物かなにかと思ってやがるんだよ!」
涙を流しながらゴブリンは尚も訴え続ける。
「そんな俺たちの話をレッドキャップ様は涙を流して聞いてくれて、娘殺しに加担したエルフたちを倒してくれたんだ」
「その時俺は決めたんだ」
「たとえ全てが敵になっても、俺だけはこの方を信じて戦うと!」
その言葉に、守りを固める魔物たちは雄たけびを上げる。
「どうせ俺らじゃお前たちに勝てないことは分かっている!」
「だがなぁ、俺ら一人も降伏はしないからな!」
そう言い終えると、守りを固めた魔物たち。
百地は忍者衆に指示を出す。
「5人は奴らの後方に回り、援軍として行かせないようにしろ」
「残りはレッドキャップを追え」
ハッ!の声と共に忍者衆は指示のとおり動き出す。
「ここにいる魔族に告げる!」
「お前たちの勇気を讃え、私はここでお前らを監視する!」
「もし動けば貴様らを皆殺しにする!」
「しかし動かなければ私はここに残り貴様らの監視を続ける!」
そう告げると、百地は地面に腰を下ろし胡坐をかいて目を瞑る。
そうだ、思い出した。
前世で俺は同じような光景を見て、殺してきていたのだ。
まさか転生してまで、それを繰り返したくはないものだ。
今の王なら、私の行いも分かって下さるだろう。
百地はふっと笑って瞑想を続ける。
そこでは規格外の何かが大暴れをし、爆発や土煙、悲鳴などがいり混じって聞こえてくる。
その現場に到着した時、皆は目を疑った。
人が空を飛び回り、爆薬や手裏剣を投げ、下では風魔法の真空斬りを行い、魔物たちが無抵抗に倒れていく姿を。
それでも魔物たちは誰一人逃げずに、その異形の者たちと戦っている。
従弟熊たちはその中に突撃し、ゴブリンたちに指示を出す。
「お前たちは100歩下がり陣を構築せよ!」
「その間俺たちがこの場を凌ぐ!」
戦っていたゴブリン・コボルト・オークたちは急いで下がり、盾を並べて、道いっぱいに壁を作った。
たとえ相手が飛んでくるとしても、それしか手はないからだ。
5分ほどで陣を構築し、前方に備えたときにはすでに戦闘は終了していた。
「まさか…みんなやられたのか?」
土煙が過ぎると、そこには黒づくめの男たちだけが立っており、地面には討ち取られたであろう旗本たちが転がっている。
黒づくめの男たちはゆっくりと近づいてくるが、魔物たちは誰一人として逃げ出そうとしない。
その姿を見ていた1人の男が名乗りを上げる。
「我が名は百地丹波、伊賀衆の頭領である」
「お前たちはこれほどの戦力差があると分かっていてなぜ逃げぬ?」
「我らは逃げるものは追うなと王から仰せつかっておる」
「今からでも逃げるがよい、我らはレッドキャップのみを倒せばよいのだ!」
百地の説得にも誰一人動かない魔物たち。
やがて一人のゴブリンが百地に返事をする。
「あんたがこの化け物たちの親分か?」
「俺たちは死んでもここを動かねぇ!」
では、と進もうとする部下を百地は制す。
「一体なぜそこまで義理立てをする?」
「あの熊はお前たちの森で虐殺をしたような輩であるぞ!」
その言葉に、魔物たちは激しく抗議する。
「レッドキャップ様を悪く言うな!」
「あの方は俺たち下級の魔物たちを同じ仲間として引き入れてくれたんだ!」
なんだと?と思いつつも黙って聞く百地にゴブリンは話を続ける。
「俺はなぁ、初めてできた子が女の子でよぉ」
「とてもかわいくてしょうがなかった」
「だがよぉ、そんな可愛い娘がエルフの奴らに射殺されてしまったんだ」
「ただ自分たちの領域に入ったからって理由でだぞ?」
「1歳の娘にそんことがわかるわけねえだろ!」
「あいつら俺たちが何言ったって聞いてもくれやしねぇ」
「ただ、下級魔物がこの森で生きていけるだけでもありがたいと思えとか」
「俺たちを感情のねぇ生き物かなにかと思ってやがるんだよ!」
涙を流しながらゴブリンは尚も訴え続ける。
「そんな俺たちの話をレッドキャップ様は涙を流して聞いてくれて、娘殺しに加担したエルフたちを倒してくれたんだ」
「その時俺は決めたんだ」
「たとえ全てが敵になっても、俺だけはこの方を信じて戦うと!」
その言葉に、守りを固める魔物たちは雄たけびを上げる。
「どうせ俺らじゃお前たちに勝てないことは分かっている!」
「だがなぁ、俺ら一人も降伏はしないからな!」
そう言い終えると、守りを固めた魔物たち。
百地は忍者衆に指示を出す。
「5人は奴らの後方に回り、援軍として行かせないようにしろ」
「残りはレッドキャップを追え」
ハッ!の声と共に忍者衆は指示のとおり動き出す。
「ここにいる魔族に告げる!」
「お前たちの勇気を讃え、私はここでお前らを監視する!」
「もし動けば貴様らを皆殺しにする!」
「しかし動かなければ私はここに残り貴様らの監視を続ける!」
そう告げると、百地は地面に腰を下ろし胡坐をかいて目を瞑る。
そうだ、思い出した。
前世で俺は同じような光景を見て、殺してきていたのだ。
まさか転生してまで、それを繰り返したくはないものだ。
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百地はふっと笑って瞑想を続ける。
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