神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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第80話 星条旗のエース

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ピットたちが咸陽に入場したのは翌日の昼過ぎであった。

門の前には、大戦果を挙げた義経たちと、射陽侯・陳平が出迎えた。

「皆様、咸陽の攻略、誠にお疲れさまでした」

「射陽侯殿、ご協力感謝致します」

ピットは射陽侯に礼を取る。

「いえいえ、私など佐藤殿達と一緒に魔族将軍を捕らえたくらいしかやっておりません」

謙遜する射陽侯に後程と話し、義経を労う。

「義経、あなた達の大活躍により咸陽は味方の死者もなく無事落とすことができました」

ピット王が礼を取り功績を褒めると、こちらも慌てて礼を取り直す義経。

「有難きお言葉!」
「敵の兵力が若干多ございましたが、無事王の到着までに陥落できました」

その件について孔明が謝罪する。

「この度は私の認識の甘さから、義経殿達に大変なご足労をかけてしまいました」

ワイバーンの増援や、亜父がこちらの目論見よりも多くの兵を残したことを読み切れなかったことを義経に詫びた。

「その件に関しては、私の報告書が甘かったからで、孔明殿の責任ではございません」

あわてる陳平からの謝罪に、義経は笑いながら話す。

「いや、大した誤差じゃありませんでしたよ?」
「それにワイバーン達の助力もあって、結構派手に暴れられましたので!」

義経は得意げに語った。

そう言えばと、義経が続ける。

「どうやらワイバーン達は、家族を人質にこの戦争へ駆り出されていたようです」

「人質?」

「ワイバーンの者たちも待機しておりますので会ってみてください」

ピットたちはここで重要な出会いを果たすことになる。

城内の中央付近にある広場にワイバーン達は集まっていた。

「ワイバーンの皆さま、この度は城攻めのご協力を頂きましてありがとうございます」

孔明は一礼すると、ワイバーンの隊長はこれまでのいきさつを話し始めた。

「俺たちはこの山の上にあるワイバーンの集落に住んでいたのだが」
「ある日、俺たちが留守の間に魔族の奴らが大勢でやってきやがって」
「俺たちの家族を人質にとって無理やり俺たちを支配下に置いたのさ」

腹立だしげに話すワイバーンを横目に、義経がピットに相談を持ち掛ける。

「王様、勝手なお願いですが、ワイバーン達の人質解放の助力を俺たち源氏勢でやっても宜しいですか?」
「どうやら家族は、近くのどこかに監禁されているみたいなのです」

義経の提案に、孔明がピットに助言する。

「私も義経殿の意見に賛成です」
「この咸陽が落ちましたので、戦力的には義経殿をそちらに回すことが可能です」

孔明の助言を聞き、ピットは頷く。

「わかりました」
「これよりワイバーン殿の人質解放の援軍を義経に命じます」

この命令に義経は喜んで応える。

「承知しました」
「必ずワイバーン殿の集落の人質を解放して参ります!」

すっと立ち上がり、ワイバーンに乗り込もうとする義経をピットが止める。

「義経、ちょっと待って!」
「その前にワイバーン殿」
「あなた転生者のようですよ?」

「転生者?そう言えば戦闘時に弁慶殿もそんなこと言ってまいしたね」

話が見えないワイバーンに孔明が簡単に説明する。

「なるほど」
「つまりピット王を信頼すると俺たちは次のフェイズに行くってことだな?」

「そういう事です」

「OK!頼むよ王様」

ワイバーンの体は光だし、飛行服を着た白人の男性が現れた。

「Nice to meet you」
「私の名前はリチャード・アイラ・ボング、元アメリカ陸軍のパイロットだった」
「みんなにはディックと呼ばれている」
「王様、どうかこれからもよろしく頼むよ」

「こちらこそ宜しく、ディックさん」

ディックが差し出す手をピットは掴み、しっかりと握手した。

そう言えばとディックは話す。

「前世を思い出して分かったのだが」
「俺の仲のいいドラゴンが、どうも前世のアメリカ高官のような気がするんだよ」
「こっちの件が片付いたら確認してみるよ!」

そう言い残すと、ワイバーンの姿に戻ったディックは、義経たちと乗せて空へ舞い上がった。

「これは良いもの達と仲良くなりましたな」

孔明は満足そうに話す。

そして、神である俺は彼の補足をする。
リチャード・ボングといえば第2次世界大戦アメリカ空軍の撃墜王である。
P-38という戦闘機に自分の彼女さんの写真をプリントした愛機は有名で、自分も過去にプラモを作ったことを思い出した。
そして、ドラゴンの国には、もしかしたらアメリカ出身の転生者がいるかもしれない。
ディックを通じてドラゴンの国と良い関係を持てれば、今後の展開がかなり変わってくるかもしれない。

「さて、では城に入って今後の打ち合わせを行いましょう」

孔明の言葉で、全員は城内へと移動した。
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