44 / 317
第43話 鶏鳴狗盗
しおりを挟む
咸陽を出て1時間。獣化したピットたちは道を一気に駆けていく。
太兵衛は槍を背負い、やや蛇行しながらもスピードを落とさずに飛んでいる。
鳥車で数日掛けてきた道のりも、この姿であれば1日ちょっとあれば着く。
森を駆け抜けると、幅100m程の川を渡る橋があり、その先に砦のある関所へ到着する。
時刻は午前3時、村は寝静まり砦の門は閉じたままである。
「追撃隊の心配はないと思われますが、一刻も早く突破しなければ、亜父の手の者が門の封鎖を行うやもしれませぬ」
官兵衛は告げるが、どんな策を用いても時刻を進ませる事は出来ない。
「あの、私で宜しければ門を開けてみましょうか?」
射陽侯が付けてくれた男が告げる。
「おぉ、あの門を開けることができるのか?」
「はい、砦の兵たちは鶏の声で朝の業務に入ります」
「私が鶏の鳴き声をまねて、他の鶏たちを起こします」
そう言い終えると男は鶏の鳴き真似を始める。
「コケコッコー!」
その鳴き声を聞き、他の鶏たちも一斉に鳴きだす。
「「コケコッコー」」
暫くすると門番の部屋に明かりがともる。
官兵衛はすぐさま門番に割符を渡し、無事門は開かれる。
男はすぐに射陽侯に報告すると、来た道を戻って行った。
こうしてピットたちは無事自国へ戻ることができた。
「人にはいろいろな特技があるものじゃな」
「うむ、普段はつまらぬと思っている芸でも、こんな形で役に立つとはな」
太兵衛と又兵衛は感心して話す。
「我々の街が見えてきましたぞ!」
ピットたちは全員、無事国に戻ることができた。
明け方、コボルト斥候が砦に到着した。
「亜父様の使いで来た」
「誰かこの門を通ったか?」
「はい、2時間ほど前にウサギと虫たちが割符を見せて出ていきました」
「割符?」
「はい、国発行の割符だったので間違いございません」
「なぜそんなに早く通した?」
「朝を告げる鶏が鳴いたからです」
「そうか…ご苦労だった」
門を抜けたならもう追いつけないな、とコボルト斥候は帰って行った。
間もなく、コボルト斥候が来た道を戻っていると、陳平率いる追撃隊と遭遇した。
「追撃隊の方々、残念ながらウサギ一行は国外に出てしまっております」
「そうか…斥候隊の方々、ご苦労であった」
そうあいさつを終えると、亜父報告の為斥候隊は急いで帰途した。
「我らも戻るぞ!」
陳平も部隊を引き返し帰路へと着く。
そうか、無事脱出できたか。あとはこちらで準備してお待ちしております…
陳平は次に会える日を楽しみにして待つ。
斥候隊の報告を聞いた亜父は、そうかと告げ斥候隊を下がらせる。
天を見つめ、亜父は呟く。
「ああ、我らはとんだ獅子を野に放ってしまった…」
「せめて、奴らの攻勢に対抗できるよう、兵を鍛えねばな…」
亜父は今後の苦境を予想しながらも、次の準備を考えていた。
太兵衛は槍を背負い、やや蛇行しながらもスピードを落とさずに飛んでいる。
鳥車で数日掛けてきた道のりも、この姿であれば1日ちょっとあれば着く。
森を駆け抜けると、幅100m程の川を渡る橋があり、その先に砦のある関所へ到着する。
時刻は午前3時、村は寝静まり砦の門は閉じたままである。
「追撃隊の心配はないと思われますが、一刻も早く突破しなければ、亜父の手の者が門の封鎖を行うやもしれませぬ」
官兵衛は告げるが、どんな策を用いても時刻を進ませる事は出来ない。
「あの、私で宜しければ門を開けてみましょうか?」
射陽侯が付けてくれた男が告げる。
「おぉ、あの門を開けることができるのか?」
「はい、砦の兵たちは鶏の声で朝の業務に入ります」
「私が鶏の鳴き声をまねて、他の鶏たちを起こします」
そう言い終えると男は鶏の鳴き真似を始める。
「コケコッコー!」
その鳴き声を聞き、他の鶏たちも一斉に鳴きだす。
「「コケコッコー」」
暫くすると門番の部屋に明かりがともる。
官兵衛はすぐさま門番に割符を渡し、無事門は開かれる。
男はすぐに射陽侯に報告すると、来た道を戻って行った。
こうしてピットたちは無事自国へ戻ることができた。
「人にはいろいろな特技があるものじゃな」
「うむ、普段はつまらぬと思っている芸でも、こんな形で役に立つとはな」
太兵衛と又兵衛は感心して話す。
「我々の街が見えてきましたぞ!」
ピットたちは全員、無事国に戻ることができた。
明け方、コボルト斥候が砦に到着した。
「亜父様の使いで来た」
「誰かこの門を通ったか?」
「はい、2時間ほど前にウサギと虫たちが割符を見せて出ていきました」
「割符?」
「はい、国発行の割符だったので間違いございません」
「なぜそんなに早く通した?」
「朝を告げる鶏が鳴いたからです」
「そうか…ご苦労だった」
門を抜けたならもう追いつけないな、とコボルト斥候は帰って行った。
間もなく、コボルト斥候が来た道を戻っていると、陳平率いる追撃隊と遭遇した。
「追撃隊の方々、残念ながらウサギ一行は国外に出てしまっております」
「そうか…斥候隊の方々、ご苦労であった」
そうあいさつを終えると、亜父報告の為斥候隊は急いで帰途した。
「我らも戻るぞ!」
陳平も部隊を引き返し帰路へと着く。
そうか、無事脱出できたか。あとはこちらで準備してお待ちしております…
陳平は次に会える日を楽しみにして待つ。
斥候隊の報告を聞いた亜父は、そうかと告げ斥候隊を下がらせる。
天を見つめ、亜父は呟く。
「ああ、我らはとんだ獅子を野に放ってしまった…」
「せめて、奴らの攻勢に対抗できるよう、兵を鍛えねばな…」
亜父は今後の苦境を予想しながらも、次の準備を考えていた。
1
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる