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第81話 魏の思惑
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城内の会議室の一室に、ピット・孔明・陳平・林冲・樊瑞の6名と射陽侯が各自席に座る。
会議に入る前にと、ピットから射陽侯へ進化の提案を行う。
進化を受け入れた射陽侯は光に包まれ、大男へと変化した。
「私の名前は項伯、レッドキャップである大王の叔父にあたります」
「この森の戦争を1日でも早く終結させるため協力させて頂きます」
続けて項伯はここまでのいきさつを話す。
「先ほど話しました通り、私はレッドキャップの叔父にあたる人物です」
「本来であれば、彼の手助けを行う立場であるにも関わらず、反目の形となりました」
「彼自身の絵図で此度の侵攻を行っているのであれば私も協力していたでしょう」
「しかし、魔族共の手先となってとあれば話が違います」
「奴らは、大王がこの森を治めた後に、亜父や我ら古参の熊武将を排除し、大王を御輿に傀儡の政権を建てる算段なのです」
「その様なことが可能なのですか?」
ピットの言葉に、項伯は残念そうに頷く。
「はい、すでに私たち熊武将や亜父は、大王からの信用を無くしております」
「此度の韓信討伐時も、亜父は魔族共が咸陽でクーデターを起こさぬよう、我々熊武将と兵を残して行っております」
「亜父殿は自分がうまくやれば利用されることはないと申しておりましたが」
「状況は悪く、このままでは我々が何らかの理由で排除されるのも時間の問題となってきたのです」
レッドキャップ内の厳しい現状を悲しそうに話す項伯。
「鴻門之会の時に陳平殿と話をした際、ピット王や丞相の孔明殿に相談すれば、よい策があるかもしれませんと聞き藁にもすがる思いで、此度は協力した次第です」
孔明は項伯に質問する。
「項伯殿はどの国が後ろで糸を引いているのかご存じですか?」
「いえ、わかりません」
「亜父と大王は分かっていると思うのですが、我ら古参の熊武将たちは誰も知らないと思います」
ふむ、陳平殿でも分からなかったのはそのためかと納得する。
「この度の協力者は魏のソウソウであります」
「なんと!」
ピット以外の者たちはみな驚く。
「魏には智謀の士が多く、私が覚えているだけでもかなりの人数がおります」
「そして、断言はできませんが、この策を弄している中心人物は『賈詡(かく)』ではないかと推測します」
「誰がやったのかまでわかるのですか?」
驚く皆を他所に孔明は話を続ける。
「あくまで推測です」
「先にも話した通り、魏には多くの智謀の士がおりますので」
「ただ、亜父の智謀を知りながら、ここまで策をうまく進めることができる」
「その様なことができて、真っ先に思い浮かぶのが賈詡と言うだけです」
「して、その賈詡という男はどれ程のものですか?」
陳平が尋ねると、孔明は笑って答える。
「陳平殿が魏にもう一人いると思っていただければわかり易いでしょうか?」
なるほど、とみんなは納得する。
「さて、項伯からの情報で、私の策はある程度決まりました」
「せっかくですので、私たちで魏がまいた種を回収させて頂きます」
皆が一斉に孔明の小声の打ち合わせに耳を傾ける。
「なるほど、その方法であればうまくいくでしょう」
陳平をはじめ、皆がその策に納得する。
「では、項伯のコボルト斥候に北の砦に向かってもらいましょう」
「林冲殿と樊瑞殿は官兵衛殿と合流し、今打合せしたことを伝えてください」
「残りの者たちで策の準備を行います」
ここまでを話し終えると、項伯がピットに頭を下げてお願いをする。
「ピット王、このようなことをお願いできる立場ではござりませぬが」
「何とか甥の大王の助命をお願いできませぬか?」
この言葉に、孔明は顔を曇らせる。
「項伯殿、いくら貴殿の頼みとあっても、それは難しいかもしれません」
「彼は人の下につくような男ではありませんし」
「万一生け捕りに出来ても、彼は助命など受け付けないでしょう」
孔明の言葉にも項伯は食い下がる。
「説得は私が何とか致します」
「出来る限り生きて捕らえてほしいのです」
「それでだめだったら諦めます」
項伯は涙を流しながら、再度ピットに願い出る。
「わかりました、ご期待に沿えるかわかりませんが、出来る限りの事は致します」
