神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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第56話 亜父の油断

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機動力の高い精鋭部隊で編成した10,000の兵は、2日で北の砦付近に到着する。

この日は雨で視界があまりよくない。

「大王、先ずは1キロほど川下にあります橋を渡り、敵陣の側面を突きましょう」

「さすがは亜父!承知した!」

大王と亜父は橋に到着するが、ものの見事に橋は壊されていた。

「おのれ股夫!小癪な!」

怒る大王を横目に、靄のかかった対岸を見た亜父は旗の数を見て進言する。

「どうやら敵は全軍を投入しておるようです」
「ここは荊州城に使いを出し、挟み撃ちを行いましょう」

亜父はそう話すと、魔族の兵に書簡を書いて渡す。

「これを荊州城におられる『コエンシャク』将軍に渡すのだ」

魔族の兵は書簡を持ち、そのまま森に姿を消した。

「これでイワイの命運は尽きました」
「我々は砦に戻って時期を待ちましょう」

亜父は勝利を確信し北の砦へと入場する。

勝利を確信し高揚する亜父はこの罠に気づけなかった。

川の水量が減っていることを。

対岸の土地がこちらより高くなっていることを。

無数の韓信の旗の元に誰の兵がいるか不明なことを…。

その夜、地響きのような音で、北の砦の兵たちが目を覚ます。

次の瞬間、砦を囲む門全てから水が入り込む。

砦内に入りきれなかった魔族兵や魔物たちは、次々と下流へと流されていった。

やがて、洪水と化した水はそのまま砦周りに留まり、砦周辺は完全に水没してしまった。

「何という事だ!」
「股夫の奴、姑息な手を使いおって!」

怒りと焦りがにじむレッドキャップの隣で、亜父は自分の失態に青ざめる。

(しまった、私が勝てると油断してしまったばかりに、このような手に引っかかってしまった!)
(しかし、いったいどうやって上流を堰き止めたのだ?)
(イワイ領にはそれが出来る人間はいないと思っていたのだが…)
(まさか…ウサギ共の仕業か!)
(ならば狙いはここではなく…)

亜父はここにきて、すべての答えが出揃ったのだが、この水没した砦からは当分出る事は出来ない。

亜父は天を仰いで思う。

我らの命運はここまでかもしれぬ、と。
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