86 / 317
第85話 李左車の計略
しおりを挟む
時は少し戻り、荊州城攻略前の昼。
宋軍兵団はけもの道を2列に歩いて進軍した。
周りは鬱蒼とした森で、そこを抜けると道の両側を崖が切り立ったところに出る。
どちらにしてもここを進むしかない宋軍は、同じく2列でここを抜ける。
先頭の部隊が渓谷を抜けようとしたところで、突然崖から岩が落ちてくる。
中央にあった補給用の荷車と弓兵たちが、次々と下敷きになった。
落盤が終わると、次は矢の雨と炎の魔法が降り注ぐ。
宋軍は無抵抗のまま次々と倒れていく。
「ハッハッハッ!趙の時に出来なかった策が、まさかこの世界でやれるとはのぅ」
高笑いをする韓信の軍師・李左車。
「おのれ!イワイの奴らに計られた!」
豹の姿である百将軍が崖を駆け上ろうとすると、正面の武将に呼び止められる。
「ほう!宋国の武将は正面に敵が現れると崖の上に逃げるのが常識らしいな!」
「なんだと!」
正面を向くと、がっちりとした狐の大男がクイの上に跨っていた。
「我が名は韓信様の家臣、樊噲(はんかい)である!」
「宋軍指揮官の仕事が逃げる事でないのであれば、この俺と戦え!」
「なにを!森に棲んでる狐風情の分際で!」
「この官軍の百勝将が相手をしてやるからありがたいと思え!」
樊噲の安い挑発に百勝将は受けて立った。
後方では天目将が混乱した部隊の収拾に躍起する。
そんな中、後ろから顔に入れ墨がある狐が斧槍を持って近づいてきた。
「ほう、この部隊は豹の将軍が束ねているのか?」
天目将は振り返り、顔を見てギョッとする。
「誰だ、貴様!」
「俺の名か?」
「俺の名は九江王・英布!」
「皆には顔の入れ墨にちなんで黥布(げいふ)と呼ばれてる」
さてと、と黥布は首を鳴らしながら天目将に近づく。
「抵抗してもいいぞ?どうせ捕まえるから」
この言葉に天目将は怒りを露にする。
「ほざけ!この罪人(顔の入れ墨は罪人を意味する)が!」
天目将は槍を持ち黥布に突撃を行った。
奇襲後1時間も経つと戦場は大分静かになる。
下に降りた李左車のもとに、樊噲と黥布は縄で縛った将軍を連れてきた。
「お二人ともお見事ですな!」
その言葉に二人は見合って笑いだす。
「こう言っちゃなんだが、あまり大したことなかったな!」
「やはり人型まで進化しないと本領発揮できないようだ!」
なるほど、なるほどと、李左車は頷く。
「では樊噲殿は、連れてきた1000の兵と軍事物資をもって淮南の街へ進んでください」
「黥布殿と私は、残りの兵500とこの二人と捕虜を連れて、このまま荊州城へと向かいます」
李左車は指示を出すと、500の兵を連れてそのまま荊州城へと向かった。
宋軍兵団はけもの道を2列に歩いて進軍した。
周りは鬱蒼とした森で、そこを抜けると道の両側を崖が切り立ったところに出る。
どちらにしてもここを進むしかない宋軍は、同じく2列でここを抜ける。
先頭の部隊が渓谷を抜けようとしたところで、突然崖から岩が落ちてくる。
中央にあった補給用の荷車と弓兵たちが、次々と下敷きになった。
落盤が終わると、次は矢の雨と炎の魔法が降り注ぐ。
宋軍は無抵抗のまま次々と倒れていく。
「ハッハッハッ!趙の時に出来なかった策が、まさかこの世界でやれるとはのぅ」
高笑いをする韓信の軍師・李左車。
「おのれ!イワイの奴らに計られた!」
豹の姿である百将軍が崖を駆け上ろうとすると、正面の武将に呼び止められる。
「ほう!宋国の武将は正面に敵が現れると崖の上に逃げるのが常識らしいな!」
「なんだと!」
正面を向くと、がっちりとした狐の大男がクイの上に跨っていた。
「我が名は韓信様の家臣、樊噲(はんかい)である!」
「宋軍指揮官の仕事が逃げる事でないのであれば、この俺と戦え!」
「なにを!森に棲んでる狐風情の分際で!」
「この官軍の百勝将が相手をしてやるからありがたいと思え!」
樊噲の安い挑発に百勝将は受けて立った。
後方では天目将が混乱した部隊の収拾に躍起する。
そんな中、後ろから顔に入れ墨がある狐が斧槍を持って近づいてきた。
「ほう、この部隊は豹の将軍が束ねているのか?」
天目将は振り返り、顔を見てギョッとする。
「誰だ、貴様!」
「俺の名か?」
「俺の名は九江王・英布!」
「皆には顔の入れ墨にちなんで黥布(げいふ)と呼ばれてる」
さてと、と黥布は首を鳴らしながら天目将に近づく。
「抵抗してもいいぞ?どうせ捕まえるから」
この言葉に天目将は怒りを露にする。
「ほざけ!この罪人(顔の入れ墨は罪人を意味する)が!」
天目将は槍を持ち黥布に突撃を行った。
奇襲後1時間も経つと戦場は大分静かになる。
下に降りた李左車のもとに、樊噲と黥布は縄で縛った将軍を連れてきた。
「お二人ともお見事ですな!」
その言葉に二人は見合って笑いだす。
「こう言っちゃなんだが、あまり大したことなかったな!」
「やはり人型まで進化しないと本領発揮できないようだ!」
なるほど、なるほどと、李左車は頷く。
「では樊噲殿は、連れてきた1000の兵と軍事物資をもって淮南の街へ進んでください」
「黥布殿と私は、残りの兵500とこの二人と捕虜を連れて、このまま荊州城へと向かいます」
李左車は指示を出すと、500の兵を連れてそのまま荊州城へと向かった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖獣達に愛された子
颯希
ファンタジー
ある日、漆黒の森の前に子供が捨てられた。
普通の森ならばその子供は死ぬがその森は普通ではなかった。その森は.....
捨て子の生き様を描いています!!
興味を持った人はぜひ読んで見て下さい!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる