神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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第45話 進化のリスク

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「山岳地帯の一部にありますこの森は丸い形をしており、北から大きな川が流れてきております」
「中央で川が二つに分かれて、それぞれ北東・北西・南と陸地となり、それぞれの勢力が治めているわけです」
「また、森の外側を他の国が治め、北東に『秦国』・北西に『宋国』・南に『亜人連合国』がございます」
「そもそもこの世界では、魔族がほとんどの地を治める状況であり、何もなかったこの森だけが平和だったのです」
「しかし、何者かがレッドキャップを進化させたことにより、状況は一変しました」

官兵衛は頷く。

「はい、その部分に関してはエルフの女王も話しておりましたな」

ピットたちは、前回エルフとの会談で、魔族の森への進行状況を聞いていた。

女王の話によると、レッドキャップ兵団のほとんどが魔族兵であり、協力させられているゴブリンやコボルトたちはもちろんのこと、更にはレッドキャップや亜父以外のレッドキャップ直属の部下までもが格下の扱いを受けているらしい。

「そんな状況では、決してレッドキャップ勢と魔族の間もうまくいっておりますまい」

事実、鴻門の会終了後のピット一行暗殺時も、亜父は魔族に頼らず自国の兵力で事を成そうとしている。

そして孔明は、先日陳平と話をしたことで自分の中で不明だった点がはっきりしたようだった。

「次の進化…前世の姿と名前を取り戻すには」
「魔族と契約し、隷属化しないといけないようです」

官兵衛は驚く。

「何という事じゃ…例え姿と名前を取り戻しても、魔族の手下にならねばならんとはのぉ」

この言葉にピットが一番反応した。

「転生者を進化させるには隷属化が必要ということは、私の部下もみな隷属化しているのだろうか?」

「その事なのですが…」

孔明はあくまで推測と銘打って話し出す。

「ピット様の進化は、貴方を信じることで進化できるようでございます」
「また、この能力では相手を縛る事は出来ないようです」

「どういう事ですか?」

ピットの問いに孔明は顔を曇らせながら答える。

「結論から申しますと」
「ピット様が進化させたものが、ピット様を殺すことも可能という事です」

「それはとても危険ではありませんか!」

官兵衛の問いに孔明も同調する。

「はい、これは諸刃の剣です」
「いくら強いものを進化させてもその者に野心があれば、いつでもピット様を亡き者に出来るというわけです」
「または人質を取られ、仕方なくの事態に陥るなど王の命を狙う方法はいくらでもあります」

その場で3人とも沈黙する。

やがて孔明がピットに問う。

「今後は進化を行うのをやめますか?」

ピットは首を横に振る。
「まさか!」
「これは世界を変えるために、神様がくれた能力と信じて使っていきます」

孔明と官兵衛は大きく頷く。

「王はきっとそうお答えになると信じておりました」

「これからも王に害が無きよう、我らがお守りいたしますのでご安心ください」

孔明はここで話を宋国に切り替える。

「未確認ではありますが、宋国も秦国も共に人型まで進化している者もおるようです」

「つまり、その者たちは魔族の野望に協力すると」

「そういうことになります」

官兵衛と孔明は考え込む中、ピットは気付く。

「…それじゃあ、レッドキャップ勢はまだ隷属化してないってことだよね?」

ピットの言葉に孔明は満足そうに答える。

「王よ、よくお気づきになりました」
「レッドキャップは誰の手先にもなる気はないため、忠誠が必要な進化は断ったのでしょう」
「亜父や部下たちも…」

孔明の言葉に、ピットはそれならばと聞いてみる。

「ならば…レッドキャップは仲間にできないだろうか?」

その質問に、孔明は首を振る。

「残念ながら、その可能性はありません」
「彼は誇り高い男です。誰かの下で働くことはないでしょう」
「万が一捕虜にできても、彼は死を望むでしょう」

そうか、とピットは残念そうに返事をする。

「話を戻しますが」
「実は宋国・秦国ともに国内のあちこちで反乱がおきております」
「宋国はこの反乱を鎮圧するのに手を焼いており、こちらへ回す兵力はないと思われておりました」
「しかし今回、理由はわかりませんが、森に隣接しております荊州城に兵が集結しているとの噂があります」
「イワイもレッドキャップと宋国に挟み撃ちをされてはまずいと考え、レッドキャップの共闘要請も表面上受けざるを得なかったと今では考えられます」

「なるほど」

「今回イワイが孔明殿の領土近くに兵を集結させたのは、そういう意図があったのですな」

官兵衛は納得する。

「では、宋国とレッドキャップは繋がっておるのでしょうか?」

官兵衛の問いに孔明は答える。

「まったく繋がっていないとは考えられませんが、それほど協力し合っているわけではないようです」
「魔族間でも勢力争いがあるようですし、今回は何らかの利害が一致しイワイを牽制したのかもしれません」
「イワイの丞相も優秀ですし、この程度のことはわかっているでしょう」
「ただ情報が少ないため、宋国がどう動いてくるかまでは私にも読めません」

「それと…」

孔明はもう一つの理由を話す。

「イワイは王のことをまだ信用していないからです」

「なるほど、顔も知らない相手と命運を共にする訳にはいきませぬからな」

「わかった孔明、私が直接イワイに会いに行くよ」

2人の言葉に孔明は首を振る。

「残念ながら、彼は会ってくれますまい」
「彼のことを知る私ですら会えませんでしたので」

孔明はイワイについて2人に説明する。
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