「孔明、大変だとは思うけど何とか生け捕りでお願いしたい」
「畏まりました」
孔明は一礼し、項伯と共に持ち場の指示の為部屋を出ていった。
これからこの森の戦いは佳境へと加速していく。
会議に入る前にと、ピットから射陽侯へ進化の提案を行う。
進化を受け入れた射陽侯は光に包まれ、大男へと変化した。
「私の名前は項伯、レッドキャップである大王の叔父にあたります」
「この森の戦争を1日でも早く終結させるため協力させて頂きます」
続けて項伯はここまでのいきさつを話す。
「先ほど話しました通り、私はレッドキャップの叔父にあたる人物です」
「本来であれば、彼の手助けを行う立場であるにも関わらず、反目の形となりました」
「彼自身の絵図で此度の侵攻を行っているのであれば私も協力していたでしょう」
「しかし、魔族共の手先となってとあれば話が違います」
「奴らは、大王がこの森を治めた後に、亜父や我ら古参の熊武将を排除し、大王を御輿に傀儡の政権を建てる算段なのです」
「その様なことが可能なのですか?」
ピットの言葉に、項伯は残念そうに頷く。
「はい、すでに私たち熊武将や亜父は、大王からの信用を無くしております」
「此度の韓信討伐時も、亜父は魔族共が咸陽でクーデターを起こさぬよう、我々熊武将と兵を残して行っております」
「亜父殿は自分がうまくやれば利用されることはないと申しておりましたが」
「状況は悪く、このままでは我々が何らかの理由で排除されるのも時間の問題となってきたのです」
レッドキャップ内の厳しい現状を悲しそうに話す項伯。
「鴻門之会の時に陳平殿と話をした際、ピット王や丞相の孔明殿に相談すれば、よい策があるかもしれませんと聞き藁にもすがる思いで、此度は協力した次第です」
孔明は項伯に質問する。
「項伯殿はどの国が後ろで糸を引いているのかご存じですか?」
「いえ、わかりません」
「亜父と大王は分かっていると思うのですが、我ら古参の熊武将たちは誰も知らないと思います」
ふむ、陳平殿でも分からなかったのはそのためかと納得する。
「この度の協力者は魏のソウソウであります」
「なんと!」
ピット以外の者たちはみな驚く。
「魏には智謀の士が多く、私が覚えているだけでもかなりの人数がおります」
「そして、断言はできませんが、この策を弄している中心人物は『賈詡(かく)』ではないかと推測します」
「誰がやったのかまでわかるのですか?」
驚く皆を他所に孔明は話を続ける。
「あくまで推測です」
「先にも話した通り、魏には多くの智謀の士がおりますので」
「ただ、亜父の智謀を知りながら、ここまで策をうまく進めることができる」
「その様なことができて、真っ先に思い浮かぶのが賈詡と言うだけです」
「して、その賈詡という男はどれ程のものですか?」
陳平が尋ねると、孔明は笑って答える。
「陳平殿が魏にもう一人いると思っていただければわかり易いでしょうか?」
なるほど、とみんなは納得する。
「さて、項伯からの情報で、私の策はある程度決まりました」
「せっかくですので、私たちで魏がまいた種を回収させて頂きます」
皆が一斉に孔明の小声の打ち合わせに耳を傾ける。
「なるほど、その方法であればうまくいくでしょう」
陳平をはじめ、皆がその策に納得する。
「では、項伯のコボルト斥候に北の砦に向かってもらいましょう」
「林冲殿と樊瑞殿は官兵衛殿と合流し、今打合せしたことを伝えてください」
「残りの者たちで策の準備を行います」
ここまでを話し終えると、項伯がピットに頭を下げてお願いをする。
「ピット王、このようなことをお願いできる立場ではござりませぬが」
「何とか甥の大王の助命をお願いできませぬか?」
この言葉に、孔明は顔を曇らせる。
「項伯殿、いくら貴殿の頼みとあっても、それは難しいかもしれません」
「彼は人の下につくような男ではありませんし」
「万一生け捕りに出来ても、彼は助命など受け付けないでしょう」
孔明の言葉にも項伯は食い下がる。
「説得は私が何とか致します」
「出来る限り生きて捕らえてほしいのです」
「それでだめだったら諦めます」
項伯は涙を流しながら、再度ピットに願い出る。
「わかりました、ご期待に沿えるかわかりませんが、出来る限りの事は致します」
「孔明、大変だとは思うけど何とか生け捕りでお願いしたい」
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