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第30話 失敗は許されない
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貴賓館内を歩く四頭。
廊下には美しい装美品や、見たことのない彫刻などが飾られている。
貴賓室の入り口には鎧を付けた兵が守備しており、2頭が扉を開けそのまま4頭は中へと招かれた。
中では、ウサギの姿をしたこの村の主が椅子に座り、背の高い狐の軍師らしきものがその隣に立っていた。
4頭が椅子の前に立ち止まると、主は席を立ち4頭に席に座るよう促した。
ウサギの主は狐の軍師と何か耳打ちをする。
こうして、使者との会談が始まった。
一同、かしこまった挨拶を終えると、狐の者からの話が始まる。
「私共はこの村に入りまして、あまりの文化水準の高さに驚愕しております」
「特に、街の中がよく整備され、いろいろな種族が和気藹々と生活しているのが印象的でした」
「我らが首都となります咸陽と負けず劣らずの都市でございます」
「そのようなあなた方と大王は共存共栄できればと考えており、私が大王の代理の任を受けご挨拶に伺った次第でございます」
狐の一通りの話を聞き、孔明は口を開く。
「御使者の仰ることはわかりました」
「そこで一つ確認したいのでありますが、レッドキャップ様は我々と同盟を結びたいと考えておられるのでしょうか?それとも従属関係を考えておられるのでしょうか?」
狐にとっては痛いところを突かれてしまった。
ラビット村を見た彼は、従属関係で話をもっていくのは難しいと判断し、その部分をぼかして話し合いを終了させようと考えていた。
領地へ戻った後、同盟関係までを結ぶことができたと報告できれば、後は丞相が勝手に判断するだろうと。
ただ、この従者たちが最初から私を監視目的で送り込んでいる可能性が高いため、あえて「貴国」を使わずに「あなた方」とのぼかした話でそのまま進んでほしかったのだが、この軍師にあっさりと見抜かれてしまった。
この軍師を説得するのは自分には無理、それならば…
狐は頭をフル回転させる。
「この度は、どのちらを選択するのかは私の判断に委ねられております」
「ただし、その答えが大王様の意にそぐわない場合は、おそらく我ら全員処罰を受けることとなるでしょう」
「つまり、我々を属国化できなければ、あなた方は処刑されると?」
「はい、その通りです」
従者3頭が驚いた顔で狐の方を向く。
「我が大王は、どのような功績を立てようとも、気に入らないものであればなんの躊躇もなく処罰されます。」
「ここに集められた使者たちはそういう者たちです」
その言葉に、従者たちは俯いてしまう。
「なるほど、そういう事情がございましたか」
孔明は納得したように話し出す。
「では、こういう話に致しましょう」
「今回の提示につきましては、皆と話しあい、その決定事項をそちらに直接伺ってお話しさせて頂きますと、大王様にお伝え願えますか?」
「これであれば、そちらの丞相も前向きな答えを持ってくると考え、あなた方の処罰も免れるのでは?」
孔明の言葉に使者たちは安堵する。
「こちらの心情を汲み取って頂き、感謝に堪えません」
「遅くなりましたが、この度の大王のお気持ちです。お受け取り下さい」
そう言うと、狐は従者に指示を出し、一つの箱を持参させる。
「ビワの実でございます。お納めください」
中にはたくさんの黄色に色付いたビワがきれいに並べられてあった。
孔明はそれを確認し、使者団へ謝礼を述べる。
「お心遣い感謝します。我々も使者様ご一行に食事を設けております」
そう話すと、隣の部屋にある宴席へと案内する。
廊下には美しい装美品や、見たことのない彫刻などが飾られている。
貴賓室の入り口には鎧を付けた兵が守備しており、2頭が扉を開けそのまま4頭は中へと招かれた。
中では、ウサギの姿をしたこの村の主が椅子に座り、背の高い狐の軍師らしきものがその隣に立っていた。
4頭が椅子の前に立ち止まると、主は席を立ち4頭に席に座るよう促した。
ウサギの主は狐の軍師と何か耳打ちをする。
こうして、使者との会談が始まった。
一同、かしこまった挨拶を終えると、狐の者からの話が始まる。
「私共はこの村に入りまして、あまりの文化水準の高さに驚愕しております」
「特に、街の中がよく整備され、いろいろな種族が和気藹々と生活しているのが印象的でした」
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「そのようなあなた方と大王は共存共栄できればと考えており、私が大王の代理の任を受けご挨拶に伺った次第でございます」
狐の一通りの話を聞き、孔明は口を開く。
「御使者の仰ることはわかりました」
「そこで一つ確認したいのでありますが、レッドキャップ様は我々と同盟を結びたいと考えておられるのでしょうか?それとも従属関係を考えておられるのでしょうか?」
狐にとっては痛いところを突かれてしまった。
ラビット村を見た彼は、従属関係で話をもっていくのは難しいと判断し、その部分をぼかして話し合いを終了させようと考えていた。
領地へ戻った後、同盟関係までを結ぶことができたと報告できれば、後は丞相が勝手に判断するだろうと。
ただ、この従者たちが最初から私を監視目的で送り込んでいる可能性が高いため、あえて「貴国」を使わずに「あなた方」とのぼかした話でそのまま進んでほしかったのだが、この軍師にあっさりと見抜かれてしまった。
この軍師を説得するのは自分には無理、それならば…
狐は頭をフル回転させる。
「この度は、どのちらを選択するのかは私の判断に委ねられております」
「ただし、その答えが大王様の意にそぐわない場合は、おそらく我ら全員処罰を受けることとなるでしょう」
「つまり、我々を属国化できなければ、あなた方は処刑されると?」
「はい、その通りです」
従者3頭が驚いた顔で狐の方を向く。
「我が大王は、どのような功績を立てようとも、気に入らないものであればなんの躊躇もなく処罰されます。」
「ここに集められた使者たちはそういう者たちです」
その言葉に、従者たちは俯いてしまう。
「なるほど、そういう事情がございましたか」
孔明は納得したように話し出す。
「では、こういう話に致しましょう」
「今回の提示につきましては、皆と話しあい、その決定事項をそちらに直接伺ってお話しさせて頂きますと、大王様にお伝え願えますか?」
「これであれば、そちらの丞相も前向きな答えを持ってくると考え、あなた方の処罰も免れるのでは?」
孔明の言葉に使者たちは安堵する。
「こちらの心情を汲み取って頂き、感謝に堪えません」
「遅くなりましたが、この度の大王のお気持ちです。お受け取り下さい」
そう言うと、狐は従者に指示を出し、一つの箱を持参させる。
「ビワの実でございます。お納めください」
中にはたくさんの黄色に色付いたビワがきれいに並べられてあった。
孔明はそれを確認し、使者団へ謝礼を述べる。
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そう話すと、隣の部屋にある宴席へと案内する。
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